第29話神田明神

「おやおや、今日は明神様へのお出かけですか?」

小春ばあさんは、縁側に座り、猫を撫でている。

師走というのに、暖かい午後になった。


「はい、そうなんですよ」

「どうしても明神様じゃないと」

丁稚の仙吉は、顔を赤らめた。


「それはそれは・・・」

「それじゃあ、お願いしようかしら」

小春ばあさんは、懐から小銭を出し、仙吉に渡した。


「これは少し余計です、多すぎます」


「ああ、いや、仙吉さん、女子を誘ったんだから甘酒ぐらいはね」

「それから死んだおじいさんに、べっこう飴を買ってきておくれ・・・」

「それから仙吉さんも、その子に・・・ちゃんとね」

「女子は、精一杯、可愛がるものですよ・・・」

仙吉は小春ばあさんの顔が赤らむのを見た。


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