第12話Calling You(2)不安
日に何度窓越しに海を見ることか
少し風が強い日など、いてもたってもいられない。
潮風で色あせたドアを開け、港まで走る。
しかし、何の便りもない。
次第に食べることも面倒になってきた。
鏡に映る自分の顔が痩せてきたことも、どうでもよくなった。
想うことは、「また勝手にいなくなったあいつ」のことばかりである。
「あのバカ男・・」
女は首を振り想いを断ち切ろうとする。
「あのバカな男に、いろんな女がすり寄るし・・」
想う男の回りには、いつも女がいた。
男は柔和ではない。
冗談もいわない。
しかし他の女どもが寄りつく。
ただ、男が相手にしないだけだ。
「夜、寝床を共にするのは、私だけだ。」
とりまく女たちの、怨嗟の眼差しの中、いつも連れ帰るのは誇りでもあり、不安でもある。
「万が一、とんでもなく美しい女が・・」
「あちこちの港町で・・」
男が船に乗るたび、女はどうしようもない不安にさらされる。
嵐に遭うこと、他の女にとられること・・
女は、ラジオのスイッチを入れた。
もう10年以上使い込んでいる。
いつも同じ歌がかかる。
時事ニュース、そのあと気象ニュースになった。
「え・・・台風・・・」
無機質なアナウンサーの声が、台風の発生を告げた。
ガシャン、パリン!
女が立ち上がった途端、男のマグカップが床に落ちて割れた。
Calling You(3)救いに続く
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