第273話晶子と出張(4)

「私、おっちょこちょいで晃さんには迷惑ばかりかけて」

晶子はちょっと涙声。


「いいよ、そんなの、気にしていないし」

「おっちょこちょい」も可愛いからいいやと思うけど、口に出すと晶子はヘコむから言わない。


「それでね、こういう時じゃないと聞けないから」

晶子の声が少し震えた。


「え?何?仕事のこと?」

ちょっと危険な予感、あえて「仕事」に話を振る。


「もう、違いますって」

晶子は俺の脇腹をちょっとつねる。


「痛て・・・違うって?」

いきなりつねるって何?と思うけど、聞くしかない。


「だから・・・私より他に、こういうことする人っているんですか?」

晶子は脇腹をくすぐりだした。


「あのさ・・・」

「こういうこと」をしてきたのは、「晶子のほうからだろう」と思うけど、それでも答えるしかない。

「うーん・・・いるかいないかで言えば、いない」

「俺は、女にモテるタイプではないし、冗談も上手く言えない」

「下手をすれば、一生独身さ」

思った通りのことを言う。

とにかく「洒落た言葉」は苦手だ。


「えへへ・・・やった!」

晶子は俺の答えに変な反応。


その時点では、晶子の気持は、さっぱりわからなかった。

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