第228話 地下迷宮ダンジョン侵略 1

《ダンジョン侵略》


・ダンジョンにおける侵略とは、領土戦を意味する。

・領土戦とは勝利すれば相手のダンジョンを支配する利権が得られる。

・勝利条件は、相手のダンジョンコアを獲得した方の勝ちとする。

・侵略側は、侵略を行う前に日時と侵略することを宣言する必要がある。

・防衛側は、宣戦布告を受けた場合、受諾、拒否、従僕を選択できる。

・宣戦布告が受諾された場合、決められた日時で両ダンジョンは空間が繋がり、互いのダンジョン侵略と防衛が可能になる。

・領土戦が開始されれば、決着がつくまで領土戦は終わらない。


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【sideリューク】


 詳細を読み終えたボクは頭の中で戦略を練り始めていた。

 本来の立身出世パートは、六つの選択肢から日々行う業務を決めていく。

 

 ・通常(仕事をする) 

 ・散策(休日の過ごし方、デートなど)

 ・探索(仲間を探す)

 ・捜査(事件を調べる)

 ・戦闘(事件の解決)

 ・特殊(戦争時や特殊事件)


 ダンはその日その日ですることを選択して、立身出世パートで武功を重ねて、仲間を増やし、ヒロインと仲を深めていく。


 だけど、ボクは自由だ。

 これがゲームじゃなく、自分の選択で人生は進んでいく。


「なるほどね。ボクはダンとは違うダンジョンマスターとして、通常がダンジョン育成。戦闘が侵略に置き換わるような感じだね。侵略を押せば戦闘が開始される。相手のダンジョンを調査するのは自由というわけだ」


 ダンとは別の流れだが、意外に似てるのかも知れないな。

 

「王都にレベル3のダンジョンが二つ。ダンジョンマスターはいるのかな?」


 地下迷宮ダンジョンの調査に行かないとな。


「ふむ。ボクが知っている地下迷宮ダンジョンは地下三階まで。出現する魔物はゾンビやレイスだったな。こちらは森ダンジョンの魔物では分が悪いか?」


 レベル3になったことで召喚できる魔物の数が増えた。

 森ダンジョンで一番強いのは、デススライムだな。

 向こうは死霊王ディアスか、バルニャンで倒したことはあるが侵略戦の時はどうなるのかわからないな。


「お茶をお持ちしました。主様、楽しそうなお顔をされていますね」

「シロップか、お茶ありがとう。楽しそうかな?」

「はい。リューク様は何かを思考を巡らせる際は、そのような顔をなされます」

「シロップはボクのことをよくわかっているね。ダンジョンが成長して、新しいことができるようになったんだけど、それをどうやってやろうか考えていたんだ」


 まだ調査はいるけど、侵略の日時や攻略について考えると楽しくなる。

 侵略はダンジョンマスター自ら出ることができるのか? シロップや他の人も参加させられるのか? わからないことが多過ぎる。


「ふふ、主様が楽しそうでようございました」

「そんなに楽しそうかな?」

「ええ、子供の頃に美容したり、魔法の開発をされている時と同じぐらい楽しそうですよ」

「シロップには隠し事ができないね。うん、実際に楽しいと思ってる。これはある意味でタワーディフェンスゲームに近い。相手の領土を攻略して、ダンジョンコアを奪取する。負ければ終わる。これだけスリルがあるゲームはここでしか味わえない。ヒリつくよね」


 自然に体が身震いする。

 負けられない。そう思えば怖いけど面白いとも思う。


「タワーディフェンスゲーム? 私にはわかりませんが、主様が楽しそうで何よりです。お手伝いできることがあれば、声をかけてくださいね」

「うん、もちろんだよ。バルニャンは当たり前だけど、シロップとクウには手伝ってもらうつもり」

「主様が我々の力を? ふふ、それは楽しみですね」


 シロップが獰猛な戦士の顔を見せる。

 楽しそうでいいけれど、たまにはボクにも息抜きがいるよね。


「シロップ」


 ボクは回転椅子をシロップの方へ向けて、ポンポンと膝を叩く。


「……主様。もう」


 シロップは恥ずかしそうにして、ボクの膝へと腰を下ろした。

 この空間はボクの思い通りに部屋を作り変えることができる。

 

 だから、シロップと二人で誰にも邪魔されたくないと思えば、誰も部屋に入って来れなくできてしまう。


「シロップ、今のボクは様々な枷を取り除くことができた。リューク・ヒュガロ・デスクストスは死んだ。今ここにいるのは、ただのリュークで。外ではただの冒険者バルでしかない」

「そっ、それはわかっておりますが」

「なら、いつまで主様と呼ぶの?」

「わっ、私にとっては主様は主様なのです」


 膝の上で拗ねたように顔を背けるシロップは、普段のキリッとした態度とは違い随分と可愛い。だから、もっといじめたくなってしまうようね。

 ボクはシロップの綺麗な、ふわふわな尻尾へと手を伸ばして、優しく毛並みを整えるように手櫛で撫でてあげる。


「んん」


 尻尾は髪と同じで一本一本に神経があるわけじゃないけど、それでも触られている感触があり、神経が通っていないわけでもない。

 それにシロップは、尻尾を触られるのが好きだ。

 敏感に気持ちよさそうな顔をする。


「ねぇ、シロップ。君はずっとボクを守ってくれた。母のように、姉のように、家族として愛を伝え続けてくれた。だからさ、君とカリンには、ボクの名を呼んでほしい。他の誰もボクをリュークと呼ばなくなっても、君たち二人だけには」

「ふぅ、ズルイですね……わかりました。リューク様。私はずっとあなたを愛しています」


 シロップが素直に甘えてくれるのは、初めてのことだ。

 今のシロップはメイド服だけど、今度着てほしい服とか造ろうかな? ジーパンとか似合いそうだ。


「ねぇ、シロップ。いいよね?」

「やらなければいけないことはいいのですか?」

「うん。今はシロップと一緒にいたい」

「構いません。私もリューク様といたいです」


 指を鳴らせばベッドが出現する。

 本当にダンジョンって便利だよね。


 ボクはシロップの尻尾から腰に腕を回して抱き上げてベッドに連れていく。


 メイド服の裾が乱れ、シロップの白い肌が見えれば、もう我慢なんてできない。 


「リューク様」

「シロップ」


 キスを重ねて綺麗な足に手を滑らせる。


「灯りを」

「ダメ」


 ボクはシロップを見つめながらいじめることにした。

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