第335話猫の物語(8)おとぎ草子から
さて、トラ猫から、そんな話を聞いた聖職者は、諭し始める。
「まあ、トラ猫の言い分も理解はできる」
「なかなか、けなげにも思うけれど・・・」
「ただ、この私も聖職者なのだ、ネズミ族の言い分を聞いて、トラ猫の言い分を聞いた」
「何とか、仲裁に入りたいと思うのも、理解はしてほしい」
「まず、そもそも殺生を繰り返すものは、その因果が車輪のように、まとわりつくと言う」
「死んでは生まれ、生まれては死に、殺して殺されの流転を繰り返し、逃れることができない」
「全てのものは、無に帰すということを、考えるべきだ」
「それを理解することによって、全ての悪行から逃れる術を得るのだ」
「そうすれば苦しみも消え、落ち着いた生活ができるというものなのだ」
「となれば、お前たちの悪行の原因の、ネズミを捕るという殺生をやめなさい」
「お前たちの餌には、ご飯に鰹節をまぶしたもの、時々にはなるけれど、田作やニシン、塩鮭をまぶしたものを与えよう、それでどうか」
と、提案をする。
それを聞いたトラ猫は
「まあ、ご説教は十分に理解しますよ」
「でもね、よく考えてくださいよ」
「人間であるならば米で、五臓六腑の調子を良くして、足や手も丈夫になって、そういう素晴らしいことを、おっしゃるのです」
「それに加えて山海の珍味などは、そのお米をより美味しく食べるためのものでしょうなあ」
「ただね、私たちのような猫にとって見れば、ネズミを捕って食べるのは、いわば天の神様からいただいた大事な所業でしてね」
「そうやってネズミを食べるから、病気にもならず、手足が元気になって、走り回れるのですからね」
「それなのに、今さら、それを我慢せよと言われてもねえ、納得できません」
「もう一度、考えてください」
と、猛抗議をしてくる。
忍耐強い聖職者ではあったけれど、これには返事がすぐにできない。
呆れ果ててしまっている。
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