第329話猫の物語(2)おとぎ草子から

さて、街の中には、世間で有名な聖職者が住んでいた。

彼は、悪行を嫌い、善行を積み、朝には天下の平和を願い、夕には極楽への往生を願うと言った清らかな生活を続けている。


その上、全ての生き物の平等な幸せを祈るのだから、これでは世間の人間たちからの評判が高いのは当たり前、それどころか彼の徳には、鳥や獣にまでも慕われていたようだ。


さて、ある日の夜、そんな彼は、不思議な夢を見た。

その不思議と言うのは、あの見すぼらしいネズミが、なんと和尚の姿に立って現れたのである。


そして、そのネズミ和尚が夢の中で、彼に言うのには

「あなた様に、こうやって直接お話をすることは、恐れ多いことではあるのですが」

「あなた様の教えを日頃、縁の下や天井裏で聞いておりますと『悔い改めることで罪は消え去る』とのお話がございました」

「今宵は、そのお言葉にすがりまして、参ったしだいでございます」

「私どもが、悔い改めたなら、どうか一言の道理をお授けくださらないでしょうか」

と、不思議なことを言うのです。


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