第8話清楚な花柄のブラウスと脇に抱えたドビュッシーの楽譜

とにかく眠かった。

悪友たちのおかげで、酒が進み、ほとんど寝てない。


午後の3限目の大教室の講義。

大教室での講義なのに、出欠をとるのだから、無理を押して出る羽目になる。

席は自由なので、万が一にも教授にあてられないように、真ん中の列の後ろに座る。


案の定 講義念仏が始まり、3分ぐらいで強烈な睡魔。

礼儀正しい性格なので、一応周囲に目で合図。

つまり「寝る」と言う合図。

不安なのは、周囲の眼もトロンと してきている。


「万が一あてられたらの不安」が頭をよぎる。

こんな周囲では、頼みにできないではないか・・・


そう思いつつも 睡魔には勝てず、夢の中に。


隣の席に誰か座った感覚はあった。

覚えがある柑橘系のフレグランス

しかし、もうその時点では「合図」を送るほどの、意識は失っている。


気が付いたのは、脇腹を軽くつつかれた時。


「ん・・」

教壇を見ると、既に念仏教授はいない。


「あれ・・」


「あれじゃないです」

「もう、授業は終わりました」

クスクス笑う彼女の前で、どうしようもない恥ずかしさを感じる。


「恥じらう顔見ることが出来て、幸せです」


清楚な花柄のブラウスと脇に抱えたドビュッシーの楽譜。

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