第131話 アンナの策略

《sideアンナ》


 私は危機感を感じています。


 我が主はアホなのです。


 あっ、これは言葉が過ぎました。


 我が主は……天然なのです。


 何故ならば……


「ねぇアンナ。リュークは今何をしているかしら?」

「さぁ?いつも寝ておられるので寝ているのではないでしょうか?」


 夕食時なので、食事だと思いますよ。


「そうね。リュークったら寝てばかりで本当にどうしようもないんだから。

 でも起きたときのリュークは本当にカッコイイのよね。

 さすがは我が夫。ガッツ殿との決闘は凄かったわね」


 毎日リューク様のことを話題にされるのは望むところです。ですが、黒龍戦でリューク様にキスをされた以外は、ほとんど我が主様とリューク様の間に進展がございません。


 お子ちゃま脳しか持ち合わせていないエリーナ様は、相手から求められなければ女性としての能力を発揮出来ない受け身タイプなのです。

 それに対してリューク様は、数々の女性を侍らせるハーレム王です。リューク様を求める女性はたくさんおられます。


 リューク様ご自身は【怠惰】を公言されているほど、積極性のないお方です。


 そんなエリーナ様とリューク様が……仲睦まじく添い遂げるためには……


 私が動くしかありません。


「エリーナ様」

「何かしら?」

「リューク様と一緒に居ようとは思わないのですか?」

「えっ、でも恥ずかしいじゃないの。私とリュークはキスをしたのですよ。もっとたくさんキスをしてしまえば子供が出来てしまうかもしれません。

 そうなっては学園をやめて子供を育てなければならないのですよ!」


 キスだけでは絶対にできません。

 むしろ、子供が出来る行為をバンバンにしてください!


「そんなことでは他の方々にリューク様を独占されてしまいますよ!」

「えっ…… それはイヤだけど」

「ならば、私に策があります」

「策?」

「はい。エリーナ様はこの国でアイリス様と並ぶ美女と言われております。頭脳明晰で魔力も高い。ですが、恋愛に関する知識が乏しいと考えます」

「わっ、私だって多少は男女のことは学んでおります」

「はい。ですが足りぬのです」

「足りない?」

「はい。ゴニュゴニュゴニョゴニョ」


 私は多少過激になっても良いので、少しばかり大げさにお伝えしました。


「そっ、そんなことまで男女はするのですか?!!」

「はい。殿方とは我儘な生き物なのです。

 女性は殿方を喜ばせるために様々な衣装チェンジをして、殿方の目を楽しませます。そうやって興奮を煽らなければなりません」

「えぇぇ!!はっ、恥ずかしいではありませんか!」

「それもエリーナ様がリューク様からのご寵愛を受けるために必要なことでございます」

「わかりました!やってみます」

「では、私はリューク様を確保して参ります!」


 私はエリーナ様に着替えを促して、リューク様の下へと参りました。


 リューク様は夜になればカリン様のところへ行かれてしまいます。その前に捕まえなければなりません。


「リューク様!」


 幸運な事に、リューク様は黒の塔のベランダで涼んでおられました。私はすぐ様リューク様の元へ跳び上がりました。


「うん?ああ、アンナかどうかしたの?」

「はい。本日はどうしてもリューク様にお時間を頂きたく」

「ボクに?う~ん、エリーナ関係?」

「左様でございます」

「わかった、いいよ。ちょっとだけ待ってね」


 リューク様は専属メイドのクウ殿に何か言付けを頼んで、私の元へ来てくださいました。


「エリーナの部屋に行けば良いのかな?」

「申し訳ございません。お二人のことを思えばエリーナ様の部屋では良からぬことを考える者もおります。

 どうか私の部屋をお使いくださいませ」

「わかったよ。じゃあ行こうか?」


 私を抱き上げたリューク様が、ベランダから飛び降りました。


 推しにお姫様抱っこ!!!エリーナ様申し訳ございません。お先に逝きます!!!


「アンナ?着いたよ」

「はっ!申し訳ございません」


 さすがはリューク様です。

 女性のエスコートが完璧ですね。


「こちらへ」


 エリーナ様の部屋の隣にある、私の部屋へとリューク様を招き入れました。

 部屋の中にはエリーナ様が銀髪を綺麗に梳かして、白いネグリジェ姿で待っておられました。


「おっ、お待ちしておりましたリューク様。どっ、どうか私を可愛がってくださいませ」


 グッジョブです!!!エリーナ様!!!


 きっと何をされるかも分かっておられないでしょうが、メチャクチャ可愛いですよ。


 私も素早く着替えました。


 黒いネグリジェを着てエリーナ様のお側に控えます。


「ふむ。エリーナ」

「はっ、はい!」


 白く透き通るような肌をしたエリーナ様。

 そのお顔が真っ赤に染まっておられて男心をくすぐっておられます!!!これぞ天然美女でございます!!!


「話をしたいと思っていたんだ」


 リューク様がエリーナ様の頬に手を添えて、ベッドへと誘います!!!


 キャー!!!私は特等席でお二人の逢瀬を……


「りゅっ、リューク様……」

「震えるか…… 気にするな。怖いことなどないよ。今宵は共に寝よう」


 あっ、鼻血が出てきました。

 リューク様ドエロです。

 見ている私が……


「アンナ」

「はっ!」

「ここはアンナの部屋だ。一緒に寝るか?」


 リューク様!!!欲張りでございます!!!


「ご所望であれば……」

「所望だ」

「仰せのままに……」


 エリーナ様と私に腕枕をしたまま、リューク様は二人の髪を撫でて寝付かれてしまいました。


「アンナ…… リュークと一緒に寝るって凄く幸せなのね」

「はい。幸せでございます」


 リューク様を抱きしめながら眠れる日が来ようとは…… 


 願わくば二人の服も脱がして欲しかったです。


 これからは徐々にエリーナ様と共に責めさせて頂きます。


 あっ! 私……


 リューク様の匂いが消えるまで、シーツが洗えません!

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