第68話 ヒロインたちの会話 その4

《Sideミリル》


 リューク様のお屋敷のメイドとして働かせて頂くようになった日々は、私にとって幸福以外の何物でもありません。


 シロップさんはお仕事に対しては厳しいですが、リューク様に対応するときは乙女になってモジモジとして可愛い方なのです。

 ルビーちゃんも自由奔放な性格とは裏腹に、仕事はキッチリとしていて、気配りも出来るので凄いです。仕事のミスも少ないのです。

 ドジな私は負けないために、自分の仕事を頑張っています。


 夕食はカリン様が作ってくださるのですが、それがとても美味しくて、最近は食べ過ぎてお肉が付いてきました。


「ミリル。最近は成長期にゃ?おっぱいが少し大きくなったにゃ」

「もっ、もうルビーちゃん。そういうことは言わないで」


 お風呂はリューク様が入った後に入ることが出来るのですが、こんなにも大きなお風呂を使うのが初めてで戸惑いました。

 ルビーちゃんは広いお風呂を喜んでいましたが、私たちが入っているとシロップさんが入ってきて私は黙ってしまいます。


「おや?どうかしましたか?」


 白い髪に白い尻尾、高い身長は凄くプロポーションがよくて見惚れてしまうほどです。身長は追いつくことはできませんが、せめて女性らしい身体になって、リューク様に見てほしいです。


 ルビーちゃんはアレシダス学園では獣人であることを隠しているようですが、リューク様は知っていました。

 実験をしていた時に頭を撫でて、帽子を取っても変わらず接しておられたので、ルビーちゃんもそれからは隠すことなく私たちには打ち明けてくれています。


「シロップ姉様は綺麗にゃ」

「そうでしょうか?主様は、男性なのに美容も気にされていて私よりも肌が綺麗なのです」

「にゃはは、リューク様は特別にゃ。リューク様は男性とは思えないほど美しいのがズルいにゃ」

「そうですよ!シロップさんは凄く綺麗です」

「二人ともありがとう。あなたたちもとても可愛いわよ」


 いつもは厳しい顔をしているシロップさんが優しく笑うと、とても綺麗です。

 メイドとして過ごす日々はとても楽しく。

 そんなある日、リューク様から私たちもパーティーに参加するようにお誘いくださりました。


「ふぇ!私がパーティー?」

「パーティーにゃ!私、参加したことないにゃ!飲み会とは違うのかにゃ?」

「礼儀作法を仕込まなければなりませんね」


 リューク様が参加する新年を祝う船上パーティーへ一緒に参加するように言われました。私たちにドレスを作ってくださるというのです。私には過ぎた施しを受けている気がしてなりません。こんなにも幸せで良いのでしょうか?


 マイド大商店を知ってはいましたが、入るのは初めてです。大商店の中は煌びやかで、リューク様が伯爵様と揉めるというトラブルはありましたが、相手の方が謝って終わったみたいです。


「今日は三人のパーティー用のドレスを買いに来たんだ。ドレスとアクセサリーを彼女たちに似合うようにオーダーメイドで頼むね。お金はかかってもいいけど、サービスは忘れないように気合いは入れてね」


 リューク様の注文を聞いたアカリさんが、手を叩きます。


「任せといてください!最高級の生地と最高級のデザイナーで作らせてもらいます!」


 大勢のスタッフさんがやってきて、私の服が脱がされ、身体のサイズを測られました。どんどん進む間、リューク様はアカリさんと楽しそうに話をされていました。


 ちょっとズルいなって思いました。話を終えたアカリさんが、私とルビーちゃんの元へ近づいてきました。


「なぁ~二人はどうやってリューク様のメイドになったん?」


 なんなんですか?この人、あまりにも不躾に聞いてきて……ちょっと苦手です。


「にゃ?私たちはリューク様のお仕事をお手伝いをしたにゃ!」

「仕事のお手伝い?そうか、その手があったか……でも、リューク様の仕事ってなんやろ?」

「あっ、あのなんなんですか?いきなり、あなたは何を目的にしているんですか?答えによっては許しません」


 私は巨大な二つの山を見つめながら問いかけました。


「ウチ?ウチは、リューク様の妾になりたいねん。だから情報収集や!」

「なっ!」


 なんですかこの人!ちょっと図々しいんじゃないですか?私だって、リューク様のおよ、お嫁さんなんて!烏滸がましくて言えないのに!!!


「ミリル……女の子がしてはいけない顔をしているにゃ。それはリューク様に見られたらヤバい奴にゃ!」


 はっ!リューク様は……ふぅ~シロップさんと話していて、私のことなど見ていません。それは寂しいですが、よかったです。


「なんや今の顔!ミリルちゃん。あんた面白いな!」

「そうにゃ。ミリルは自分の世界に入ってしまうことがあるにゃ。でも、良い人で面白いにゃ」

「ふっ、二人とも人のことを笑わないでください!」

「なんやろな、学校ではあんまり話したことなかったけど、これからよろしゅう頼みます」

「いいにゃ。よろしくしてやるにゃ」


 ルビーちゃんはすぐに色んな人と仲良くなるんですから!!!


「ミリルちゃん。ウチを味方にしとったらええことあるで」

「なっ、私はそんなことで」

「デザート」

「!」

「綺麗になれんで」

「!!」

「リューク様もミリルちゃんを好きになるかもな」

「!!!」

「それにウチ発明が好きやから、ミリルちゃんが医療関係の道具をほしかったら作ってあげられるけどなぁ~」

「しっ、仕方ないですね。仲良くしてあげてもいいです。ですが、リューク様の妾や側室は別の話です。あくまでお友達としてです」

「にしし、それでええよ。よろしゅうな」


 私は差し出された手を掴みました。

 決して、デザートや綺麗になれるからではありません。


 ただ、リューク様が仲良くしている人を私が嫌うのは違うと思ったからです。





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