第180話悪夢(7)
「実はね、パパと私、祥子も洋子ちゃんも、そしてこの写真の君も、同じ高校で、同じ音楽部なの」由美
「うん、そこまではなんとなく知ってる」美咲
「それでね、祥子の父さんって、大学の教授でね、平安時代の故実とか装束の研究者なのよ・・・」由美
「へぇ・・・」美咲は、眼を輝かせて祥子を見る。
祥子が、微笑みを浮かべながら話し出した。
「うん、それでね、研究の中で、知り合いの京都の呉服店に頼んで、平安期の実際の装束を再現させたんだけれど、実際に着るモデルが必要ってなったの・・・」
「最初は、プロのモデルさんを探したみたいだけど、なかなか、父の感性に訴える人が見つからなかったの」
「そんな時に、何かの用事で、この人が家まで来て、父とバッタリ!」
「もう、父が私に厳命するの・・この人しかいないって・・・」
「もう、隣で母がオロオロするくらいだった」
祥子は苦笑している。
「でも、父はこの人には、頭を下げてまでしてお願いしてるし・・・」祥子
確かに、大学の教授なんて偉い人に頭を下げられると、断れなかったのも事実だった。
「でね、この人って・・今でもこんな顔しているけれど・・・」
由美が、また悪戯っぽい顔つきになる。
「うん、ほんとね・・・あの当時の顔って・・ねえ・・・」洋子
「まるでね、お人形さんみたいな顔・・隣に座られたりすると、もうドキドキしちゃって・・色白だし、眼も大きいし、まあ可愛らしいし・・・」由美
「可愛かったの、黙っている時も笑っている時も」祥子
「それでかあ・・・撮影はどこでしたの?」美咲
「うん、祥子のお父さんの大学の経費で、私の旦那と祥子と洋子ちゃんを含めて、はるばる京都まで・・・下賀茂でね・・、プロの写真家で撮ったの・・・写真家も興奮してた。」由美
「その写真家って、女性でしょ・・・」美咲
「うん、これって男ではわからない、艶だと思う」祥子
「ほんと・・・艶・・・って・・いい表現だなあ・・・」由美
当の本人には、全く理解の出来ない話題が、続いていく。
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