第73話格闘お姉さん(2)

「美佳先輩!大変です」

里奈が柔道場に飛び込んできた。

「え?何?」

美佳は、里奈のただならない表情に注目した。

「あの、史君が空手部のひとみさんに、迫られているんです!」

「壁ドンされて・・・」

美佳は最後まで聞かない。

「で、場所!案内して!」

美佳は走り出してしまった。


・・・美佳はかつて、史の新聞部の取材でインタビューされた時から、史が可愛くて仕方がない。

本当は、何とかして「モノにしたい」と思っているが、美佳自身「その場になると、超不器用」で、なかなか、コトが進まない。


「あ・・・空手部の部室の前で!」

ようやく美佳に追いつい里奈が場所を告げると、その走るスピードを上げる。


「う・・・いやがった・・・でも危険、20㎝密着・・・」

「でも、私のほうが胸はデカイ」

余計なコトまで言いながら、空手部部室の前にたどり着いた。


「おい!ひとみ!なにやってんだい!」

「そんな密着して!」

密着している空手部のひとみに、大声を張り上げる。


「え?何言ってんだい!」

「史君が、取材に来ないから、お出でっていったのさ!」

「で、取材も終わって、今はね、こーやってデートに誘っているの!」

「まーーー可愛いねえ・・・」

ひとみも、一歩も引かない。


「それで、史君が返事しないものだから、あーやって壁ドン・・・さっきより密着してます!」

里奈はようやく美佳に追いついた。

息もゼイゼイしている。


「もーーーそれじゃあ、強引過ぎ!私だって史君とデートしてないって!」

「取材の順番からすれば、私が先!」美佳


「アホ!そんなの、しちゃったもの勝ち!」

「女子レスリング部の涼香だって狙っているんだから!」

ひとみは、また新しい情報を口走っている。


「・・・もう・・・やめてくださいよ・・・」

ようやく史が声を出した。

「先輩だからって、ひどすぎます」

文句も言っている。


その言葉に、ひとみは、ちょっと引いた。


・・・で、それに乗じて、史は、案外素早く脱出。


「じゃあ、先輩じゃないといい?」

「私、同じクラスだしね」

「あそこのパフェがいいなあ」

里奈は、珍しく、素早かった。

ほぼ強引に史の袖を引き、格闘先輩お姉さんから「逃げた」


「・・・美佳・・・里奈許せる?」ひとみ

「許せん、明日、状況報告と、背負い投げ10本追加」美佳

「明日でいいの?私、あの二人の後を追う!」ひとみ

「あ・・・邪魔する?うん、邪魔しよう!」美佳

結局、格闘お姉さん同士に協力関係が成立、後を追って「オジャマ虫作戦決行」をしようと思ったのである。


しかし、その「オジャマ虫作戦」は、失敗した。

里奈は、私鉄の二つ先の駅で降り、そこの喫茶店で、史と話し込んだのである。

てっきり学園の周りの店と思い込み、学園の周りをグルグルしていただけの、美佳とひとみは、見つけることが出来なかった。


「・・・背負い投げ20回と腹筋3倍にしてやる」美佳

「見つからないように部室で壁ドンする」ひとみ

それぞれ、先輩女子は、対策を考えている。



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