第342話珠理奈の両天秤(1)
都銀本店の課内一番のイケメン社員の圭に片思いをしていた珠理奈に思いがけない話が舞い込んだ。
何でも、今回の人事異動で銀座本店から新宿支店への移動という話である。
人事部からは、
「新宿支店の支店長が珠理奈さんをお気に入りでね」
「どうしても欲しいって、役員に迫ったらしい」
「業績が高い支店でもあるし、新宿支店の支店長も将来有望な筆頭株」
「珠理奈さんには、損は無い話だと思う」
そんな話である。
珠理奈としては
「人事異動で、拒否できる話ではない」
「新宿も嫌いな街ではない、アパートにも近いし」
「あの支店長は、パワフルで精悍でかっこいい」
「でも、何で私を気に入ったのかな」
「支店長会議で資料とお茶を配っただけなのに」
と不思議に思うけれど、なかなか、それ以上に人事部には聞き出せない。
人事部との話を終えて、課内に戻ると人事異動については、他の社員にも発表されているので、様々に盛り上がっている。
そんな中で、珠理奈に声をかけてくる同僚行員OLが
「ふーん・・・新宿支店ねえ・・・いいなあ」
「あそこの支店長は確かにやり手だね」
「そこの支店長に望まれたの?」
「ふーん・・・何だろうねえ」
同僚OLも、珠理奈が「望まれた理由」については、わからないようだ。
そんな少し浮ついて、首をかしげている珠理奈は、圭の姿を探している。
でも、課内にはいないようだ。
となると、圭も人事部に呼ばれたということになる。
その話を係長がそっと教えてくれた。
「ああ、圭君は内部検査部らしい」
「厳しいかなあ、彼は几帳面だから」
ただ珠理奈としては、圭の異動先には関心がなかった。
「まあ、絶対に逢えないというわけではないか」
「年に一度くらいは顔を見れるのかな」
「指摘されないようにしないと」
感じたのは、そんな程度。
ただ、それは、今の時点という意味であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます