第271話晶子と出張(2)

晶子は東京駅の新幹線ホームから大騒ぎ。

「わ!のぞみ!一度乗りたかった!」

「お土産買わなきゃ!」

「えーっと珈琲は、車内販売でいいか」

「指定で残念、いつかはグリーンがいいな」

・・・・

やかましいので、俺は無言。


車内に乗り込み、隣に座っても晶子は大騒ぎ。

俺は相槌だけ、あごも疲れてくる。

「あのさ・・・仕事だからさ・・・」

ポツリと警告しても、晶子のおしゃべりは止まらない。

「そうですね、まずは地方支社にご挨拶して」

「いろいろ事情を聞いて、うん、ある程度は下調べしましたけど」

「私は何となくわかるけど、そんな心配いりませんって!」

「それより、珈琲かなあ」

・・・・


「・・・はぁ・・・」ため息をつきたいけれど、それをネタに何を言い出すかわからないので、目を閉じた。

つまり眠りのサイン。

大騒ぎを聞いてばかりもいられない。


すると晶子

「あ・・・晃さん、寝るんですか?」

「あーーー私、それじゃ、つまらない」

最初はブツブツ文句を言っていたけれど、途中で自分のバッグをゴソゴソ。


「はい、じゃあ、私も!」

晶子は自分のバッグから、ワインレッドのひざ掛けのようなものを取り出した。


「これで晶子も寝る、少しは大人しくなる」

ほっとしていたら、膝に妙な感覚。


「え?」

晶子の顔を見ると、ニンマリしている。

「えへへ、大きめなひざ掛けです」

「だから一緒ですよ」


そして晶子がポツリ

「私もうれしくて眠れなかったんです」


「おいおい・・・仕事だって・・・」

言おうと思ったら晶子は目を閉じている。


そのまま、身体も寄せてくるし・・・

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