幕間 4 滅亡

《カウサル・イシュタロス》


 我が祖国、イシュタロスは戦闘民族と呼ばれていた。

 小国家郡の中でも戦いに優れ、戦闘の中で死ぬことを名誉としてきた。


 それは、我が一族の源流となる人物に起因している。


 その人物を崇め奉り、代々血脈を続けてきた。


 だが、そのせいで他の小国家郡との小競り合いから衝突が始まり、戦争になった際の脅威と判断されて、他の小国家郡の国々から一斉に奇襲を受けることになった。


「カウサル。あなただけが希望です。強くなりなさい」

「母上!」


 小さな村の一角にまで逃げ込んだ我ら親子は最期の時を迎えようとしていた。

 だが、母はイシュタロスの女として、最後まで我に抗えという。


「生きるのです、カウサル。生きて、イシュタロスを再興してください。全てをひれ伏す力をあなたは受け継いでいます。あの方の再来と言われたあなたなら」


 父は真っ先に戦場に向かって敵の大将首を取って討ち死にした。

 

 国から逃げる際に見た光景は、母上の最後の姿だった。


 気丈に振る舞う母上は、迫り来る蛮族供に果敢に攻め入り火を放って多くの敵を道連れに死んでいった。


「ふぅ」


 夢から目覚めた類まれなる全身から汗を吹き出していた。

 

 腕を持ち上げて拳を握る。


「ガハハハ、あの手紙のせいか」


 先日、魔王との戦いを終えた我の元に一通の手紙が届いた。

 そこには祖国イシュタロスが滅亡したことを告げる事柄が書いてあった。

 最後まで抵抗していたオジキたち組織も壊滅をしたそうだ。


 これで俺は天外孤独の身になった。

  

 敵国からは、即刻小国家群に戻り、自害しろという命令書のようなものが届いていた。


「誰がするか、馬鹿めが」


 我は強くならなければならない。


 王国に逃がしてくれた家族のため、イシュタロスの再興こそが悲願であり、我が達成させなければならない目標だ。


 そのためにも強さがいる。


「どこにいく?」


 旅支度を終えて、アレシダス王立学園の校門を潜る際に、プラウドに声をかけられた。


「何、ここでのやることは全て終えた。だから、元の国に戻るのよ。魔王に会って己の力量もわかった。もうここにいても意味はない」


 力をつけるため、もう一度魔王に挑む。

 そして、魔王を倒せたなら、我は自信を持ってイシュタロスを取り戻す戦いに赴ける。


「逃げるのか?」

「なっ?! 我はどこにも逃げん!」

「お前の元に手紙が届いたことは知っている。こちらには情報を取り扱うプロがいるのだ。小国家群の一つであるイシュタロス国が滅んだことを知らないとでも思ったのか?」

「ぐっ!?」


 知られたくはなかった。


 この男だけには、我に苦渋を舐めさせたライバルには……。


「お前に頼みがある」


 我が顔を背けると、プラウドにしては珍しい言葉が出てきた。


「頼み? 貴様が? 我にか?」

「そうだ。お前の実力を知っているから頼むのだ。オレと共に塔のダンジョンに挑まないか?」

「塔のダンジョン?」

「そうだ」


 意味がわからん。


 塔のダンジョンの話は聞いたことがある。

 五十階層の黒龍が、誰にも倒せなくて突破できないと聞いた。


 そんな場所に挑む意味はない。


 我は、魔王を倒せるほど強くなって、イシュタロスを再建しなければいけないのだ。

 そんなところで遊んでいる暇などない。


「塔のダンジョンには、人を選ぶ武器があるそうよ」


 我の葛藤を見透かしたように、アグリが興味を唆る言葉を発した。


 この男たちは我よりも強い。


 悔しくはあるが、王国に来て世界の広さを知ることになった。


「人を選ぶ武器?」

「ええ、塔のダンジョン二十階層。そこのボスを倒すと資格ある者が訪れた時、ダンジョンはその者に武器を授けるらしいのよね。なんのためにそんなことをしているのかは知らないけど」

「力がいるのだろう?」


 プラウドの言葉に、奥歯を噛み締める。


「同情か? 我を憐んでいるのか?!」

「そんなダッサイことしないわよ。お宝が欲しいだけ」

「くれてやるなど言っていない。オレが取りに行くから手伝え」


 傲慢な物言いをしているはずなのに、その言葉の意味を読み取れてしまう。


 我は二人に背中を向けた。


「ふん、何が手伝えだ。我はたまたまレベルを上げるための修行をしようと思っていたから出かけるところだったのだ。貴様らが我に相応しい狩場を提供するというなら一緒にいってやるのもやぶさかではない」

「な〜に〜? カウサル。あんたもツンデレなの? プラウドも素直じゃないけど、あんたたちってどこか似てるわね」


 アグリの言葉に顔が熱くなるのを感じる。


 プラウドを見れば、呆れたような顔でアグリを見ている。


「何よ?」

「お前も同じだろ?」


 プラウドの言葉にアグリが両手を広げる。


「それもそうね。それじゃ我が領地へ出発しましょう。男の意地よね。強くなって、魔王をぶん殴りに行きたいと思うのは全員一緒なんだから」


 そうか、こいつらも。


 我だけではなかったのだ。


 魔王との戦いで、我らは無力であることを知った。


 だから強くなりたい。


 そのために武器やレベル。自分に足らないものを手に入れるのは悪くない。


 それにもう少しだけこいつらと共に歩む道も悪くはないだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき


どうも作者のイコです。


いつも「あく怠」を読んでいただきありがとうございます!


本日は、宣伝です(๑>◡<๑)


新作を日本、SFとラブコメをあげております。

シルバーウィークの暇つぶしに読んでいただけたら嬉しく思います。


SF「美少女育成ゲームなのに、ハードモードなので課金アイテムでなんとかします。」


ラブコメ「ストーカー男に襲われている美人を助けたら、おっさんはヒモになった」


ラブコメは投稿二日目ですが、意外に好評です(๑>◡<๑)


どうぞよろしくお願いします(๑>◡<๑)

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