第321話 いざ、迷宮都市ゴルゴン
旅をする者たちが揃ったことで、今度は旅支度が必要になる。
何よりも、ルビーやミリルは王都が久しぶりだ。
ヒナタ親子に至っては初めての王都に戸惑うことも多い。
そこで女性たちに案内してもらって、軽くショッピングを兼ねて観光に行ってから出発することになった。王都は少しばかり閑散とした雰囲気が漂っている。
それも仕方がないことなのだろう。華やかな貴族たちが王都を去り、それぞれの領地へ引き込んでしまったのだ。
それでも物は集まるのが王都だ。
女性たちは買い物に出ていった。
その間に、ボクはアカリが用意してくれた荷馬車の準備に取り掛かる。
今回の馬車は、特別な物を用意した。
伝説の聖獣麒麟のオウキが引いてくれて、バルニャンが荷台の部分を持ち上げる。
では、中は? ボクがもう一体バルを召喚すれば確かに快適かもしれない。
だけど、それじゃ面白くない。
そこでDMPを使って、スプリングマットレスを作り出した。
それをアカリとメルロに渡して、マットレスの研究をしてもらったのだ。
さらに、空を飛ぶとなると上空の温度は地上よりも低くて寒い。
バルニャンが包み込んでくれるので、暖かくはあるんだけど、快適な温度に調整したい。そこで発電機とモーターを作って、快適な温度調整ができる空調システムの研究をしてもらった。
カリビアン領のリューには電気が生まれ始めているから、電化製品の第一段階として、空調機器の開発を成功させた
魔導機器に似た製品があるので、原理としては存在していた。
それを魔力を消費しないで、電気で賄うようにすれば、魔力が弱い人が充電しなくても、誰でも使うことができる。
つまり、歳を取って衰えても大丈夫ってことだ。
ボクとしては自分が魔力を注いで、疲れないため作ってもらった結果だ。
アカリとメルロは楽しく開発に取り組んでくれた。
彼女たちを引き合わせたことは、ボクに取っての最高の縁結びだったね。
同時期に、カリンが少しでも楽ができるように思いついたのが、電子演算機だった。これはアカリやメルロの食いつきも良かったので、そのうち開発が進めば完成するだろう。
アカリは試作品ができた時は、こんなにも便利な物があるのかと感動していたが、ボクがDMPでノートパソコンを出して使わせれば、感動は探究へ変わっていた。
アカリの話しはまた別の時にするとして、今回はヒナタの母親に快適な空の旅を行ってもらうために、鉄でできた荷馬車と快適なクッション性、そして温度管理がバッチリ整えられた。スーパー荷馬車を作り上げた。
荷馬車の中は、それぞれが座りやすいようにシートにもこだわって、生地を作ってみた。魔物の討伐をこれまで大量にしてきて、マジックバックに入れていた素材を大放出して、最高の素材で馬車内を揃えた。
ボクのイメージ的には、プライベートジャンボジェットのようなイメージだ。
ゆったりと寝転ぶことができるマットレス。
ふかふかなソファー。
そして、個別にゆったりと座れる椅子たち。
これで完璧な怠惰プライベート飛行が可能になった。
バルニャンに乗るだけだったボクが、荷馬車という空飛ぶお部屋を手に入れたのだ。
「ふふふ、自分的に最高の出来だね。小さな台所やシャワールーム、それにトイレがつけられたのは大きい。これぞ移動式荷馬車、またの名を空飛ぶキャンピングカーだ!」
ほとんどアカリとメルロが、ボクのために作ってくれたものだ。
ボクとしては大満足な出来栄えで感動している。
メルロの部下たちである、ドワーフたちが内装も外装も超特急で作ってくれたので、カリンには臨時ボーナスを出してあげてほしいとお願いしておいた。
彼らは美味しい食事と、お酒を好んでいるので、カリビアン領のリューは彼らにとって最高の環境なのだ。
彼らにボーナスを出してあげても、リューの街で飲み食いに使ってくれるので問題ない。
「ふぅ、荷馬車の装備を確認していると、迷宮都市ゴルゴンのホテルに泊まるよりも快適かもしれないな」
ボクとしてはこだわり抜いた逸品ができて満足している。
「リューク様、ただいま帰りました」
「クウ、おかえり。みんなもおかえり」
ボクが出迎えると、クウが手早くメイド服へと着替える。
身長も伸びて、体つきも変わってしまったので、メイド服はシロップのお下がりだ。
身長が足らないので、スカートだけは切ってミニスカートにしている。
黒いミニスカメイドにウサ耳がよく似合っていた。
「リュークは何をしていたのですか?」
私服に着替えたシーラスは、お淑やかな感じで、金髪の髪を触りながらモジモジと問いかけてくる。
「ボクは旅の準備をしていたんだよ。ほら」
キャンピングカーの中を見せるように扉を開く。
好奇心旺盛なシーラスが中を見て喜んでくれる。
「凄いですね!」
「本当にゃ! 凄いのにゃ! こんな馬車見たことないにゃ!」
「ふふふ、そうだろうそうだろう。外部からの攻撃はオウキとバルニャンが防いでくれるからな。台風に巻き込まれても壊れない最強の荷馬車だ」
シェルターにもなるので、世界が滅亡しても生きていける作りになっている。
「すごいです〜!!!」
「リューク様は楽しそうですね」
ヒナタはただただ感心してくれて、ミリルは馬車ではなくボクが楽しそうにしていることを喜んでニコニコとしている。
「さぁ、みんな乗ってくれ。オウキ、バルニャン。目的地は迷宮都市ゴルゴン、場所はバルニャンがわかるから、オウキお願いするよ」
「(^O^)/」
「ブルル」
全員が乗り込んで席に座れば、バルニャンが荷馬車を包み込んで重さを取り払ってくれる。
バルニャンから伸びた縄がオウキに巻き付いて、オウキが浮き上がる。
「さぁ! 迷宮都市ゴルゴンに出発だ!」
ボクは最高の気分でベッドへ寝転んだ。
ヒナタ母は、体調がいいということで席に座っている。
ボクはシーラスの細い太ももに頭を預けて怠惰な移動を楽しんだ。
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