第249話団扇(5)落語風?

まあねぇ・・・そんなタメになる話って言われてもねぇ・・・

駒吉は困っちまうんですよ。

それなのにね、新富町の後家さんは潤んだ目でじっと見てきますしね、狸いや親方は姿をくらましちまっているもんだから・・・


「ねえ、職人さんだろ?ねえ、今からさぁ・・・」

後家さんは、そう言いながら駒吉の手の甲をツン・・・どころか人差し指でスーッとね・・・

これじゃあ、駒吉もたまりませんや・・・・ああ・・・あやかりてぇなあ・・・あ・・・これは・・・コホン・・・


「エイヤ!ワカリヤシタ!オイラも江戸っ子だい!」

駒吉は、とうとう観念したんですよ、だって逃げようもないしね。

すると後家さんがまたニンマリと・・・

「じゃあ、駒吉さん、お・ね・が・い・ね・・・」

まぁ、その流し目のイロッポさ・・・かないませんなぁ・・・これはこれは・・・


駒吉はそれでも

「それは今日ですかい?」

「今から?」

また無粋なことを言うんですよ・・・


後家さんは

「あらやだ・・・もう・・・駒吉さん・・・」

「この暑い日っていうのに、タライがないんですって・・・」

「それとも、駒吉さんが濡れふきんで拭いてくれるの?」

「えへへ、それもねえ・・・」

また、シナシナと・・・

「それもいいかなあ・・・」

・・・あやかりてぇ・・・コホン・・・あ・・・失礼・・・


駒吉もそんなことを言われたら、やらないわけにはいきませんな。

「あい、おいらも江戸っ子の大工です」

「ノコギリもノミもカンナも使わねぇような仕事はしませんって!」

「早速、後家さんの家に行きやしょう」

そこで、駒吉はようやく出向くことになったのでございます。

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