第109話定食屋デート

午後6時、今日の仕事も無事終了、後は帰宅するだけになった。

いつもの路線、何度か乗り換えて午後7時に自宅近くの駅に着くと、同じアパートの里香とバッタリ、多少は会釈するものの、なかなかぎこちない。

それもそのはず、里香はけっこう可愛い。


「今、お帰りですか?」

それでも言葉くらいはかけた。

「はい、これからスーパーで買い物をしようかと、晃さんは?」

なかなかハキハキした答え、おまけに里香は聞き返してきた。


「あ・・・スーパーで買い物はしないよ」

「そのまま帰るよ」

かなり空腹だし、これからスーパーで買い物をして自炊など我慢できないし、面倒だ。


「え?食べてきたんですか?」

里香は、キョトンとしている。


「いや、まさか、どこかで食べて帰ろうかと、お米を炊くのも面倒だから」

こうなると、素直に応えるしかない。


「へえ・・・晃さんって、どこで食べるんですか?」

里香は、キョトン顔から興味深そうな顔になった。


「えっと・・・だいたいは、あそこの定食屋だよ、しゃれた店じゃないけど、味は好きなんで」

隠すことも意味がない、空腹だし、何より早く食べたかった。


「じゃあ・・・晃さん、私も連れてってください、一度入りたかった」

里香から思いもよらない反応・・・でも若い女の子が入る店って雰囲気じゃない。

少しためらっていると


「ほらーーー!早く!私、あそこのメニュー毎日見ていて入りたくてしょうがなかったんです!」

「で、私が肉野菜玉子キクラゲ定食で、晃さんは生姜焼き定食ですよ!」

「あ、それから、特製冷や奴と、豚汁もすっごい興味ある!」

食べるメニューまで里奈に決められてしまった。


定食屋でも、全て半々で食べた。

そしてこれが、里奈との始まりだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る