第62話 一年次 剣帝杯 9
《Sideカリギュラ・グフ・アクージ》
俺様の名はカリギュラ・グフ・アクージだ。
俺様の家は力こそが全てだ。弱い奴は死ぬ。
ガキの頃から戦場に引きずり出されて、魔物も人も殺してきた。
普通の奴には絶対に負けない。俺様には兄姉妹弟がたくさんがいるが俺様が一番になってやる。
アレシダス王立学園に入学したときも、俺様はすぐにトップになるつもりだった。
だが、入学した当初、この学校には化け物が二人もいやがった。
ガッツ・ソード・マーシャル
テスタ・ヒュガロ・デスクストス
俺様にとって忘れられない記憶を刻み込んでくれた因縁の二人だ。
まず、ガッツは一年生でアレシダス王立学園 剣帝杯を制覇して、魔法に、剣に、才能に溢れていやがった。
アクージ家は強さこそ全てで勝てば良い。
勝てれば何をしようと正義だと教えられてきた。
実際、剣帝アーサーは「清廉潔白などクソだ」と言った。
大いに賛同するねぇ~勝てばいい勝てば。
その結果、卑怯だ何だという奴が悪い。
そんな奴らは弱いから負ける。
だが、強い奴は力だけじゃないことを……テスタ・ヒュガロ・デスクストスに教えられた。奴は冷酷な目をしていたぜ。
今思い出しても身震いするほど冷たく、人を人とも思ってねぇ目をしていやがった。
俺様は、そんな二人にケンカを挑んだ。
もちろん、勝つつもりで挑んだ。その準備もしてから挑んだ。勝つことしか考えて無かった。
どんな手を使おうと勝つ。
だが、ガッツ・ソード・マーシャルは《不動のガッツ》に恥ねぇ男だった。
何をしても動じねぇ、揺るがねぇ、こっちの揺さぶりを悉く撥ねのけやがった。
最後は組み伏せられて、俺様の背中には奴の剣の痕がまだ疼きやがる。
あれは紛れもなく死闘だった。ゾクゾクするほど楽しかったぜ。
そして、テスタ・ヒュガロ・デスクストス……奴はやべぇ……俺様が何かを仕掛ける前に全て潰される。
手下の何人を殺されたのかわからねぇ……どんな方法を使っているのかもわからねぇから反撃しようもねぇ……完膚なきまでに俺様はテスタに負けた。
だから、俺様は考えた。
アイリス・ヒュガロ・デスクストスを俺様のモノにすれば内部からデスクストス公爵家を破壊できるんじゃないか?あの悪名高きデスクストス公爵家を俺様が丸ごと手に入れる。
だが、アイリスは俺様がせっかく求婚してやったのに断ってきやがった。
だからこそ、この剣帝杯で白黒を付けることにした。
今回、ガッツもテスタもいない。敵になる奴は精々ムーノ王子で奴なら問題ない。
アイリスを会場でメチャクチャにして俺様のモノにしてやる。
だが、出場者を知ったことで俺様の考えは少し変わっていく。
順当に勝ち上がっていくうちに二つの名が目に付いた。
リンシャン・ソード・マーシャル
リューク・ヒュガロ・デスクストス
やはり、この二つの家が俺様の前に立ち塞がるのか?俺様はガッツとテスタの時のようなことにはならないように、色々と情報を集めることにした。
奴らの弱みにつけ込み、裏工作を仕掛けるつもりだった。
だが、一つ目の作戦がリュークによって邪魔される。
ネズール家をこちらに引き込むことに失敗した。
デスクストス公爵家の犬と呼ばれるネズール家は、表向きはテーマパークの管理者だが、裏では情報を取り扱うブレーンと言われている。
多くのインフォーマーを抱え込み、どこから集めたのか分からない情報を取り扱うことが出来る。
奴らの情報網と暗殺術は、我がアクージ家も一目置くほどだった。
だが、リューク・ヒュガロ・デスクストスが、タシテ・パーク・ネズールをすでに配下として取り入れていたことは誤算だった。
案の定、ネズールの裏工作を利用してリュークは八強まで一度も戦わないで上がってきた。力が無い者がよくやる手だ。
だが、これによって俺様は確信した。
リンシャン・ソード・マーシャルも、リューク・ヒュガロ・デスクストスも大した力を持っていない。俺様からすれば取るに足らない弱者だ。
リンシャンの戦いを見たが平凡……強くはあるが、俺様からすれば弱い。ガッツの十分の一も実力を感じない。魔法も闘気も弱い。
リュークの戦いは見ることができなかったが、裏工作で勝ち上がってきた奴に優勝まで出来た奴はいない。
くくく、取るに足らない相手だ。
ならば、決勝でアイリスを俺様のモノにして全てが思惑通りに動いていく。
「一人で自爆してろ」
やっぱりリンシャン・ソード・マーシャルは弱かった。
何が試合だ。ここは戦場だぞ!殺されるまで負けじゃねぇんだ。
ガッツに見せつけてやる。お前の妹はこの場で俺様によって晒し者にされるんだ。
「くっ……こ」
いいねぇ~いいねぇ~鳴けよ。喚けよ。
それが俺様の心を満たしてくれる。
俺様が勝ったことを教えてくれる。
ガッツ!お前の妹は今日で壊れるんだ。
「カリギュラ・グフ・アクージ!!!」
俺様の名を呼ぶ奴がいた……身体が動かなくなるのを感じる。
「あぁ?なんだ?」
「離せ」
「あぁ?リューク・ヒュガロ・デスクストス。貴様になんの!!!!」
テスタを越える圧倒的な魔力……ガッツを越える闘気……リンシャンに構う気力を失わせる何かが俺様の心を埋め尽くしていく。
「くく、なんだよ。力を隠してやがったのか?面白ぇじゃねぇか。いいぜ、マーシャル家のお姫様は貴様にくれてやる。お前の女だったか?デスクストス家と戦争する気はねぇよ。
だが、わかってるんだろうな?リューク・ヒュガロ・デスクストス、お前は俺に借りを作ったんだ。明日は必ず俺を楽しませろ。その義務がお前には出来たんだからな。この借りは高く付くぜ」
リンシャンなどどうでもいい。
リューク・ヒュガロ・デスクストス……貴様に勝てば俺様は満足出来るだろう……
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