幕間 5 武器

《sideカウサル・イシュタロス》

 

 プラウドという男を知った時、我は傲慢なだけで上流階級に生きる最低最悪な貴族だと思っていた。


 自分こそが世界の中心で、自分が傲慢に生きるために全ての人間を虫けらを扱うように接する人物だと思って気に食わないと感じた。


 だが、あの決闘の日……。


 拳を交えたからこそわかることもある。


 プラウド・ヒュガロ・デスクストスは、努力を重ねる人物だ。


 一日一日、何か成長させている。

 それは戦うことだけでなく、知識や生活、己で出来ることは全てやるような奴だった。


 奴が作る料理は美味くて、博識で面白い。

 傲慢である態度も、全ては自分のプライドを貫き通すためにエリートであり続けている奴なりの鎧なのだ。


 逆にアグリ・ゴルゴン・ゴードンは、自由な奴だ。


 自由でありながら、プラウドに勝利した幼い頃から、プラウドの高い壁として常に共に研鑽を積み。

 持って生まれた身体能力に驕ることなく貪欲に強欲に強さや知識を求めて、それを手に入れることをしてきた。


 悔しいが天才と秀才。


 二人の人物を見て思った感想ではあるが、どちらも努力を重ねた結果。


 化け物へと進化している。


 戦闘民族として、もてはやされていた我々イシュタロス族は強さこそが証明だった。


 だが強さだけでは滅びる。


 これからの世は賢く、家族にならなければ絆を持てね。


 我には初代様と同じ力が目覚めたことで、稀代の導き手として言われ続けてきた。


 それがどうだ。


 塔のダンジョンという場所に来て、ここが人を成長させるためのダンジョンであるということを思い知らされた。


 十階層ゴブリンのボスまでは、冒険者が初心者から抜け出せるまでの訓練が詰める。


 十一階層からは、サンドゴーレムと言われる力だけでも、魔法だけでも倒せない魔物が現れる。

 仲間がいるならば協力して、一人で挑むのであれば、戦い方を工夫しなければ勝つことが許されない。


 二十階層のボスゴーレムまでは、それぞれの力量で難なく倒せるレベルに我々三人は成長していた。


 ボス部屋、クリスタルゴーレムは一定以上の攻撃力を超えなければ物理攻撃がほとんど効かない。その上で、魔法は跳ね返す。


 では、どうやって倒すのか? それを模索した時。


 我は己の力を強引に使うやり方で倒そうとした。

 

 それでも倒せる。


 だが、二人の戦い方は違っていた。


 これまで同様に人を育てるダンジョンであることがわかっているからこそ、プラウドはクリスタルゴーレムを相手に稽古を始めた。


 闘気を纏い、剣だけでクリスタルゴーレムに挑み攻略してしまった。


「うむ。こうすれば勝てるのか」

「もう、プラウド! 一人で倒さないでよ」

「うん? なら戻ってもう一度やろう」


 ボスモンスターは、倒した者は先に進むこともできるが、入り直すことでもう一度倒すことができる。


 先に進めば、次の階層から再度始められるが。

 我々はクリスタルゴーレムを三人それぞれが一人で倒せるまで続けた。


 結局、プラウドは剣で関節の隙間を縫うように攻撃をして倒した。

 アグリは、コアの位置を見極めて撃ち抜いた。

 我は、クリスタルの強度を超す一撃でゴーレムを真っ二つにしてやった。


 それぞれの攻略法で全員が倒せるようになるまで一日かかった。


 三人ともが倒せるようになって、次の階層に進むのか、それとも外に出るのか決める魔法陣が設置された部屋に入ると、


 その二つとは異なる魔法陣が三つ出現していた。


 合計五つの魔法陣があり、明らかに今まではとは違う雰囲気を漂わせている。


「これが噂の魔法陣というわけか」

「そうみたいね」


 いつもとは違う魔法陣に触れてみてわかる。


 人を選ぶ魔法陣だ。


 該当する人物が魔法陣に入らなければ発動しない。

 三つ出現したことで、我は青色に光り輝く魔法陣に触れて初めて反応した。

 プラウドは赤、アグリは金の魔法陣へと入っていく。


 眩い光の先には祭壇があり、一振りの剣が突き刺さっている。


―選ばれし者よ


【我を取れ】


「これが選ばれし者に与えられる武器ということか?」


 力を手に入れられるならと剣を握る。


【汝に問う!力を何に使う?】


 剣から伝わってきた問いに口角が上がる。


「そんなこと決まっている。我は国を取り戻す。そして、巨大な帝国を作るのよ。小国家郡? バカなことを言うな小競り合いばかりしている集団ではないか、我は力を持って国を成す。それは人であろうが、亜人であろうが、魔族であろうが全てをひれ伏せさせる力を欲する」


【汝に問う!貴様が持つ力とはなんだ?】


「それも決まっている。我は戦闘民族イシュタロスの初代様と同じ導き手となる。大いなる力、誰もが無し遂げられぬことを成し遂げる力だ」


【汝に問う!力がほしいか?】


「欲しい! 我の物となれ!」


【汝の答え……しかと、我に刻んだ。選ばれし者よ。我を抜くがいい。貴様が心から覇道を歩む時、その心が折れぬ限り我は何時と共に道を切り開く導き手とならん】


「御託はいい。我に力を寄越せ!」

 

 剣を抜き放つ。


 光が放たれて、剣を抜いた我はいつの間にか魔法陣の外へと戻っていた。


「戻ったな」


 プラウドにアグリはすでに戻ってきたようだ。


 プラウドの腰にはロングソードに似た業物の剣が二本。

 アグリは鉄でできた扇子を持っていた。


「どうやら三人とも手に入れらたようね」


 我が掲げるのは、いつも使っているバスターソードよりも一回り大きな剣であった。


「随分と大きな剣ね」

「うむ。これが我が手に入れた力だ」


 握られた大剣を見て、自分の中に新たな力が宿ったことが感じる。


 属性魔法【勇者】


 今までよりも、ずっと強い力が我に宿った。

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