第231話 地下迷宮ダンジョン侵略 4

《sideダン》


 第一騎士団に所属してからの日々は、かなり忙しい。

 毎日が事件続きで休日も取れないほどだ。

 ハヤセとも全然会えていない。

 卒業してから、一ヶ月も経っていないのに、リュークがいなくなって、ハヤセと離れて、今まで一緒にいた姫様はカリビアン領に行っちまった。


 少しの寂しさも感じる時間が俺にはない。


「ダン、地下迷宮ダンジョンがブレイクしそうだと連絡が入った。急行するぞ!」

「はい!」


 ムーノ団長と共に詰所を飛び出した。

 詰所を出れば、慌てる住民が押し寄せてきていた。

 住民をかき分けて地下迷宮ダンジョンへ向かう。

 溢れ出したスケルトンを見つけて斬りかかった。


「ヤッ! ハッ!」


 一太刀でスケルトンを倒すと、次を斬り倒す。

 衛兵たちと共に一通り敵を切り伏せるが、溢れ出る魔物は止まらない。

 最近は、冒険者が王都から離れて、魔物が溢れ出すようになった。


 森ダンジョンは学生たちが、なんとかしてくれている。

 だが、地下迷宮ダンジョンは冒険者がいたから抑えられていた。

 教会や、騎士たちも頑張ってはいたが、全然足りていない。

 何よりも、最近になって地下迷宮ダンジョンが活性化を始めたと、冒険者ギルドから報告が着ていた。


「団長、このままじゃ解決できない。ダンジョンの中に入ってダンジョンのボスを倒すしかないぞ」


 森ダンジョンで二度、ダンジョンボスを倒したことがある。

 ダンジョンボスを倒せば、しばらくの間ダンジョンは活性化を止める。


「ああ、そうだな。今、不足している騎士の中では私たちしか向かえないだろう。いくぞ、ダン」

「おう!」


 地下迷宮ダンジョンだけじゃない。

 各地のダンジョンが活性化を始めたようで、どこの領地も慌ただしい。

 街道も、連日魔物を討伐しなければ、商人たちの移動もままならない。


 覚悟を決めた俺たちは、命を投げ出すつもりでダンジョンの中へ入った。

 だが、圧倒的な魔物の数に地下一階に進んだところで先に進めないでいた。

 そこへ見知った者がダンジョンの中へ入ってきた。


「あっ! お前!」

「うん? やぁ、君か」

「どうして、姫様の護衛であるお前が王都にいるんだ! 姫様はカリビアン領だぞ!」


 姫様の護衛であり、婚約者に選ばれたこいつを俺はまだ認めてない。

 冒険者という奴らは好き勝手に生きている。

 騎士として、真面目に生きてきた姫様がどうしてこいつを選んだのかわからない。

 リュークがいなくなって、自暴自棄になっているのかもしれない。


「それはもちろん、リンシャン様に頼まれごとをしているからだ」

「なっ! まぁそれなら仕方ないか、だがどうしてここに?」

「冒険者ギルドで緊急依頼を受けてね。本業は冒険者だからね」


 気負いのない物言いに何故か納得してしまう。


「そういうことか、うむ。ならお前の実力見せてもらう。この場を指揮することになった第一騎士団のダンだ。そして、隊長のムーノ団長だ」

「やぁ、今は人手が不足している。冒険者の助けはありがたい。協力できるならお願いする」

「ああ、よろしく頼む」

 

 それからは三人で敵を倒した。


 俺と団長が前衛を務めて、後方からバルのやつが魔導銃という見たこともない武器で、敵を倒していく。

 先ほどまで苦戦していたのが嘘のように、敵が斃れていく。


 一度の攻撃で何匹も魔物斃れていく。

 遠距離攻撃の威力で吹き飛ぶ、なんて頼もしいのだろう。

 効率が良くて、簡単に敵を倒していく。


 まるで、リュークが側にいてくれるような戦い方に、懐かしさを覚える。


「助太刀いたしますわ!」


 地下迷宮ダンジョンに、二人の女性が現れる。


「えっ?」


 俺が驚いて振り返ると、辺りにいた魔物が一斉に消滅してしまった。


「バル様! お会いしとうございました」


 銀狐のお面をつけた女性が姫様の婚約者である、バルに抱きついてキスをした。


「おっ、おい!」

「黙りなさい。駄犬!」


 黒豚のお面をつけた女性が鞭で地面を叩いて、俺を駄犬と呼ぶ。


「無能と駄犬が、我らが主の邪魔をするな」


 叱責に唖然としていると、二人の女性がバルに寄り添うように身を寄せる。


「よく、ここがわかったな」

「バル様がこちらに向かったと冒険者ギルドで聞きました」

「そうか。丁度いいね。地下迷宮ダンジョンを攻略するから手伝って」

「もちろんですわ」

「主のご命令のままに」


 二人の女性は着ていたマントを脱ぎ捨てる。

 マントの下からは体のラインがハッキリと分かる、皮で出来た服を着ていた。


「なっ!」

「流石に二人ともスタイルがいいね。プレゼントを着てくれてありがとう」

「バル様からの三つのプレゼント、ありがたく使わせていただきました」

「それはよかった。ちなみにその服はライダースーツって言うんだ」


 銀狐と黒豚の二人と親しそうに話しながらも、蘇ってきたスケルトンを魔導銃で殲滅する。


 バルは凄いやつだ。


「ダン、いい加減に戦え!」

「団長、すまない」

「ダン、俺たちは先に進むから、ここは任せるぞ」

「なっ!」


 三人が俺たちを置いて先へ進んでいく。

 

 黒豚は鞭で敵を薙ぎ払い。

 銀狐は手を翳すと魔物が死んでいく。


 この二人、強い。


「バル! 頼んだぞ!」

「ああ、任せろ」


 何故だかわからない。

 わからないけど、あいつならこの状況をどうにかしてくれる。

 そんな風に思えた。


 

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