第230話 地下迷宮ダンジョン侵略 3
本日のボクはバルニャンを仮面に変えて、シロップをお供に、冒険者バルとして行動している。
クウはアレシダス王立学園の三年次として、卒業させるつもりなので、お供はシロップに頼んだ。
「主人様。本日はどこに行かれるのですか?」
「今日は情報収集が目的だから、王都の情勢と地下迷宮ダンジョンの攻略をしようかな」
「攻略ですか? それは腕がなりますね」
「シロップは嫌がるかも、地下迷宮は臭いし、汚いし、最悪だからね」
「えっ!」
犬獣人の母を持つシロップは鼻がいい。
そのため前回も中には入らないで、外で待っていてもらった。
「うう、リューク様のお役に立てません」
耳と尻尾で残念さをイメージするシロップはかわいいね。
今日のシロップは冒険者の剣士として装備を整えている。
王都では、通人至上主義教会の影響で、未だにシロップを変な目で見る者もいるけど、聖女アイリス様が差別をやめるように働きかけてくれているので、随分とマシになった。
「姉さんって意外に優秀だったんだね」
「アイリス様は昔から優秀でしたよ。言動や態度で誤解をする方がいますが、心は優しい方でした。リューク様のこともいつも考えておられました」
「そうなの? う〜ん、そうは見えなかったけど。いつも睨まれていたし、なんだか話の途中で変な態度を取ったりしてたし」
アイリス姉さんには生きていることを告げていないので、今頃はどうしているのかな。
「いつか教会にも顔を出そうかな? 今回は地下迷宮ダンジョンを手に入れたら、教会とも関係を持つようになるだろうしね」
情報集めと言えば、冒険者ギルドだよね。
ボクがシロップと共に冒険者ギルドに入った。
カリビアン領のリューよりも立派な建物をしている冒険者ギルドは閑散としていた。
「あれれ? 誰もいないね」
「王都は現在、緊張状態にあります。冒険者は魔物を相手にしますので、戦争などに巻き込まれないように王都を離れているようなのです」
「そうか、そうなると騎士隊の仕事は増えているんじゃない?」
「そのようです」
窓の外を見れば、騎士隊や衛兵が駆けていく姿が見える。
「王都は安全だと言っても、地下迷宮ダンジョンや草原に魔物が溢れれば危なくはあるからね」
「あっあの、冒険者の方でしょうか?」
気弱そうな冒険者ギルドの制服を着た少女が話しかけてきた。
「うん、そうだよ。何かな?」
「やっぱり冒険者の方ですか!!! あの緊急ミッションが入りまして、見ての通り、現在は冒険者の人手不足です。王都の冒険者ではないと分かってはいるのですが、お手伝いいただけないでしょうか?」
「手伝いね」
ボクがチラリとシロップを見れば、シロップはボクの好きに決めていいと無言で目を閉じた。
「内容によるかな? 何があったの?」
「ありがとうございます! 実は、地下迷宮ダンジョンからスケルトンが溢れ出しているようなのです。現在は騎士は草原に巡回を兼ねた訓練に出ておられて、少ない騎士様と衛兵でなんとか抑えてはいるのですが」
どこも人手不足だということだね。
傭兵たちは、貴族たちが自分の身を守るために囲っているだろう。
「そういう依頼ならいいよ。引き受けよう」
「ありがとうございます! あの、お名前をお聞きしても? 冒険者ギルド代表として登録させていただきます」
「ボクは仮面の冒険者バル。そして、こっちが」
「白狼のシロップと申します」
「白狼?」
「はい。昔、そう呼ばれておりました」
「だって」
ボクがシロップの二つ名を知らないので、職員さんを見れば、キラキラとした目でシロップを見ていた。
「お姉ちゃん! やっぱりお姉ちゃんだ」
「お姉ちゃん?」
「いえ、私は何も?」
「ほら、マーシャル領で二年ほど前に助けてもらったことがある」
「ああ、あの時の」
どうやらシロップの知り合いらしい。
「マーシャル領が昨年に起きた魔物の行進があったから、こっちに引っ越してきたの」
「そうでしたか、ご無事で良かったですね」
「お姉ちゃんはご主人様に会えたんだね」
なんだか、受付の少女がニヤニヤとした顔になって嬉しそうだ。
「はい。会えました」
「マイペースな話し方は時から変わってないね。私はララです。今後は王都の冒険者ギルドで受付をしてますので、よろしくお願いします。緊急ミッションを受けていただきありがとうございます」
「いえ、主人様が決めたことです」
「それでは、シロップお姉ちゃんの主人様。よろしくお願いします」
悪い気はしないね。シロップが慕われているのを見るのも。
冒険者ギルドで、冒険者が不足していることや、魔物の間引きが間に合っていないなどの情報を得ることができた。
ボクらは騒ぎが起きている、地下迷宮ダンジョン付近に来ていた。
「シロップ。ボクは、地下迷宮ダンジョンに入ってくるから、外のスケルトンは任せていいいかな?」
「かしこまりました。ご武運を」
「うん。行ってくるね」
溢れるスケルトンはダンジョンを離れれば、復活することはない。
シロップが物理攻撃によって破壊したとしても倒せる魔物だ。
だが、ダンジョンの中で死ねば、スケルトンたちも復活を繰り返す。
もしも、地下迷宮ダンジョンが領土を広げようと、スケルトンを溢れ出させたのなら、ボクがダンジョンマスターになって森ダンジョンを活性化させたことに起因しているのかもしれない。
「ふぅ、騒がしいね」
地下迷宮ダンジョンでは、王都内に残っていた騎士が駆り出されて、地下迷宮ダンジョンの間引きをしているようだ。
「あっ! お前!」
「うん? やぁ、君か」
「どうして、姫様の護衛であるお前が王都にいるんだ! 姫様はカリビアン領だぞ!」
そう言ってボクへ突っかかってきたのは、ダンだった。
どうやら騎士隊とは別に王都に残っていたようだ。
「それはもちろん、リンシャン様に頼まれた仕事をしているからだ」
「なっ! まぁそれなら仕方ないか、だがどうしてここに?」
「冒険者ギルドで緊急依頼を受けてね。本業は冒険者だからね」
「そういうことか、うむ。ならお前の実力見せてもらう。この場を指揮することになった第一騎士団のダンだ。そして、隊長のムーノ団長だ」
そう言って紹介されたのは、銀髪のゴリラだった。
ユーシュンやエリーナと同じ素材とは思えないムキムキ男だ。
「やぁ、今は人手が不足している。冒険者の助けはありがたい。協力できるならお願いする」
素直に頭を下げられる銀髪ゴリラは、頭は良さそうではないが、悪いやつでなさそうだ。
「ああ、よろしく頼む」
ボクはダンがいるなら、素手はまずいと思ってマジックポーチから適当な武器を取り出す。
「それは? 珍しい武器だな」
「そうか?」
自分でも何を出したのかと、手元を見ればアカリのために作った魔導銃が握られていた。
「自作の武器なんだ」
「そうか、よくわからないが頼んだ」
魔力を込めて、魔弾として打ち出せる魔導銃は込める魔力や、魔力量に効果や威力を変えられる。
属性魔法を使えば、効果を変えられるが、今は体を持たないレイス系にも魔力は効果を発揮する。
「今の武器には丁度いいな」
魔力を込めて、ボクは幽霊を撃ち落とすシューティングゲームに興じた。
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