第191話亜希子の「お相手」(4)(完)

瞳に激情が宿ってしまった亜希子は、パーティー会場を歩き回って、その若いボーイ風の男を探した。

しかし、なかなか見つからない。

それに見つかったけれど、その若い男は、女どもに囲まれてしまっている。

それも、亜希子よりも「若い女ども」にである。


「ふん!女は若さだけじゃないって!」

そう思って、奪い取ろうと思うのだけど、それは亜希子のプライドが許さない。

「悔しいけれど、欲しいけれど私とは身分違いの男」

「追っかけてきて頭を下げてきて、やっと遊んであげるくらいでないと」

そんなことで、結局亜希子は、なかなか近寄れないまま、パーティーは終わってしまった。


ただ、自分の御屋敷、自分の部屋に入っても、思い出すのは、あの若い男のことばかり。

結局、両親に頼み込み、あの若い男の素性を探ることになる。


「ああ、あの男の子はね、あのホテルの嫡男」

「本当は経営者というか役員だけど、ボーイすることが好きみたいだよ」

「大学も超一流」

「亜希子が望むぐらいの資産とか年収はあるし」

「お家は杉並だから、新幹線駅もクリアだね」

両親から、その若い男の「素性」は、スンナリと入った。


「そうなると・・・」

「これは、アタックしかない」

「家柄は、この家と同等か、あっちが少し上かなあ」

「年収も資産も、住居も問題なしか」

「これは、ゲットするしかない!」

亜希子の瞳には、今度は「闘志」が宿った。


つまり、「群がる女ども」を排除するための闘志である。

そして、そうなった途端、また両親に頼むことになる。


「なんとかして彼とのデートをセッティングして!」


・・・・しかし、無理だった。

両親の返事は、絶望的なもの。


「ああ、彼には既に婚約者がいるの」

「旧華族系のお家柄も、高貴でね」

「品が良くて、やさしい美人だよ」

「この家よりも、格式も財産も上だよ」


亜希子は落胆なんてものじゃない。

「私より、格上の女・・・」

「となると・・・逆に言えば、私が格下の半端女?」


亜希子は格下には強いが、「格上」には弱い。

亜希子の「お相手」は、なかなか、見つからないままである。


                              (完)

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