第33話 ヒロインたちの会話 その2

《Sideリベラ・グリコ》


 誠にもって遺憾です。


 どうして、私がリューク様と同じチームではないのですか?

 先生に抗議しましたが……


「成績によってパーティーを組ませてもらったからね。

 個人的にチームを組みたいなら、週末とかに好きに組んでくれていいよ。

 授業のときはこのパーティーでお願いします」


 最悪です。


 しかも、チームメンバーにも不満があります。


 まずは、リューク様に決闘を挑んだリンシャン様の騎士ダン。

 彼は礼儀も弁えずに自分の実力を過信して、リューク様に決闘を挑んだだけでなく、リューク様に敵意を向けています。


 絶対に仲良くなれません。

 顔も野蛮で嫌いです。


 次にエリーナ・シルディ・ボーク・アレシダス王女。


 王女様ではありますが、リューク様に色目を使う敵です。

 私よりも身長が高くて、スタイルが良くて、胸が大きいことも許せません。

 一番気にくわないのは、王女の属性魔法が《氷》で、私の上位互換なところです。

 まるで、《水》が《氷》に劣るように言う人もいます。

 実技では劣るかもしれませんが、魔法では絶対に負けません。


 最後に……アカリ・マイドさん


 彼女はどこか浮き世離れしていて、思考が読めません。

 平民で、マイド大商店のお嬢さん。

 属性魔法で、希少魔法認定を受けています。

 魔法の話をしてみたいのですが、エキゾチックな髪型に、奇抜な制服の着方をしていて、大きな胸が放り出されています。凄く話しかけ難いです。


「それではパーティー会議を始めます。自己紹介はクラスメイトなので省きますが、これから課外授業ではチームとして行動しますので、よろしくお願いします。どうぞ、私のことはエリーナと呼んでください」


 いやいやいや、王女を呼び捨てとかマジで無理でしょ。


「そうか、俺はダン!エリーナ、よろしくな!」


 おいいいい!!!騎士!お前、騎士だろ。礼儀を大切にしろよ!!!

 せめて、《さん》付けろや!


「ほな、エリーナさんと呼ばせて頂きます。どうぞ私のことは、アカリと呼んでください」


 ナイス!アカリさん。あなた見た目とは違って常識人だったのね。


「わっ、私もエリーナさんで、私のことはリベラとお呼びください」

「はい。ランキング戦で負けると、チームメンバーは替わることもあるかもしれませんが、先生方がバランスが良いと判断してくれた私たちの実力を発揮出来るように頑張りましょう。今日は挨拶だけですので、これで解散にしましょう」


 本当に挨拶程度の会話だけで、エリーナ王女が解散を言ってくれた。

 私は早々に席を立ちあがり、リューク様の下へ向かおうと思う。

 しかし、リンシャン様の騎士ダンと同時に立ち上がってしまった。

 一緒に出るのは嫌なので、もう一度席につく。


「それじゃ俺は行くぞ」

「ええ」


 ダンが会議室を出て行くのを見送ってから私も立ち上がる。


「そや、女だけになったから言うておきたいんやけど……うちは、リューク様狙いですので、よろしゅうお願いします」


 はっ?!今、この女なんて言った!


「あら、あなたもなの?」


 あなたもだと!!!


「リベラは言わなくてもわかるから」

「そやね。リベラさんは結構顔に出るタイプなんやね。クールに見えて意外やわ」


 茶化してくる相手に私は息を吐いて頭を冷静に戻す。


「ハァ~、二人とも、リューク様には婚約者がおられるのはわかっているのですか?」


 私は自分だけでは勝利できないと判断して、カリン様を引き合いに出す。


「もちろんやん。私は妾でもええよ。一度お会いしたときからリューク様の美しさは私のインスピレーションをかき立てるねん。やっぱりイケメンはええわ~。魔導ドライヤーをみつけはったときの子供みたいなハシャギようは忘れられへんほどええもん見れたわ。それに婚約者のカリン様はレストラン経営にダイエット食の開発と天才やよ。うちは商売人として、お二人を支える立場になりたいねん」


 アカリの意見は的を射ているように思う。


 めんどうなことを嫌うリューク様。

 それをお世話して力を発揮するカリン様。

 そこへ商売人としてお金を稼いでくるアカリは相性が良い。


 負けられない。


 私だって、リューク様のために快適な魔法や魔導具を開発するんだ。


「そうね。私はそこまで明確な気持ちはないけれど。

 この間の戦いを見て、彼以上に惹かれる男性に出会ったことはないと思っているわ。

 もちろん、王族である私が恋をしたところで叶うかはわからないけれど、気にはなっているわね」


 こちらも王族として権力の中枢に入り込める。


 リューク様の望む政治を行うことが出来るなら、リューク様の力になれる。


 この二人、侮れない。


「いいでしょう。あなた方は私にとってライバルです。

 リューク様に選ぶ権利がありますが、お二人に負けないように私も励ませて頂きます」

「ええねぇ~こういうの。女同士でライバル宣言。うち好きやわ」

「そうね。これも友情の形なのかしら?私、リンシャン以外の友達がいなかったから、宣戦布告されてちょっと嬉しかったかもしれないわね」


 この二人を相手にすると疲れてしまうのは何故でしょうか?


「とにかく私はリューク様の従者として一番近くにいます。一歩リードですね」


 私はせめてもの捨てセリフを吐いて会議室を後にした。

 リューク様がいる会議室の前に行くとダンが廊下に立っていた。


「なぁ、あいつは普段どんな生活をしてるんだ?」


 教室の前まで来ると、ダンが話しかけてきました。

 どこかオドオドとして気持ち悪いです。


「はっ?何がですか?」

「だから、デスクストスはどんな生活習慣をしてるんだ?」

「敵側のあなたに話をするとでも?私のことは放っておいてください」


 何をわけの分からないことを言ってるのでしょうか?

 ダンがこちらを見てまだ何か言おうとしたところで、リューク様が会議室から出てきました。


「リューク様♪お疲れ様です!」


 リューク様を見た瞬間、私の胸は暖かい何かで埋め尽くされました。

 これが幸せという気持ちなのでしょう。


「話はいいの?」

「問題ありません。行きましょう」


 先ほどのアカリやエリーナの話を思い出して、私は大胆にも手を掴んで歩き始めました。

 リューク様は振りほどくことなく、手を繋がられたまま歩いてくれたので、寮まで手を繋いだまま帰ることができました。


 途中から顔が熱くて、何も話せなくなってしまいました。

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