第499話 エンディング

 目の前で《怠惰》の化身であったクマの姿をしたキモデブガマガエルのリューク・ヒュガロ・デスクストスが消滅していく。


 ボクの中に感じていた《怠惰》が完全に消滅した。


「今のはなんだよ!」

「どうやら呪いを全て持っていってくれたようだ」

「えっ?」


 ボクの体から角がなくなり、通人族としての普通の体に戻っていた。


「皆、どうやらボクは生き残ってしまったようだ」


 あっけらかんと言い放ったボクの言葉に、リンシャンやエリーナがボクへ向かって抱きついてきた。


 七人を同時に受け止めることができなくて、そのまま倒れ込んだ。


「よかった! 本当にリューク!」

「リューク。あなたがいなくなるなんて嫌でしたわ!」

「リューク様、リューク様」

「リュークよかったにゃ」

「ダーリン! 心配させんといてや」

「本当によかった。リューク様」

「ふふ、奇跡が起きたのですね」


 ボクは生きているんだ。


 彼女たちに暖かさを感じられる。

 

「えっ? えっ? どういうことなんだ?」

「ダン、お前は勇者だ。ボクの中にずっとあった《怠惰》の呪いを切り裂いてくれたんだ。《怠惰》の呪いと、魔王の呪いが打ち消しあって全てがなくなってくれたんだ」

「マジかよ!!! やったな! これで魔王も退治できて、リュークも救われたってことかよ!」

「ああ、ありがとう。お前もハヤセの元に戻すよ。バルニャン!」

「はい。マスター」


 ボクがバルニャンに声を掛ければ、ダンジョン転移を使ってダンをハヤセの元へ帰した。


「ダン。またな」

「ああ、今はゆっくり休め。リューク。次は俺から会いに行く」


 ダンに別れを告げて転移を発動する。

 魔王城もすでにダンジョン攻略対象として手中に収めている。 


 バルニャンを通して、感じられる通り。

 ダンジョンとしての機能は継続しているようだ。


 世界の王としての権限は生きている。


「みんなリューの街に帰ろう」

「「「「「「「はい!!!」」」」」」」


 彼女たちを連れて、ボクは家に帰った。


「リューク!」

「リューク様」


 カリンとシロップが出迎えてくれる。


 その後ろにはリューの街に住んでいる大勢の人たちが集まってきていた。


「カリン、シロップ。全部終わったよ」

「お疲れ様」「お疲れ様でした」

「あ〜、やっとゆっくり過ごせる。その前にやらなくちゃいけないことが山積みだよ」

「ある程度の手続きは終わらせているわよ」

「さすがはカリン。まずは王位をユウシュンに返納しないとね」


 ボクはすぐにこれまで背負っていた重荷を全て解放することにした。


 アレシダス王国の王権を全て手放して、デスクストス家の土地や資産を、テスタ兄上の息子へ全てを譲り、後見人としてビアンカ義姉に任せることにした。


 全ての重荷を取り払った。


「主様、よろしいのですか?」

「何が?」


 ボクはいつも通り、バルニャンとモーニングルーティンを行いながらシロップがタオルを待っている。


「洗顔にモーニングルーティンは、もうしなくてもいいのでは?」

「不思議なことなんだけどね。一度始めたことをやめてしまう方が気持ち悪いんだよね。二日ほど怠惰に過ごしてみたんだけど、う〜ん違和感ばかりで」

「ふふ、結局は、主様は働くのが好きなんですね」

「それは違うよ。シロップ」

「えっ?」


 ボクは洗顔を行ったばかりの顔に化粧水と乳液を塗って、パックをしていく。


「昔からボクは変わっていない。健康的で幸福な怠惰になりたいんだ。寿命をまっとうして、危険なことがないように平和で。みんなと楽しくおかしく暮らしていく。これがボクが考える健康的で幸福な怠惰な生活だよ」


 そのためにはモーニングルーティンは必要だ。


 朝食もみんなの分をボクが作って、子供達のお世話もする。


 保育園に行って、子供達を迎えて昼寝をしている間に、カリンや妻たちの顔見に行って回復魔法をかけてあげるんだ。


「それでは怠惰ではないと思うますが」

「そうかな? カリンに養ってもらって、アカリに欲しい物を作ってもらって、リベラと魔法の研究をして、シロップ、ルビー、クウと散歩をして、ミリルやシーラスト研究をして、エリーナやココロとのんびりとする」


 他にもたくさんの妻たちと幸福な時間を過ごしながら、ダンジョンの管理者としてボクは生きていく。


 世界の王となったボクは、魔王の呪いがなくなったけど死ぬ時が選べるようになったからね。


 君たちと幸せに暮らせる時間を大切にしたい。


 それが短い時の中の一瞬でも一緒にいたいんだ。


「シロップ。ボクは昔から何も変わらない。好き勝手に、あくまで怠惰な貴族を続けるだけだよ」


 寂しいことにではなくなったかもしれないけどね。


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 あとがき


 どうも作者のイコです。

 最後まであくまで怠惰な悪役貴族を読んでいただきありがとうございました。


 リュークの長い旅は全ての危険を取り除き、妻たちと共に幸福な時間を迎えることで終結となります。


 本編は完結となりますが、まだその後の話や、ダンやタシテの話など書いてみたいと思うこともありますので、もうしばらくお付き合いいただけれ嬉しく思います。


 2023年11月15日から、一年と三ヶ月かけて書き上げた私の代表作です。


 たくさんの方々に応援いただいたこと嬉しく思っております。

 今後は書籍やコミカライズで、リュークやその仲間たちのお話をお届けできればと思います。


 その際にはどうぞ応援をよろしくお願いします。


 また、近々新作の投稿も予定しておりますので、その時には応援をいただければ嬉しく思います。


 それではまた、WEBか書籍で私の作品に触れてくださること心待ちにしております。


 

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