第66話鎌倉建長寺の庭

朝は冷え込んだけれど、昼頃から風さえなければ、わりと暖かくなった。

どうしても、鎌倉建長寺の庭が見たくなって、家を出た。

歩いてほぼ、15分の距離。



建長寺に入っても、他のお堂は見ない。

そのまま、方丈に入り、裏手に回る。


「ほおっ・・・」

やっと落ち着いた。

目の前に、お目当ての庭が広がっている。


緑の芝生の真ん中に「心字池」とも呼ばれる池がある。

その由縁は「心」という字を池の形としたため。

池には橋が架けられ、石を置き、松が植えられている。

庭の専門家ではないから、作庭の意図はわからない。


「何故、ここに来たのかな」

「何故、見たかったのかな」

「きれいだから?」

「何故落ち着けるのかな」

いろいろ考えるけれど、だんだん、わからなくなってきた。


「丁寧に手入れしてあるな」

「キチンと掃除してあって」

「いつもきれいで」

「芝生の緑も松もいいなあ」


「こうやって、丁寧に整えるって、大事なのかなあ」

「そういえば、生活が荒れていたな」

「仕事が忙しい事を口実に」

「電話にも出ず、メールも返さず」

「悪いことしちゃったな」


写メしようと思った。

スマホを心字池にセットする・・・しかし、そこまでだった。


「今、どうせ建長寺のお庭でしょ?」

「すぐ行くから、そこで待機!」

「反省しなさい!」

「仏罰です!」

美佳からだった。


確かに「すぐ」だった。

ものの10分だった。

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