第179話悪夢(6)

「お待たせ!!」

弾むような笑顔で由美の娘が大きなアルバムを小脇に抱えて入ってきた。


「うん、名シェフ美咲の登場ね!美味しかった、腕上げたねえ!」洋子


「うん、パパの味に近づいたよ、ほんと、安心した」祥子


確かに味付けは、由美の亡くなった夫、つまり美咲の父に近い。

それに、美咲の顔も、その父によく似ている。

少し、ほろっとしそうになるが、小脇のアルバムのせいで、涙など見せられない。


「さてさて・・・ママちょっとどいて・・・」

美咲は、由美を隣の席に座らせて、私の正面に座った。

ゆっくりとアルバムを開く。


「あーーーーーーーーっ」

「本当に、写真の君だ・・・」

アルバムの写真と眼の前の私を何回も見比べては、うれしそうに笑う。


「私も見たいなあ・・・美咲ちゃん」

祥子と洋子も、催促をする。


「うん、そう思って、少し焼き増ししました。」

美咲は、アルバムの中から「焼き増し」を外して、祥子と洋子に渡す。


「きゃーーーーーーっ!」洋子


「ほんと・・・写真の君!」祥子


「えへへ、私も、この写真見つけた時、興奮しちゃったもの」

「あの時のメンバーって、私と私の旦那と、祥子と洋子ちゃんだったし・・・これは、連絡せねばって」

「そんなこと思って、写真整理してたら、美咲が入ってきちゃって・・」由美


「それで私が料理作って、この写真でパーティしようって」美咲


「でもね・・・・ほんと・・・ゾクゾクしちゃう。この写真・・・」洋子


「うん、本人を前にして、なんだけどさ・・」

「・・・いまでも、見てるとドキドキしてくるもの・・」祥子


「それで・・・どうして、この写真撮るようになったの?」美咲


「それがね・・・」由美が、悪戯っぽい目つきになる。

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