第227話 ダンジョンって何ができるの?

 王都では、貴族派が戦争に向けて動き出しているとタシテ君が教えてくれた。

 カリンは中立派として、貴族派を離反することを宣言して、雲隠れしている。

 現在はボクと一緒に森ダンジョンに潜んでいる。

 ノーラは隠れる必要がないと行って、迷宮都市ゴルゴンで、図書館の建設に乗り出したそうだ。

 今は自分のしたいことがあるからと言っていた。


「シロップ、君の入れてくれたお茶は美味しいね」

「ありがとうございます」


 現在はカリン、シロップ、クウ、バルニャンと共に五人で森ダンジョンのダンジョンコアルームを家にして暮らしていた。

 たまにシーラスとアンナがダンジョンの新着情報を聞きに来るけど、それ以外のヒロインたちは自分たちのやりたいことをするために動いている。


 リンシャン、リベラ、アカリ、ルビー、ミリルは現在はカリビアン領のリューに就職して働いてくれている。

 リンシャンは、カリンの代行としてリューの領主を任され、リベラ、アカリは魔導具の開発。ルビーは両親と共に冒険者の統括。ミリルは医師としての勉強を始めた。


 マーシャル家のリンシャンがカリビアン領の領主になったことで、テスタ兄様もおいそれとは兵を向けることができない。


 エリーナは王女ということもあり、現在は城で引きこもり生活をしている。

 リュークを愛していた王女は、悲しみから立ち直れないため城に引き篭もった。というのがアンナが考えたシナリオだ。

 嘘が下手なエリーナは、すぐにボクが死んでいないことをバラしてしまう恐れがあるということで、監禁することになった。


 ちなみに、エリーナに事実を伝えたのは葬儀が終わってからなので、葬儀の際は泣き崩れるエリーナ王女というのが王都の記事になっていた。


 ボクは大好きな人たちと、快適なダンジョン暮らしを満喫している。

 

 森ダンジョンはレベル2に相当する。

 それはダンジョン研究者が発表したことだったが、あながち間違っていない。

 ダンジョンは領土を広げることで魔力や生命エネルギーが多くなるので、得られるDMP《ダンジョンマジックポイント》が増えるようになる。


 前回、ルビー、クウと共に一週間ほど潜伏していただけでDMPを結構消費してしまった。

 復活したばかりの森ダンジョンはDMPが少ない。そこでボクはダンジョンにやってきて、最初に行ったことはダンジョンの領土を広げることだった。


 ダンジョンは、魔物が徘徊して倒すことでレベルを上げることができる。

 さらに、鉱石や宝箱、魔石が得られることで人々の生活に反映できるメリットがある。

 そうやって人を引き寄せてDMPを集めるのが一般的に知られるダンジョンというものだ。


 だが、塔のダンジョンや迷いの森などがどうして高ランクダンジョンになったかと言えば、人が住む街を取り込んだことに他ならない。


 塔のダンジョンであれば、迷宮都市ゴルゴン全てがダンジョンだと考えられる。

 森ダンジョンを支配して分かったことだが、ダンジョンは絶対魔物を作らなければいけないわけじゃない。

 

 むしろ、こっそりとダンジョンの領土を広げていく方がDMPは得られる。

 ボクは山の中腹まで領土を広げ、森ダンジョンを山ダンジョンと言えるほど領土を拡大した。

  

 そこからは地道な作業で、毎日広げられる範囲を少しずつアレシダス王立学園にまで伸ばして、領土を広げる作業に没頭していた。

 

 DMPを得ると、みんなが求める物を作った。

 

「リューク。台所が欲しいのだけど?」

「うん。作っておくよ。調理台と収納スペース、鍋なんかも一緒に作っておくね」

「主様、鍛錬場をお願いします」

「シロップは動くのが好きだからね。武器も各種取り揃えておくね」

「ご主人様、乗り物を走らせたいです」

「クウはバイクがお気に入りだね。他にも車が走れるサーキット場を作っておくよ」


 ボクはダンジョンを広げて、DMPを集め、みんなの願いを叶えていく。

 DMPはいくらあっても足りないように感じる。


「なっ、なんやこれ!画期的すぎる!」

「ああ、それは銃だね。火薬を使って魔法がなくても使える武器だよ」


 アカリが遊びにきた時は、拳銃を見せてあげた。

 魔導手榴弾を作ったことのあるアカリとしては、力無いものが魔物の脅威から解放される兵器開発は永遠の課題なんだって。


 火薬が大量に存在しない王国では、魔力を変換して魔導銃を作り出してアカリに提案してみた。

 魔法陣を描きこまないといけないので、コスパは悪い。改善はアカリに任せることにした。

 ボクは、バルに命令したら書いてくれるので、問題なく量産できる。


 ダンジョンマスターになって領土拡大をするために凄く働いている。

 もう怠惰って言葉を返上しようかと思うぐらい頑張ったんだ。

 

 最近は、ある程度魔物を出現させるとDMPの回収率が上がったから、小型の虫モンスターを作り出してアレシダス学園内を巡回させている。

 人は襲わないように命令して、普通の人が見ればただの虫に見えるので危険はない。


 ここまで手を広げてやっと、レベルを3に上げることができた。


 レベル2からレベル3に変わると領土だけでなく、二つの項目が増えた。


 ・ダンジョン侵略。

 ・ダンジョン移動。


 どうやら他のダンジョンを侵略して支配することで、ダンジョンマスターとしての格が上がっていくようだ。

 ダンジョンを増やして、他のダンジョンへ移動もできてしまう。


 現在は、森ダンジョンと名付けられたこのダンジョンしかないので、移動はできない。

 代わりに、地下迷宮ダンジョンへの侵略をしますか? という項目が現れた。


 かつて、シータゲを葬った地下迷宮を手に入れる?


 面白いじゃん。


 ボクは侵略の詳細ページを開いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る