第八章 皇国編
第284話 御前会議
《side皇国》
大広間に集まった者たちは、皇国における主要人物たちで、一年に二度開かれる御前会議のために集まっていた。
皇帝は大勢から神々しい顔を隠すために幕の向こうに座しておられる。
次代の皇帝たる、ハク皇太子もまた皇帝の横に座っていた。
五大老や、将軍たち。さらには財務大臣や政務を司る文部門の者たちも顔を出していた。
「お館様! ご挨拶申し上げます!」
「「「「「「「「お館様にご挨拶申し上げます!!!!!」」」」」」」」」」
関白を務める五大老筆頭が声を上げれば、それに続いて全員が頭を下げて皇帝に挨拶をした。
「うむ。皆の者、よくぞ集まってくれた。こうして皆の顔が見れたこと、余は嬉しく思うぞ」
厳かな雰囲気が漂う御前会議ではあったが、五大老や皇帝には、それぞれ自己の野心や陰謀を腹の中で温めていた。
彼らは裏切りと策略の世界で生きる者たちであり、己の権力を拡大することしか考えていない。
会議室には陰鬱な空気が漂い。
五大老たちの冷たく光る視線が交差し合う。
彼らはそれぞれ自身の派閥や利益を守るため、手段を選ばずに対立を繰り広げている。
皇帝や皇太子は、それらの腹黒い動きに気づいているものの、巧妙に隠された陰謀の影を突き止めることが容易ではなかった。
皇太子ハクは、内心では五大老たちの陰謀に対抗するための策を巡らせていた。
ハクは優れた政治的手腕を持ち、五大老たちの毒牙から皇帝を守るために奮闘している。
「まずは、最近の国について話をしようではないか」
皇帝の言葉に近年の事件や、村々の問題を挙げていく。
次第に五大老たちは口論と罵り合いを繰り返し、相手の失敗や弱点を突いて利益を得ようとして、互いに毒舌を浴びせ合う。
会議室は憎悪と陰謀の渦に包まれていく。
ハクは彼らの卑劣な振る舞いを見透かし、自身の地位と権力を守るために知恵を蓄えていた。
政治的な駆け引きの中で己の野心を達成するために、五大老たちの策略的な駆け引きを見極めている。
御前会議は陰謀と欺瞞の渦に包まれ、個々の存在が利益と野心を追い求める姿が見受けられる。
信頼と裏切りが交錯し、会議室は毒々しい雰囲気に満ち溢れていく。
今の皇国はまさしく蠱毒の巣窟と化していた。
結末は予測不可能で、誰が最終的に勝利するのか、誰が裏切りの犠牲になるのか、互いに牽制し合って、さらに酷い状況が続いていく。
そこには王国から攻め入られていることなど、誰も話題にあげることはない。
♢
《sideリューク》
整備が行き届いていない丘の上は、花々が咲き乱れ、風が靡く。
強そうな武士を引きつれ、風格ある派手な着物に身を包んだ美少年は、美しい花魁である華麗なる美女たちを引き連れて、旅をしている。
「親方様、俺を雇って頂きありがとうございます」
馬に乗り、修行袴に大量の武器を背負った破壊僧ベイケイ。
「あっしまでよかったのですかい?」
馬車の御者に座った剣豪イッケイも問いかけてきた。
「いいさ。旅は道連れ世は情け。君たちが居てくれれば、僕が異国の者であっても隠すことができるかもしれない。それにこの国の常識がわかる者が必要だからね」
「私もこの国の者」
「姫巫女だった君は常識があるとは思えないよ。ココロ」
異国の地では珍しい端正で美しい容姿をした宮廷の貴公子。街を歩けば女性たちの視線を集めてしまう。
だが、彼の洋風の風貌が和風の着物と調和し、異国情緒と古き艶やかさが交錯する光景は、まさに美の調和の極みだった。
ココロは華やかな髪飾りと優美な振る舞いで、彼をお供する美少女として相応しい存在だった。
彼女以外にも、白い犬耳を和風の着物に身を包んだ長身の女性。
真っ赤な髪に花々の模様が施された着物をきた凛々しい女性。
妖艶な雰囲気を纏ったくノ一。
緑の髪に猫耳のくノ一。
五人の女性は、四季折々の花が咲き誇るように美しかった。
そんな風景のような美しさに魅了されながら、囲まれた男性はどこぞの御曹司だと噂されながら古都を漫歩する。
春の桜が舞い散る美しき色づいた庭園を訪れる。
彼らは皇国の文化や伝統に触れながら、心豊かな時を過ごしていた。
「バル。どうして皇国に来る必要があったんだ? このような服まで用意して」
リンシャンの言葉を聞いて、ココロによって果実酒を提供されていたバルが外へ視線を向ける。
「皇国の街並みを見たいと思ったんだ」
「それだけでめんどくさがりのお前が来るはずがないだろ」
「ふふ、リンシャンはよくわかっているね」
「今の私は、リンシャンではない。リンだ」
「そうだったね。リン、シロ、ルビ。三人のことは短縮して呼ぶんだったね」
「そうだぞ。なんだか愛称で呼ばれているようで嬉しいのだ」
「それはよかったね。う〜ん、目的は、皇国のお宝だよ」
「お宝?」
リンではなく、ココロが不思議そうな顔をする。
馬車から見える風景は、王国とは全く異なる景色をしていて、なんだか懐かしさを覚えてしまう。
奇妙な出来事や美しい瞬間の数々で彩られているようだった。
庭園に用意された茶室で静寂なひとときを過ごすことにして、花を眺めながら団子を食う。
「偉いベッピンな人やね? 異国の方?」
「ああ。そうだ」
「え〜、声を聞いたら男の方なんや。いややわ。偉い色男やないの」
茶店の売り子は、ボクを見てはしゃいだ姿を見せる。
王国ではお目にかかれない三色団子に煎茶は、なかなかに相性が良くて美味しい。
時には人々との交流を楽しむのも旅の醍醐味だろう。
「それにしても今は、王国が攻めてきて危ない時やのに、なんやお兄さんは雅やね。あれやわ、カブいてるわ〜」
洋風の美青年と和風の美女の美しい組み合わせは、まさに異国情緒と皇国の美が融合した鮮やかな画景となる。
ボクは存在がバレていもいいと思って旅をしているが、穏やかで疑うことをしない皇国の人々はのんびりとした雰囲気を醸し出していた。
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あとがき
どうも作者のイコです。
第八章スタートです。
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