第113話 癒しを
迷宮都市ゴルゴンは人材の宝庫だ。
亜人たちだけでも様々な人種が住んでいて、ドワーフ以外にも、ジュエリーを加工するのが得意なホビットやフェアリー族。
病気や怪我で戦えなくなった衛兵や冒険者、元騎士なんてやつまでいた。
スラム以外にも街の片隅でなんとか生きているだけの者たちも調べてみれば面白い才能を持つものがたくさんいた。
シロップやクウ、メルロが集めた情報を精査して面接を行なって、必要な人材か判別していく。
ボクに必要ない人材でも、体を治して使える者はお姉様への献上品として、能力を再利用できる者たちは手を差し伸べた。
「ふぅ〜修学旅行って色々と大変だね」
「リューク様だけだと思いますよ。このような忙しいことをしておられるのは」
「そうかな?ボクはクウのおかげで再生魔法を手に入れたからね。色々と役立ってるよ」
クウはこちらを見て嬉しそうな顔をしている。
「ふふ、リューク様が迷宮都市ゴルゴンで、なんて言われているのか知っていますか?」
「ボクが?う〜ん、人材漁りとか?人攫いは嫌だな」
「人助けをする魔王様です」
「はっ?魔王なのに人助け!矛盾してない?」
「ゴードン侯爵様と対等に話ができて、恐ろしい魔王のような方という噂と、人々の傷を治して人を活かそうとしておられる聖者様という噂が、合わさった結果のようです」
ボクは、ボクのためにしていることなんだけどね。
「そろそろ修学旅行に来られて一ヶ月が経ちますが、チームの方は宜しいのですか?」
あれから、毎日ダンジョン攻略後に、エリーナとアンナがダンジョン攻略の報告に来るようになった。
「今日は、20階層のフロアボスを4人で倒すことができましたわ」
「今日は、30階層のフロアボスに到達しましたのよ。挑戦は明日ですわね。えっ?攻略方法?教えて頂けるのですか?」
「やりましたわ!フロアボスを倒しましたの!」
「今日から31階層です。レベル5のダンジョンに突入です。あの、どうすればいいのでしょうか?えっ、魔物がそのように変わりますのね!教えて頂きありがとうございます!」
「魔物を倒せています!もうすぐレベル40です。チームのことはお任せくださいませ」
と言った感じで、エリーナは報告と助言を受けに来るようになった。
アンナは来ても何かを言うことはないが、シロップに代わって給仕をしてくれるお茶はなかなかに美味しい。
相変わらず、リベラたちの方が先行をしているとエリーナが言っていた。
ただ、ダンが新たな力に目覚めたことで随分とチーム力は向上したようだ。
修学旅行に来ている二組以外の攻略は、なかなか難航を極めている。
レベル4のダンジョンは、学生たちにとって一つの壁になっている。
今まで通りの戦い方では決して攻略ができなくなる魔物たちに、脱落者が続出し始めていた。
11階層のゴーレムを倒すことができても、15階層のアイアンゴーレムを倒すことができない。
20階層のミスリルゴーレムを倒せるチームが一学年に1チーム出れば優秀な学年として数えられている。
だが、今回の修学旅行生たちは、3チームも輩出することができている。
タシテ君も頑張っているようだ。20階層のミスリルゴーレムの倒し方は伝えているが、慎重な彼は必要なレベルに達してから攻略していくスタイルなので、二組よりもゆっくりではあるが確実に上がってきている。
ボクは部屋にいるだけで、他の者達が報告へやってくる。忙しくはあるけど、動かなくてもいいので楽な生活をしていた。
「あっ、あの、ご主人様?」
「うん?クウ、どうした?」
「ずっと働かれているので、たまには休んでほしいと思うのです」
ボクは自分では楽をしているつもりだったが、クウから見ると働いて見えたようだ。
「そうですね。連日、来客ばかりで主様は休んでおられません。休みの日を作られても良いと思います」
二人のメイドから休日を取れと言われてしまえば、本日は働くわけにはいかないね。
「わかったよ。メルロに来客を断ってもらってくれ。今日は誰にも会わないようにしよう」
「かしこまりました」
シロップが部屋を出て、メルロに事情を伝えにいく。
「ご主人様、ご準備が整いました」
クウに呼ばれて視線を向ければ、ベッドの用意が整っていた。
「クウ」
「はいです!」
ボクはバルから降りて、腰巻きだけになってベッドへうつ伏せになる。
「失礼します」
メイド服を脱いで下着だけになったクウは、ボクの背中に乗って、マッサージを開始する。
最近、知ったのだがフーレセラピーというマッサージ方法で、力の弱い女性でも足の圧で全身をほぐしていけると言う術法だ。
クウが情報を集めている際に習得してきてくれたのだ。
「どうですか?ご主人様」
ウサ耳美少女の小さな足が、固くなった肩や背中を踏んでほぐして行くのは心地良い。重さや強さも丁度いい。
「ハァ、いいな」
シロップが戻ってきて、枕元でリラックスのお香を焚いてくれる。ここがリゾート地なら、最高のおもてなしを受けている気分だ。
「主様、おみあしを失礼します」
シロップの太ももにボクの足が乗って、オイルを塗られてゆっくりとリンパマッサージが開始される。
オイルも自家製で開発したものだ。温熱効果のあるオイルを開発したので、肌に潤いと同時に熱を生み出す作用も持つ。
「いかがですか?」
「うん、温かくて気持ちがいいよ」
シロップの手で優しくマッサージされるふくらはぎ。
クウの足で刺激される肩や背中。
ここは極楽じゃないだろうか?二人が言うようにボクはどうやら疲れていたようだ。
心地よい刺激によって、いつの間にか眠りに落ちていた。
「ゆっくりお休みくださいませ」
シロップの優しい声が聞こえて、ボクは全身を癒やされながら眠りについた。目を覚ますとモフモフした感触がして、二人がボクを挟むように眠っていた。
ボクは二人の尻尾を触って、二度目の眠りに落ちていった。
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