第209話 MVP発表

 色々と騒ぎが大きくなってしまった大規模魔法実技大戦は、王都全域で好評なまま終焉を迎えることに成功した。デススライムなど、モンスターでの死者はおらず重症者は出てしまったことが大きい。


 最終的に全員で協力して、魔物に立ち向かって討伐を果たすことができたのは大きい学園側としても喜ばしいことだ。


 デススライムを倒した功労者として、聖剣を持って戦う、絆の聖騎士ダンの名はモニターを通して、王都全土で知れ渡ることになった。

 これまでは剣帝杯によって知れ渡った名を変えるほどの影響力を持ち、絆の聖騎士ダン側に控える美しき二人の女性にも注目が集まった。


 通人至上主義教の聖女ティア

 絆の聖騎士を支える健気な乙女ハヤセ


 二人の胸部は二大巨頭として、モニター越しでもバルンバルンと揺れる姿が、男性たちの瞳を釘付けにした。


 また、デススライム以外の魔物を、各地に散らばって倒した七人の戦女神たちにもモニターは注目していた。


・リンシャン・ソード・マーシャル

・エリーナ・シルディー・ボーク・アレシダス(アンナと共に)

・リベラ・グリコ

・ルビー

・メイ皇女(皇国一行と共に)

・ナターシャ

・マルリッタ


 美しき戦女神たちは、各地に散らばって生徒を守るように戦いを繰り広げ、指揮官としての役目を果たした。

 大規模魔法実技大戦にて、活躍した光景を見ていた人々は彼女たちのファンになって、声援を送ったほどだ。


 そこで学園側も王都に住まう者たちへ向けて、デススライム討伐祝いを兼ねた大規模魔法実技大戦で活躍した者へ賞が与えられることになった。

 

 最優秀賞のMVPを一人として、それ以外にも各部門に賞が設けられた。論功行賞というほど堅苦しいものではないが、教師や生徒から投票するだけでなく、視聴者票として王都中からも投票を集めた。


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《実況解説》


《実況》「皆様、ここからは我々が実況と解説をさせて頂きます。七日間という期間が用意されてはおりましたが、五日目にて白チームの王と宝が奪われたため、決着となりました。注目を集めた今回の大戦は様々な選手の活躍の場面がありました。ハイライトを観ながら解説をお願いします」

《解説》「はい。まずは、一日目の落とし穴から両勇者の脱落でしょうか? 勇者は脱落しても復活はできますが、大穴の仕掛けとそれを実行したナターシャ選手は大活躍でしたね」

《実況》「はい! 正に策士と言えるでしょうね。さらに、四日目は勇者同士の再会を演出する大掛かりな森フィールド改変。さらに聖女奪取からの白チームの回復役脱落は、黒チームの流れるような作戦が決まったと思いました」

《解説》「ええ、あれがあったからこそ、最終日の白チームの奇襲が行われました。全兵力を突入しての一点突破。さらに勇者ダンの特性を活かした空からの奇襲。精鋭だけの敵陣突入からの軍師リュークを撃破したところまでは良かったのですが、ダンジョンが再開してしまったのは残念でしたね」

《実況》「ええ、本当に面白い戦いでした。それではいよいよ集計も済んだようなので、今回の賞を獲得した選手の発表をしていこうと思います」


技術賞 黒チーム アカリ・マイド

隠密賞 黒チーム クウ 白チーム ルビー

功労賞 黒チーム メイ・カルラ・キヨイ

軍略賞 白チーム ジュリ

防衛賞 黒チーム ナターシャ

討伐賞 黒チーム カスミ

優秀賞 白チーム ダン

最優秀賞 黒チーム リューク・ヒュガロ・デスクストス


《実況》「これらの賞は、今回特別に用意された賞であるため、今後も使われていくのかは不明ではあります。ですが、ここに名を連ねた者たちには、今回の戦いに名誉と功績を讃えます」

《解説》「優秀者、最優秀者には、王から騎士の称号が授与されることが決まったそうです」

《実況》「アレシダス王立学園にとっては、学園剣帝杯に並ぶイベントになりそうですね」

《解説》「はい。今後も森フィールドで行うのか、また別のフィールドが用意されるのか、それは分かりませんが実に面白い戦いでした」

《実況》「それでは、次は年末に行われる剣帝杯でお会いしましょう! 学生剣帝杯のあとは、四年に一度行われる王国剣帝杯も待っております。皆様どうか、今後も話題が尽きない王都の英雄たちをお見逃しなく!」


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《sideリューク》


 黒チームは平民も貴族も入り乱れて、酒を飲んで祝いの祝勝会の席を設けた。

 大戦を観ていたカリンが駆けつけてくれて、黒チームだけでなく、白チームにも料理を振る舞ってくれた。 


「ねぇ、騎士授与で辞退できたっけ?」

「リューク、ダメよ。そんなこと言ったら、個人で爵位を頂くのは名誉なことなんですからね」


 ボクの言葉に対して、カリンに嗜められてしまう。

 流石にダメか、ワンチャン断れるかと思っていたけど、無理なら仕方ないね。断って面倒なことになる方が余計に面倒そうだ。


「それよりも勝利おめでとう、リューク」


 カリンと二人きりで過ごすのは、久しぶりのことだ。他の女性たちはカリンに遠慮して今日は挨拶をしてそれぞれで過ごしている。


「ありがとう、カリン。これはある意味でシミュレーションだったからね。ボクにとっては勝敗なんてどうでもいいんだよ」

「それでも、リュークが色々な人に認められたのは、私にとって凄く嬉しいことよ。学園に入ってからもリュークは自分の功績を隠そうをしてたでしょ。活躍しているのに、誤魔化すような態度や行動ばかり。だけど、今回初めてリュークは王都中から認められる戦いを披露した」


 カリンが誇らしげにボクを讃えてくれる。

 ボクとしては、そこまで票が集まるなど思ってもみなかった。

 ほとんど砦から出ることなく、最後はルビーによって脱落者になったのに。


「私は全部は見れてないけど、リュークが考えた作戦が、上手くいったって聞いたよ。それに戦場全体をリュークが支配してたって」

「大袈裟だよね」

「ううん。きっと、みんながリュークの凄さに気づいたんだよ。私はそれが嬉しいな」


 上機嫌でいるカリンに水を差すのはよくないね。

 今日はカリンに褒められることにしておくよ。

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