第189話亜希子の「お相手」(2)

亜希子にとって「数億以下の家屋敷に住む人間」、「年収が億近くない人間」、「住居地の直近が新幹線のぞみ停車地ではない人間」は、「人間としては認めない」つまり「家畜並」の存在でしかない。

ただ、相手がどうあれ、亜希子自身のセールスポイントとしては「美貌と高貴なお家柄」だけである。

そして、そのプライドの高さ故、有名私立女子大を卒業後も職についていない。


「自分より身分の低い人間に命令されるなんて、まっぴらゴメン」

「近寄ってくるだけで、汚らわしい」

「そういうのが、学生時代、本当に嫌だった」

そんなことで、学生時代は小学校から、全て自宅のベンツで送り迎え。

部活動も拒否、授業終了後は、まっすぐ帰宅。

「自分より身分が低い家畜人間など見たくない」ので、車内では目を閉じているほどだった。


そんな亜希子は、「お屋敷」に戻れば、両親や使用人から、チヤホヤの極みとなる。

部屋の掃除、片付けは当然のこと、着替えやお風呂まで、全て専属の使用人がつく。

つまり、亜希子自身が何をするということは、全くない。


「だって、私がこの家の跡取りだもの」

「全て、したがってもらわないとね」

とにかく、言い出したらきかない。

そんなことで、育ってきてしまったのである。



そんな生活が続き、亜希子も既に26歳。

両親が必死に探してくる「お相手」も、底をついてきてしまった。

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