第234話激辛麻婆豆腐

梅雨時だからというわけではない。

金は常時ないからあまり関係がない。

とにかく食べ物を食べる気がしない。

仕事が忙しいし、プレッシャーがかかる仕事ということが大きい。

成功して当たり前で、ちょっとでもヘマをすれば、お払い箱。

そんなことをつぶやいていたら、美佳に強引に拉致された。

いかにも昭和風の中華屋さんだ。

そのうえ美佳は俺の食べるのまで勝手に「麻婆豆腐」に決めてしまう。


「目に見えて痩せた」

「大きなお世話」

「何、腰が引けてんのよ!」

「そんなことないって、食事を減らして感性を研ぎ澄ます」

「もう!うるさい!許さない!」

「何するんだよ!」

「うるさい!口開けて!」

勢いで口を開けたのが、失敗だった。


「辛いーーーー!」

「ふん!思いっきり山椒いれたもん!お水あげない」

「え?」

「だからご飯食べ終えるまで、お水なし!」


・・・それにしても、山椒入れ過ぎだって!

コメの味が全くしない・・・

これだから美佳は困る。


美佳は自分だけ、甘めの天津飯大盛りだし。

だから太るって言いたいけど、口の中は激辛台風が吹き荒れる。




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