第307話慶子

千三百年前からの古都、奈良。

どうしても奈良というよりは奈良町の慶子に会いたくなり、新幹線に飛び乗った。

京都からはJRは使わない。

少しでも奈良町に近い近鉄を使う。

その近鉄奈良でおりて、まっすぐ奈良町まで歩く。

興福寺や春日大社には申し訳ないけれど、「帰りに」とつぶやく。

本当に狭い道、少し歩けば、どこにでもある住宅街と変わらない。

奈良町の中でも、目指す場所はひとつ。


慶子の店のドアを開けた。

いつも通りの慶子がいる。


慶子

「あら、どうしたの?突然」


「いや、慶子に会いたくなった」


慶子

「うれしいことを」

クスッと笑う。

「何か食べる?」


「ああ、慶子を食べる」


慶子

「こら!いきなり!」

顔を赤くしながら、まずビール。


「久しぶり」


慶子

「久しぶりすぎ」

「忘れようかと思った」


「忘れさせるものか」


慶子

「ふぅーん・・・」


「ふぅーんって?」


慶子

「確かめてあげる」

慶子は指をキュッと絡めてきた。


「痛て・・・」


慶子

「後で もっと痛くする」

顔を真っ赤にしている。


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