第235話 地下迷宮ダンジョン侵略 終

 ボクは地下迷宮ダンジョンに侵入して悠々と進んでいく。侵略組の魔物は全て森ダンジョンの魔物が請け負ってくれている。

 防御側は、黒光虫魔物が殲滅してくれた。地下迷宮ダンジョンの魔物は完全に潰えた。


 侵略するボクを阻む者は誰もいない。


 地下一階で何かを踏んだが、まぁ邪魔にはならないから問題はない。

 地下一階を通り過ぎ、二階、三階と階段を降れば、広い空間の一番奥に地下迷宮ダンジョンのコアルームが見えている。


「どうやら全てを吹き飛ばしたことで、見晴らしが良くなったな」


 ボス部屋と廊下の境がなくなっている。全てが一つのフロアとなった地下迷宮ダンジョンの三階層をコアに向かって歩く。


「あっ、あなたはとんでもないことをしてくれましたね!」


 どうやら、ここに来るまでにDMPを使って体を元に戻したようだ。

 コアの前にはシータゲと死霊王ディアスが並んでボクを出迎える。

 ダンジョンコアが見えている状態ではなんの脅威にもならない。


「シータゲ、お前はダンジョンマスターの力を誤解している」

「誤解ですと? 何を言っているのですか? これほど優れた力はありません。魔物を従える、これこそ王の象徴。つまり私は魔王になったのです。そうですね、この地下迷宮ダンジョンは死を司る。さしずめ死王シータゲというわけです」


 饒舌に話をするシータゲは、微塵も自分の敗北を考えてはいないことだろう。


「バカなことを、お前は本当の魔王を知らない。魔王は、何年もいや、何百年もかけて《魔王の住処》と言われる最強のダンジョンを作り出した。所詮、レベル3程度のダンジョンのマスターになったからと言って、意味はない」

「ふん、そんなものあなた方森ダンジョンを吸収してすぐにでもレベルを上げて差し上げますよ。やっておしまいなさい。死霊王ディアス! 先ほどよりもグレードアップさせましたからね。新生死霊王ディアスの力とくとごらんなさい」


 ボクは仮面を外して、バルニャンを出現させる。

 デススライムをどうして防衛に当てたのか?

 そんなもの決まっている。

 侵略側における最強の駒は、ボクであり、バルニャンだからだ。


「バルニャン、行ってこい。思い出させてやるがいい」

「はい。マスター」


 バトルモードにフォルムチェンジしたバルニャンがパワーアップした死霊王ディアスを一瞬で切り刻む。

 それはダンジョンマスターになる前、シータゲに怠惰の大罪魔法をかけた時と同じように。


「ヒッ、ヒィ! あっ、あなたはまさか!」

「今更気づいたのか? お前はボクのダンジョンに必要ない。お前には怠惰すらもったいない。ただ業火に焼かれて跡形もなく消えるがいい。火葬をプレゼントしてあげるよ」


 魔導銃は、ただ魔力を弾丸として放つだけでなく、もう一つの能力をメルロと共に開発した。

 ボク一人では開発できなかった発想を、メルロによってもたらされた。


「名工メルロの一品だ。第一に味わえることを喜べ。ファイヤーブレット」


 リンシャンの属性魔法である《炎》を弾丸に魔法陣として組み込むことで、本来の属性魔法が使えないボクでも《炎》を放つことができる。


「なっ! なんですと!!!」


 ヒロインたちの属性魔法が、そして技術や発想がボクを勝利へ導いてくれる。


「メルロに研究成果を報告しないとね。それにアカリに銃の性能の報告もかな? リベラが二人の間で魔法陣の調整もしてくれているから、そっちもやらないとね。それに侵略戦が続くなら、ルビーの戦闘力は必要かな?」


 ボクはヒロインたちの顔を思い浮かべながら、ダンジョンコアの前に立つ。


「今日からお前はボクの物だ。いいね」


 バルニャンがダンジョンコアにアクセスを開始する。


《森ダンジョン 対 地下迷宮ダンジョンの 侵略戦が終了しました》


 世界の声とでも言えば良いのか、侵略戦の終了が告げられる。


《勝利者は森ダンジョンマスターバル。勝利者特典が開示されました》


・ダンジョン名の変更

・ダンジョンの吸収

・ダンジョンレベルアップ

・ダンジョン内転移

・召喚種族の増大

・王の資格


 表示された内容は詳細が見えるようだ。


・ダンジョン名の変更


 王への道が開かれました。

 己が切り開く道に名前をつけられます。

 新たな王よ、自らの道に名前をつけてください。


・ダンジョンの吸収


 二つの以上のダンジョンを得ました。

 ダンジョンを吸収して同じ属性にすることができます。

 吸収すれば、別の属性ダンジョンが消滅します。

 ただ、吸収を選ばなければ、ダンジョンは現存することも可能です。その場合は二種類のダンジョン属性を支配することになります。


・ダンジョンのレベルアップ


 レベル3以上のダンジョンを二箇所保有しました。

 ダンジョンマスターがレベル4に上がります。

 これにより侵略範囲の拡大が行われ、また世界にダンジョンマスターの存在が認知されます。

 これまで秘匿、保護されていた情報が各地のダンジョンマスターに開示されます。


・ダンジョン内転移


 自身が保有するダンジョン内であれば、どこへでも転移が可能になりました。

 二つのダンジョンで行きたい場所に思考するだけで転移可能です。


・召喚種族の増大


 異なる属性のダンジョンを支配しました。

 森属性、死属性、二種類の魔物を使役することに成功しました。

 あなたが召喚できる魔物の種類が増えました。


・王の資格


 これよりあなたはダンジョンマスターとして、新たな道を歩むことが決定されました。

 そのため他のマスターにダンジョンが狙われるようになります。

 


 資格を得た新たなる王よ。


 王たるもの、己がダンジョンを守り、広げ、存分にお楽しみください。


 怠惰なる王に幸在らんことを。


 


 

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