第369話私は誘惑する!(完)

涼が顔を赤らめて話しだした。

「真緒ちゃんは、言い出したら聞かないしさ」

「どうしても僕にって言うから、でも一人だけだと味気ないし」

やはり、ヒッソリ声のブツブツだ。

加奈子としては、「じゃあどうして私?」となる。

選んでくれたのはうれしいけれど、理由がどうしても聞きたい。


すると真緒が

「さっさと!涼!」

ニコニコと涼に迫る。


涼の色白の顔は本当に真っ赤

「えーーっと・・・一人じゃなくて、もう一人って言うと、加奈子さんのスタイルが僕のスタイルにあうなあと」

「ずっと演奏していても、疲れないし」


加奈子は思った。

「そうかあ・・・涼君も同じことを考えていたんだ」


真緒がクスクス笑って話をつなげた。

「涼君ね、ここまで話をするまで、一週間くらい眠れなかったんだって」

「ほんと、奥手でウブでねえ、見てられない」

「だから、私が手を差し伸べてあげたの」


加奈子は、また驚いた。

「え・・・涼君も眠れなかったの?」

「あら・・・偶然・・・でもうれしい」


真緒は言葉を続けた。

「ああ、でもね、加奈子さんのフルートと涼君のピアノは私も録音を聞いたよ」

「ほんと、情感とかニュアンスとか、素晴らしいものがある」

「どうせなら、デュオで活動したら?」


そんなことを言われた加奈子

「え・・・ほぼ雲の上の真緒さんに評価された・・・」

で、加奈子も顔が真っ赤、その心も雲の上。


そんな加奈子を真緒が手招き。

「加奈子さん、ちょっと・・・」

加奈子も席を立って真緒の所へ


すると真緒が耳元で

「あのね、涼君をお願い、メチャクチャ奥手なの」

「加奈子さんなら安心できる」

「任せられる」

わりとマジな顔。

どうやら、「奥手な涼」が心配で仕方ない様子。


加奈子は思った。

「よし!従姉妹にして雲の上の真緒さんの後押しがある!」

「涼君は私がゲットする!」

「これもミューズの神の思し召しだ」


そして加奈子も真緒の耳元で

「はい、任せてください!」

そして心が雲の上なので、つい「本音」が出てしまった。

「私、涼君を誘惑します!」


言ってしまって、加奈子は「あっ!」

真緒は手を打って大笑い。


「何のことやらわからない」涼は、その目を丸くしている。


                                                                     (完)

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