第236話不思議な光君(2)

さて、光君攻略を思い立った私は、「さりとなく、さりとなく」を心に言い聞かせ、一歩一歩、光君に近づく。

そして

「クンクン」

「クンクン」

私は決して犬ではないけれど、嗅覚には自信がある。

そうは言っても、私が目指す「クンクン」は、決して光君のお弁当ではない。

目指すのは光君から漂う「ほのかな香り」の種類なのである。


「む・・・ふむふむ・・・和風?アジア風?」

「白檀とは全然違う、そういうマッタリ香ではない」

「幽玄風?」

「そうなると光君そのものだなあ」

「もしかすると・・・あれかな」

「でもマジ?」

光君への距離は、ここで三メートルもない。


・・・しかし・・・ここでうるさい邪魔が入る。


「ねえ、お昼にさ、カレーパン食べない?」

悪友女子の無粋な言葉。

せっかく幽玄の香りに気づいたっていうのに「カレーパン?」

これだから、悪友女子は困る。


それで、悪友女子にムッと振り向いたのが失敗だった。

光君に振り向きなおした時には、光君の姿はない。

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