第274話 王国剣帝杯 17
タシテ君は約束通り、帝国からこちらへ侵入してきた者。
そして、潜伏している草として疑わしい者の情報を二日で集めてきた。
さらに、そこから魔族としての特徴を持ち、魔物使いを特定した。
それだけで終わらないのが優秀な男だ。
もう一人、面白い人物をピックアップしてくれた。
ボクはその人物をベルーガ辺境伯の名を借りて呼び出した。
「この度は、お招き頂き感謝いたします。私、帝国の物を取り扱う商人をしております。ウィルヘルミーナと申します。どうぞ、ウィルとお呼びください」
胡散臭そうなちょび髭を生やし、中年の男は帝国のアイテムを扱う商人と名乗った。
ベルーガ辺境伯領は、裕福であるが故に取引をしたいと申し出る商人は後をたたない。商人は商売の流れを見ていることもあり、帝国だろうが、皇国だろうが、儲かると思えばどこにでも行く。
そのため帝国の品を扱っていても、なんら疑うべき点はない。
何よりも帝国と出入りしているからと、疑い出せばどの商人も怪しくなってしまう。
では、どうしてこの男を呼び出したのか?
それはこの男が扱う帝国の戦略戦術ゲームに興味を持ったからだ。
「ウィル。ボクはベルーガ辺境伯の客将でバルという」
「これはこれは! 王国の新しき星々に名を連ねるバル様でしたか、どうぞお見知りおきを」
本物の商人なのか見定めてもらうために、アカリの父であるモースキー・マイドにも同席してもらった。
この男の言動に不信な点がないか、モースキーに見定めてもらっていた。
「貴殿が取り扱う戦略戦術ゲームに興味があって、本日は呼び出させてもらった。早速だが、品物を見せてはくれないか?」
「かしこまりました。貴族様用の一品をご用意いたします」
そう言って提示されたのは、真っ白な紙だった。
「白紙?」
「はい。この紙には魔法陣が描かれており、四つのステージに変更ができるようになっております」
そう言ってウィルが魔法を流すと、白紙だった紙に草原が浮かび上がる。
「ほう、これは凄いな」
「本来は、元々紙にフィールドを書いておりました。ですが、貴族様用に魔法陣に魔力を流すと、こうやってフィールドが変わるように仕掛けを施したのです」
今度は岩場のゴツゴツとした岩山が立体的に浮き上がる。
「実際の地形のようだ」
「喜んでもらえてよかったです。それではルールを」
ルール:
プレイヤーは二人で対戦します。各プレイヤーは異なる国の指揮官となって、相手の国を征服することを目指します。
フィールドは、最初にどの地形で戦うか決めます。
各プレイヤーは、自身の国を代表する駒を自分の陣地に配置します。
以下に駒の詳細を示します:
国の指導者 : 各プレイヤーは1体の指導者を持ちます。指導者は国の中心的存在であり、重要な戦略的役割を果たします。
兵士 : 兵士は主力戦力を担当し、攻撃および防御の能力を持ちます。
騎士 : 騎士は高い機動力を持ち、敵陣深くに侵入して攻撃を行うことができます。
弓兵 : 弓兵は遠距離攻撃を得意とし、敵の駒を遠くから攻撃することができます。
魔術師 : 魔術師は魔法を操り、領土や駒に効果を発揮する特殊な能力を持っています。
回復師:味方の駒に対して特殊な能力を発揮します。
商人:金銭の管理と操作を行い味方の駒に対して特殊な能力を発揮します。
特殊兵:工作か諜報を選択して、それぞれの能力に応じた特殊効果を発揮する。
ゲームは順番に進行し、各プレイヤーは駒を移動させたり、攻撃したり、特殊能力を使用したりします。目的は相手の指導者を倒すことです。
ターンの開始時に、プレイヤーはリソースを得るために領土を確保することができます。領土の確保により、駒の数や能力に影響を与えることができます。
戦闘は攻撃側の駒と防御側の駒の能力や位置に基づいて行われます。ダイスを使用して攻撃の成功やダメージを判定します。
特殊能力の使用にはリソースやターン数などの条件があります。
特殊能力を上手く活用することが戦局を有利に進める鍵となります。
リソースはゲームをする際に、ルールの複雑性を上げるためのものであり、互いに決めたリソースでゲームを開始する。
金銭: ゲーム内の通貨として使用します。金銭を使って駒の強化や特殊能力の使用、新たな駒の雇用などが可能です。
領土: 領土の確保により、プレイヤーはリソースを得ることができます。領土には鉱山や農地などのリソースが存在し、それぞれ異なる効果を持ちます。
アイテム: 特定のアイテムを入手することで、駒の能力を向上させることができます。
エネルギー/マナ: 特殊能力の使用や魔法攻撃などに必要なエネルギーまたはマナポイントです。これらのリソースは駒や特定の領土から獲得することができます。
ゲーム終了条件は以下のいずれかです:
相手の指導者を撃破する。
相手の指導者を包囲し、逃げ場をなくす。
このようなルールと駒の組み合わせにより、プレイヤーは自身の戦略を練り、相手の陣地を突破するための最善の手段を考えることが求められます。
領土の確保やリソースの管理、駒の配置など、多様な要素を考慮しながら戦局を進めることが重要です。
「以上がルールになります。特殊能力や攻撃のルールなど、細かなところはありますが、大まかには以上になります。いかがですか?」
「うん。面白いね。買わせてもらうよ。早速だが、ウィル。ボクの初めての対戦相手になってくれないか?」
「お買い上げありがとうございます。そして初めての対戦相手の名誉。謹んでお受けいたします」
ボクらはテーブルを挟んで向かい合う。
「そうだ。ウィル。賭けをしないか?」
「賭けでございますか?」
「ああ、ボクはこういう戦略戦術ボードゲームで似たゲームを知っているんだ。だから、それなりにやれると思う。君が勝てば、さらに君の商品を買おう。それに君の望みを一つ叶えてもいい」
「ほう、それは商人としては嬉しい申し出でございますね。もしも、私がベルーガ辺境伯様へのお取り継ぎを願っても?」
「もちろん、叶えよう」
ベルーガ辺境伯領に商売をしにくるものは、ベルーガ辺境伯に商品を買ってもらうことを最高の誉れとしている。
「その賭けお受けさせていただきます」
「いいね。その代わり、ボクが勝てば」
「本日お持ちした商品を全て無償でお渡しします。さらに、バル様の願いを私ができることであればなんでも叶えましょう」
「ほう」
「私がここに呼ばれたということは、何か意図がおありでしょう。ここに来て賭けを持ち出すことにも」
賢い男は嫌いじゃない。
ボクらは条件を確認しあって、互いの駒を配置していく。
「駒は全てを置かなくても?」
「もちろん、構いません。ですが、増援は1ターンを消費して自陣に配置するところから始めなければなりません」
「そうか。ありがとう」
ボクは手駒として用意された
指揮官1体
兵士8体
騎士2体
弓兵2体
魔術師1体
回復師1体
商人1体
特殊兵2体
計18体
これをどう使うのか、ゲームを左右する。
そして、攻撃を成功させるダイスと、特殊能力を決めるカード、最後にリソースを決めてゲームが開始される。
「それではゲームを開始しましょう」
「ああ、楽しいゲームの始まりだ」
モニターに映し出される王国剣帝杯は第二回戦が開始されようとしていた。
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