第237話 ヒロインたちの会話 12
《sideリンシャン・ソード・マーシャル》
カリビアン領リューの宮殿にて、私はリューの領地を管理する執務をしていた。一通の手紙に口元を緩めてしまう。
信頼できる者が運んできた手紙であるが故に、これが本物であると理解できる。
「ふふ、リュークは楽しそうにしているじゃないか」
手紙の内容は、ダンジョン侵略について記されており、リュークがダンジョンマスターとして色々と楽しんでいることが書かれいてた。
ダンジョン同士の侵略がどう言うものかはわからない。
ただ、手紙には勝利を収めたことが書かれており、ダンジョンについて理解を深めたことが伝わってくる。
そして、今後の動きや、リュークが私たちにしてほしいことなどが書かれていた。それぞれの妻たちに対する願いなので、私は久しぶりに彼女たちに声をかけることにした。
「早速集まってもらってすまないな」
宮殿には、カリン様が用意した大小の円卓テーブルがあり、今回は小の円卓テーブルを同級の者たちを集めた。
「リンシャンは相変わらず堅苦しいなぁ。ウチらはダーリンを通して家族になったんやから、もっと気楽な言葉使いでええよ」
「そうにゃ。少しずつでも崩して話してほしいにゃ」
「リンシャンさん。私もまだ慣れませんが、少しでも仲良くなれたらと思っています」
「リンシャン、貴族や平民といった階級はこの場ではいらないのよ」
アカリ、ルビー、ミリル、リベラの四人が私を気遣うように声をかけてくれる。
各部門のトップをリュークの妻たちが務めるリューの街は、私たち五人で街の政策を決めている。
ただ、政策と言っても私はカリン様の代理であり、政務の意向はリュークの望みに従っている節がある。
「リュークから手紙が届いた。皆にも共有したいと思ってな」
全員の瞳が真剣なものへと変わる。
彼女たちのリュークへの想いが伝わってくるようだ。
「まずは、リュークはダンジョンマスターになったことで、ダンジョンのレベルを上げること成功したようだ。現在のダンジョンレベルは四」
「ふぇ! まだ一ヶ月ほどしか経っていませんよね? レベル四って中級クラスのダンジョンになったと言うことですか?」
私の発言にミリルが驚いた声を出す。
博識であるミリルは、ダンジョンの知識も持ち合わせている。
「そう言うことのようだな」
「ダーリンは、ようわからんことしてるな。なんでダンジョンのレベルを上げとるん?」
「なんでも、ダンジョンはレベルを上げることで、領地を増やしてできることが増えるそうだ。そして、DMP(ダンジョンマジックポイント)を稼ぐことで、できることを実現させる。アカリも、リュークがダンジョン内で作り出した武器を見たんだろ?」
「見たっていうか、メルロと作ったからなぁ〜。実物をあれだけ精巧に見せられれば、簡単に作れるわ」
リュークの元へ届けた武器以外にも、いくつかアカリは頼まれたアイテムを、リベラとメルロに協力してもらって作っている。
「実物見せてもらったら、それは作れるけど。もっとすごい事ができるってことやんな?」
「ああ、レベル三になった時点で、他のダンジョンを侵略できるようになったそうだ」
「侵略にゃ? 戦争みたいなもなのかにゃ?」
「そうでしょうね。リューク様のことですから、効率的に侵略を行なっていることでしょう」
戦闘を口にすると、ルビーとリベラはリュークの戦いについて議論を開始する。私も参加したいところではあるが、今はリュークからの願いを伝える方が先だ。
「先ほども言ったが、リュークはダンジョンをレベル四に上げた。つまり、すでに侵略を開始して、一つのダンジョンを吸収した。そして、レベルをあげたことになる」
私の言葉に全員が耳を傾けてくれている。
「そして、リュークが次に狙うダンジョンは」
「「「「ダンジョンは???」」」
「我らがカリビアン領の深海ダンジョンだ!」
「「「「おおおおおおお!!!!」」」」
四人が拍手をして喝采をあげる。
「ふふ、リュークによれば、近々カリン様とシロップを連れてこちらに戻ってくる」
「やっとやね」
「待ってたにゃ」
「ふふ、嬉しいですね」
「我らが旦那様の帰還だな」
全員が嬉しそうな顔を見せる。
私だって、久しぶりにリュークに会えるのは嬉しい。
だが、ここからが本番だ。
「リュークが戻ってくるまでに、全員にやってもらたいことがある。今から手紙に書かれていた内容を伝えるぞ」
「望むところやね。ダーリンを迎えられるなら、やる気も100倍やで」
「楽しみにゃ! アカリ、素材ならいくらでも言ってほしいにゃ。父ちゃと母ちゃと一緒になんでもとってくるにゃ!」
「薬の調合が必要かもしれませんね。ルビー、私にもとってきてほしい素材が」
「三人とも、リンシャンの話が途中です。まずは最後まで話を聞きなさい」
浮き足だつ三人とは違って、リベラは流石に冷静だな。
本来は、彼女が領主代行を務めるべきだと思っていた。
「リベラ、お前が領主代行をやった方がいいんじゃないか?」
「お断りします。私は研究者なのです。カリン様がいなければ、リューク様の横に立って、お心を理解するのはリンシャン、あなたの役目です。私はリューク様を魔法によって支える役目があるので」
リベラは、私とは違う立場でリュークのことを理解している。
「それぞれ気持ちが逸るのはわかるが、それぞれの役目を伝えていく」
一癖も二癖もある、彼女たちをまとめる役目をリュークに任されたのだ。
私は私の役目を果たすだけだ。
そして、リュークがこの街に戻ってきた時には、カリン様同様にリュークを支えたい。
「以上だ。リュークの要望以上の成果を出してやろう」
「当然やで!」
「任せるにゃ!」
「絶対にやりとげてみせます!」
「ふふ、面白くなってきたわね」
私たちは五人の話し合いを終えて、夕食を共にしてリュークたちを出迎える話に花を咲かせた。
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