第323話民部大夫頼清の家の女子の話(3)今昔物語

御許が不思議に思って、家の奥に入っていくと、信じられないことに民部大夫の頼清様もおられます。

これは夢ではなかろうかと戸惑っていると、家の人々から声がかかります。

「あらあら、珍しいこと、参河の御許がいらしていますよ」

「ねえ、どうして、お顔をお見せにならなかったの?」

「殿には、斎院の咎めが許されたので、あなたにも知らせなくてはと思って、あなたのお家に使いを出したの」

「そうしたら、使いのものが言うのにはね、隣の家の人が『この二、三日はご主人様のところに出向くと言ってお留守のようです』と、聞いて帰ってきたの」

「あなたは、いったいどこに行っていたの」などと口々に聞いてくるので、御許は本当に驚いてしまい、怖くもなってきたので、震えながら全ての事情を話します。

家の中のものたちも、主人をはじめとして、全員恐ろしがります。

御許は、自分の子供を置いてきてしまったことを悔み、今頃はすでに殺されてしまっているのではと、心の動揺が抑えきれません。

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