第322話 前夜祭
《sideノーラ・ゴルゴン・ゴードン》
リュークから手紙が届いて、一ヶ月ほどが経ちんした。
皇国にいると言うことで、一度カリビアン領に戻って、王都に寄ってからこちらにくると書かれてありんした。
そろそろ来ても良い頃だと思って、ソワソワしてしまいんす。
「ノーラ様、続々と来客が訪れております」
「そうでありんすか」
お母様の部下たちは、継続して仕えてくれているでありんす。
皆ムキムキだった体を維持しているので、日々のトレーニングが欠かせないんでありんす。
それに実務もほとんどがお母様がいなくても回るようにできているでありんす。
そのおかげでわっちは図書館を作る監督に集中できて、街の整備も上手く行ったでありんす。
《建築のススメ》という本のおかげでありんす。
お母様の頃の職人たちや、スラムの法律はそのまま残しした。
強き者や脳ある者は更なる高みに。弱き者や脳なき者は最低ランクに落とすことで這い上がるチャンスを与えるのでありんす。
わっちは強者でありんしたが、知識のない脳なき者でありんした。
それをリュークがわっちに本と言う知識を与えてくれんした。本は凄いのでありんす。
わっちの興味をそそらせ、新たなことを教えてくれるでありんす。
「教国より、聖女ティア様! 十二使徒ロリエル様、十二使徒ミカ様のお三方がいらっしゃいました!」
わっちは主として、来客を迎える役目をしておりんす。
「よくぞおいでくださいました。わっちがノーラ・ゴルゴン・ゴードンにございます」
「これはこれはご丁寧にありがとうございます。教国の使徒ティアにございます。ご招待頂きありがとうございます」
「今宵は大図書館健立記念前夜祭として、パーティーをするでありんす。どうぞ楽しんでいってくださいませ」
わっちは慣れない王国言葉を使って、なんとかお迎えをしていんした。
その後は、エリーナ王女や、従姉妹で聖女になったアイリスも来てくれんした。
他にも他領の貴族や商人が来て、わっちに挨拶をしていく中で、最後までリュークが現れることはありませんでした。
大勢の貴族や海外の来賓を出迎えるうちに疲れ、前夜祭のパーティーも佳境に入る頃。
一通りの挨拶を終えたので、わっちは休憩しておりんした。その部屋に怪しい人物が現れんした。
「邪魔するよ」
「えっ!」
怪しい衣装で全身を包みこみ。
顔だけでなく、体型や身長もわからない。
その肌すら見えないほど全身を隠した衣装にわっちは唖然としてしまいんした。
「なんじゃお前は!」
「くくく、我か? 我が名はアケガラス。預言者アケガラスである! 貴様が主催者だな。予告してやる。この式典は失敗に終わる。多くの災いを含み。明日の式典は血の惨劇に変わることだろう」
「図書館の式典を邪魔するつもりかえ?」
「我ではない。我は預言者。ただ、未来を予言する者なり!」
ボフッ!!
煙玉が投げられて、それでもわっちはアケガラスを捕まえようと手を伸ばしんした。
しかし、伸ばした腕に魔導具をつけられ、一気に力が抜けていくのを感じんした。
「ふふ、無闇にやたらと攻撃する者ではないよ! レディー」
預言者アケガラスは捨て台詞を吐いて、姿をくらませんした。
わっちは力が抜けて身動きが取れなくなりんした。
くっ! そのまま煙を吸い込み意識を失んした。
♢
《sideリューク》
ボクが到着するとパーティー会場が燃えていた。
最初の部屋から煙が上がり、前夜祭のために用意された会場が爆発に巻き込まれていく。
会場に集まった貴族や関係者は、それなりに腕に覚えのある者たちばかり、一般的な者たちを守りながら避難することは難しくないだろう。
「オウキ、皆を守れ」
「ブルル」
「ルビー、シーラス、ミリル、状況に応じて動け。クウ、ヒナタ親子を守れ」
ボクは全員に指示を出して事件が起きている会場から距離を取った場所に荷馬車を停める。
僕はノーラの安否を確認するために、バルニャンに乗って浮かび上がった。
ボクが死んだことを知らない貴族たちの中に顔見知りがいるかもしれないので、全身を隠すような衣装に身を包む。
最初に煙が上がった場所へと飛び込めば、ノーラが倒れていた。
「ノーラ!」
ボクはノーラを煙の中から助け出して、外へと飛び出す。空から会場を見下ろせば、すぐにノーラの部下たちが消化活動を始めているようだが、多くの人々が逃げ惑い大混乱が起きていた。
「一体何が?」
到着早々に騒がしい中で、夜の星々よりも会場が燃える炎の方が強かった。
空を飛ぶボクのことなど気にかけるものは誰もいない。ノーラを抱き抱えて、バルニャンと共に飛び立った。
馬車へと戻ってくると、クウとヒナタ親子がどうしたら良いのかわからない表情で待ち受けていた。
「一先ず、この場で待機だ」
ボクはノーラをキャンピングカーにあるベッドに寝かせて顔の汚れを拭いていく。
幸い倒れて意識を失っていたことで、火を吸い込むこともなかったようだ。
外傷となる場所には回復魔法をかけて治療を終える。
後は、ノーラが目覚めるのを待つだけだが、それまでの時間が長く感じれた。
しばらくしてノーラが目を覚ます。
「ノーラ!」
「リューク? リューク! 来てくれたんどすへ!」
起き上がってボクに抱きついたノーラは、いつもよりも弱々しく。全く力を感じれなくなっていた。
それは魔力も腕力も全て、彼女の力が失われたような状態だった。
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