第275話 王国剣帝杯 18

《side実況解説》


《実況》「王国剣帝杯第二回戦がやってまいりました。ここまで勝ち抜いたツワモノ揃い。しかし、この八強がどのような戦いを繰り広げていくのか、それを決める運命の戦闘は、抽選によって行われます。これがトーナメント形式であれば、第一試合一回戦と二回戦の選手が戦うところですが、そうはいかないのが王国剣帝杯です」


《解説》「強者とはどのような条件下でも勝てる存在。それが例え裏工作であろうと、実力であろうと、運もまた勝利の鍵となる」


《実況》「それではベスト四を決める一人目の選手はこいつだ!」


 実況が引き寄せた抽選に人々の注目が集まり、そこに書かれた名は……。


《実況》「邪道M騎士 性駄犬師ダン!!! 王国の騎士がベスト八のトップバッターを飾る!これほど似合う人選はないでしょう」


《解説》「一回戦での壮絶な戦いは皆の目に焼き付いていますからね」


《実況》「対するはこいつだ!!! 銃剣士レベッカ!!!」


《観客》「「「「「「「「ウオォぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」


 両者の名前が呼ばれると控えの間の扉が開いてダンが姿を見せる。


 さらに、銃剣士レベッカも姿を見せる。


 騎士と軍人。


《実況》「互いに姿は違えど、国に仕えた者同士、しかしあまりにも評価が真逆!遠距離から相手にダメージを与え、近距離で一撃必殺の攻撃を放つレベッカ嬢の攻撃に対して、性駄犬師ダンは、あまりにも……あまりにも相性が悪い!!!」


《解説》「性駄犬師はこれまで女性に対して滅法強いところを見せてきました。ですが、この大会の一回戦で男性にボコボコにされても、笑って立ち上がる姿は誰もが恐怖したことでしょう」


《実況》「攻撃を積み重ねて相手を倒すレベッカに対して、一切の攻撃を受け切って立ち上がる駄犬。これはあまりにもダン選手が有利に見えるぞ!!!」


「本当に気持ち悪い称号ね」

「人が何を言おうと気にはしないさ。ただ、俺たちの相性が悪いのは事実だ」

「そうね。あなたはその絆の聖剣を使って、攻撃を堪えるのでしょ?」

「ああ、俺の心を折らない限り、お前に勝ち目はないぞ」

「あなたの心を折るね。そんな弱点を晒して大丈夫なのかしら?」

「問題はないさ。俺の心を折れた奴は誰一人いないのだから」

「そう、私が最初の一人になったあげるわ」


《実況》「互いに武器を構える! それでは王国剣帝杯第二回戦第一試合目を開始します!!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

《sideダン》


 銃剣士レベッカは強い。

 ムーノを倒した因縁の相手として、研究をしていた。

 独自の武器と技術を駆使して戦う姿は初めて見る。


 レベッカは銃剣術の達人で、銃の正確な射撃と俊敏な身のこなしで敵に立ち向かう。


「先手はこちらからいかせてもらうわ!」


 レベッカは後方に下がりながら、遠距離から魔弾の銃撃を俺に向かって放った。高速で飛んでくる魔法弾は、一撃一撃の威力が高くじりじりとこちらの体力を削っていく。


 レベッカの銃弾が俺の鎧を凹ませ、絆の剣がなければレベッカの銃撃で終わっていただろう。少しずつ銃撃の受け止めて一歩ずつ前に出る。


 俺は力強く剣を振りかざした。胸にハヤセを思い浮かべ、剣に力を貯める。


「俺は絆の聖騎士、お前の弾丸など通じはしない!」


 俺の声は壮大な響きを放って、コロッセウム内に響き渡る。


 レベッカも引く気はないようだ。


「銃剣士の力、見せてあげるわ!私の銃弾は、どんな鎧も貫くのよ!」


 宣言通り凹んだ鎧に数発の魔弾が当たり、鎧を貫いた。

 彼女の声は自信に満ち、強靭な意志が伝わってくる。


《実況》「互いの意地と意地のぶつかり合い! 攻撃のレベッカと防御のダン! 互いの攻防が激しさを増していく! 周囲の景色は彼らの闘志に染まっていきます。彼らの技と意思がぶつかり合う中、一触即発の緊迫感が漂います」

《解説》「彼らの技量と意地が入り混じった闘いですね。周囲の者たちを圧倒するほどの激しさを持って展開されています」


 時間が経ち、レベッカの動きが次第に鈍り始めた。

 だが、俺も多くの攻撃を受け、疲労は溜まってきている。

 

 決着の刻は近い。


 レベッカが銃を振り上げ、最後の一撃を放つために接近してくる。


「遠距離じゃ埒がないわ!」


 俺はこの時を待っていた。力を振り絞り、光の力を纏わせた一撃を放つため。

 

「ウオォぉぉぉぉ!!!」


 レベッカに向かって俺も突進を始める。

 絆の聖剣が彼女の方へと振り下ろされる。


 必殺の一撃を放つ間合いで、カウンターを喰らったレベッカは驚愕の表情を浮かべた。

 彼女の体が地面に沈んでいく様子が、コロッセウムに静寂をもたらす。


 俺は息を切らしながら、彼女の倒れた姿を見つめる。

 まだ、立ち上がってくるかもしれない。

 レベッカは立ちあがろうとして、そのまま前のめりに倒れた。


「君の強さに敬意を払う」


《実況》「決着!!!なんとダンが、邪道M騎士が、銃剣士の猛攻に耐え切った!!!」

《解説》「やはり女性との相性は抜群ですね。途中の攻防でダンが倒れる姿が思い浮かばなかったです」


 俺は勝ち上がった者としての強い決意を表した。


《実況》「ダンが腕を振り上げた!!!コロッセウムはそれでも静寂に包まれる!これが性駄犬師の真髄だ!!!」

《解説》「勝者ダン。されど、誰も望まぬ勝利とは……」


 俺は闘技場を後にした。


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《sideリューク》


 ダンの勝利報告を解説者が告げたところで、僕らの戦略戦術ボードゲームは布石の段階に入っていた。


 互いに駒を置いて、攻めてを探り合う。


 指導者は必ず、最初から配置しなければならないため、どこにいるのか特定できる。だが、後から配置できる駒によっては、攻め入ったところで不意打ちを喰らう恐れもある。

 

「本当にこのゲームは初めてですか?」

「ああ、始めてだ。だが、戦略ゲームの要素がある以上。互いの駒には役割があり、また戦術にも型がある。型とは即ち、攻防戦を行う前の準備をどれだけ整えるかということだ。それにこのゲームの面白いところは、倒した駒を三つの方法で選択できることだ。一つ、自陣の駒として再利用する。二つ、消滅という形で排除する。三つ、捕虜として、リソースに交換できる。実によく考えられていると思うぞ」

「それを瞬時にご理解されるバル様が異常なのですが、まぁいいでしょう。このゲームに関しては私に一日の長がある。バル殿が攻めて来ないのであればこちらから、いかせて頂きましょう」


そう言ってウィルは騎士の駒を持ち、我が陣地に攻め込んでくる。

迎え打つのは兵士。


兵士は騎士に弱く。

騎士は弓兵に弱く。

弓兵は兵士に弱く。


この三すくみの影響で、騎士は兵士への攻撃を通す確率が跳ね上がる。


「ダイスを二つ振ります。バル様が降ったダイスの目よりも大きければ、兵士を倒したことになります」


 そう言ってウィルはダイスを二つ振り、三すくみの影響で、ボクは一つのダイスを振った。


「私が、12。バル様が1ですか。なんとも振る意味もない数字差でしたな。兵士を一人撃破!」


 そう言ってボクの兵士の駒を持ち上げる。


「それではリソースとして、生贄に捧げます。これにより特殊効果カードを一枚引き。ターンエンドです」


 ウィルは満足そうな顔をするが、ボクは弓兵を使って騎士を撃破する。

 そして……


「ボクは騎士を我が兵として使う」

「よろしいのですか? このゲームは特殊カードの有無で勝敗が決まると言ってもいい。先駆者の教えですよ」

「ああ、構わない。続けよう」


 ゲームは始まったばかりだ。


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