第331話猫の物語(4)おとぎ草子から

そのネズミ和尚は涙ながらに、延々と聖職者に訴える。

「今回の政府の法律で、都中の猫が綱から離されてしまいました」

「結局、我々ネズミ族は、全て姿を消すハメになったのです」

「ようやく逃げおび、生きながらえている少々の仲間も、今日や明日までの命なのかもしれません」

「もう、懸命に息をひそめて、ブルブルと震えながら礎石の陰や縁の下に隠れています」

「それも、一瞬も油断が許されない状況です」

「どこかに穴を掘って隠れようと思いましたが、いつまでこの法律が続くのかわかりませんし、そんな穴ぐらに居続けるのも大変なことです」

「そうかといって、不要に外に出て、猫に見つかれば、即座に取り押さえられ、頭から噛みつかれ、肉も裂かれて、悲しい目に会うのです」

「これも前世の因果かと思うと、悲しくてなりません」


と、延々と聖職者に訴える。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る