第115話 塔のダンジョン 60日目
修学旅行も残り一ヶ月を切ったこともあり、ボクはダンジョン攻略に参加することにした。
参加するキッカケになったのは、エリーナから熱烈な同行をお願いされたからだ。
「40階層のボスはなんとかなったのです。ですが、41階層から現れた魔物が倒せません。私たちでは攻撃力が足りていないようなのです」
自分達の実力を状況判断をして、ボクに助力を求めてきたのだ。
エリーナが成長していることはわかるが、ボクとしてはめんどうなので自分達で解決してほしい。
ただ、ゲームの進行上、ダンやリンシャンの成長を見ておく必要があると判断して参加することにした。
「リューク!見ていてくれ。お前が示してくれた力を!」
ダンは物凄く張り切っている。
新たな力を得たことで、自信がついた様子だ。
「ドラゴンだな」
41階層からドラゴンパピーが現れる。
ドラゴンは単純に攻撃力、防御力が高く。
ブレスは、種族に応じて吐かれる属性も変わってくる。
ドラゴンパピーは種族としては子供の部類に入るが、全長5メートルに体重1トンを超えているので馬鹿にできない。
これが成龍になれば30メートルの大きさになり、体重も100トンを超えてくる。
さらに古龍になれば、どこまで成長するのかわからない。
「俺が攻撃を受け止める!」
4人の戦いを観戦していると、ダンが前に出てドラゴンパピーの攻撃を受け止め始めた
《不屈》は、自分の心が折れない限り、敵の攻撃に耐えられると言う魔法だと認識しているそうだ。
ダンの性格に合っていていいと思うが、ドラゴンパピーの攻撃を受けて吹き飛ばされるダン。
ドラゴンパピーは遊んでいるようにしか見えない。
壊れないオモチャを手に入れたドラゴンパピーは、転げるダンを追いかけている。
「リンシャン、ドラゴンの意識がダンに向いている間に、魔法を放つわよ!」
「わかった。アンナ、物理攻撃は任せた」
「承知しました」
三人がドラゴンパピーの隙をついて攻撃を開始する。
防御力の高いドラゴンにチマチマした攻撃をしてもイライラさせてしまうだけだ。
「くっ!倒しきれない」
リンシャンの悔しそうな声が聞こえる。
ボクが参戦して、倒すことは容易い。
それだとリンシャンから、自分達の訓練にならないと言われそうだ。
ダンがドラゴンパピーと遊んでいる間に指示を出すことにした。しばらく1人でやらせていても大丈夫だろう。
「アンナ、ちょっと来て」
ボクが呼ぶと、次の瞬間には目の前にアンナが現れた。
えっ?アンナの動きが戦っている時よりも速くないか?その動きができるなもっと楽に倒せると思うけど。
「はい。なんでしょうか?リューク様」
「ドラゴンの攻撃ポイントなんだけど。こうして、ああして」
「なるほど」
「次は、エリーナを呼んできて」
「かしこまりました」
ボクの命令を聞いたアンナが、エリーナの元へ駆けていく。こちらに来た時よりも遅いのは何故なんだろう?さっきの速度が気のせいなのかな?
「参上しました」
「うん。ドラゴンは魔法に対して耐性が強いんだ。
でも、氷は弱点だから、直接ドラゴンを狙うんじゃなくて、周りを凍らせて温度を下げられる?」
「もちろんです!少しずつ、ダンジョン内の温度を下げるようにします」
「次はリンシャンを呼んで」
「わかりました」
エリーナは随分と素直になったと思う。
プライドが邪魔して素直になれなかっただけなんだろうな。一度挫折したことで素直になれたと言うことかな?
「策を授けてくれると聞いた」
「ああ、ダンが注意を引きつけてくれているのは、正直意味がない」
「なっ!」
「意識は速度があり、中距離から攻撃できるアンナに向けさせる」
「アンナが危ないんじゃないのか?」
「アンナは、この中で一番速さがあるから逃げてもらうしかないな。それにエリーナが氷の魔法で、このフロアの温度を下げるから、ドラゴンの動きが鈍くなる。
そこでリンシャンの出番だ」
「私?私にできることがあるのか?」
「君は炎の魔法を剣に纏わせるか、炎の魔法で剣を作り出せるか?」
「どちらもやったことはないな」
ボクは、無属性魔法で、魔法剣を作り出して実践したところを見せる。
それを属性魔法でしてもらうだけだ。
「こうなのか?」
「まぁ、形は荒削りだけどいいかな。動きが鈍くなったドラゴンにはチマチマした小技は必要ない。
目、喉、腹の三か所の何処でもいいから狙ってくれ。
その炎の剣を突き刺して来て全力でね」
「わかった」
ボクは3人に作戦を伝えて、実行させる。
ダンに向いていた意識がアンナに向いて、アンナがヘイトを集める。
さらに、エリーナがフロアの温度を下げることで、爬虫類であるドラゴンの動きが次第に鈍くなっていく。
成龍や古龍なら、対策をしているかもしれないが、パピーなら問題なく効果を表す。
動きが鈍くなり、冷えた体へ熱せられた強力な炎の剣を突き立てれば、温度差とダメージでドラゴンであろうと倒すことができてしまう。
「やった!倒したぞ!リューク!私が倒したんだ」
リンシャンがドラゴンを倒せてハシャイでいる。
うん、可愛い。
「リューク様の指示通り上手くできました」
いつの間に来たのか、アンナが隣に立ってほめて欲しそうな顔を向ける。
「チームワークの勝利ですね」
エリーナもサポートに回ったことで、倒せた実感を持てたようだ。
「3人ともよくやった。このフロアは今のやり方で倒せるはずだ。次のフロアに行くまでにレベルをしっかり上げよう」
ボクが3人を労って声かけを行うと、ダンだけは唖然として固まっていた。
「ダン」
「リューク…… 俺は」
「お前は力の使い方を間違えているぞ。それはただ耐えるだけの属性魔法じゃない」
「えっ?」
「その聖剣に何を願って、どんな力を宿したのか、もう一度考えてみろ」
ボクにできるヒントはそれだけだ。
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