第256話 護衛任務
《sideダン》
第一騎士団が集合した草原に、数台の馬車が停車する。豪華な馬車からは、白銀の髪を靡かせた美しき王女が降り立つ。
エリーナ・シルディ・ボーク・アレシダス第一王女と、その従者であるメイドのアンナが馬車から現れた。
さらに白馬に乗った貴公子が、巨大な馬に乗った騎士と共に駆けつけてくる。
「皆の者、よくぞ集まってくれた」
王太子殿下であるユーシュン・ジルド・ボーク・アレシダス様の到着に、王国第一騎士団が敬礼で出迎える。
「皆の者! 緩めて、よし!」
巨大な馬に乗ったガッツ・ソード・マーシャル元帥閣下の言葉により騎士たちは敬礼を解いた。
「此度は王国全土が注目する王国剣帝杯が開かれる。主催するベルーガ領だけの問題ではなく、王国の威信がかかった催しである。そのため、王族としてベルーガ辺境伯に協力するため、我々は王都を離れて剣帝杯に来賓として参加することが決まった。我らが王国を離れて剣帝杯に参加している間に、事件など起こしてはならない」
王太子殿下の言葉に第一騎士たちは身を引き締める思いで胸に覚悟を宿す。
ここから三分の一が選ばれてユーシュン様、エリーナ様の護衛として選抜される。すでに俺とムーノ隊長はエリーナ様の護衛として決定している。
王都では、近衛騎士隊の副隊長が全体の指揮を取ってくれる。
ガッツ隊長もユーシュン様の護衛をするために参加が決まっている。
「此度の王国剣帝杯を成功させるために、皆で協力してくれ」
「「「「「「オウーーー!!!!」」」」」」
数百名の一団は、旅支度を整えて王都を出発した。
十日ほどの行軍を経てベルーガ領へ向かう。
流石に王国の守護を担う第一騎士団を全て連れていくことはできないため、護衛の任務の一環としてアレシダス王立学園の生徒から候補者を募って参加を呼びかけた。
「ベルーガ領ってどんなとこっすか? ダン先輩」
「情報はハヤセの方が詳しいだろ? 俺は行ったことないよ」
学生を乗せた馬車は二台あり、ユーシュン殿下が馬を降りて乗り込んだ後ろについた馬車と、エリーナ王女を乗せた馬車の近くに護衛として用意された場所にはハヤセとナターシャ、マルセルにクロマ、クウが乗り込んでいる。
エリーナの要望もあり、このメンバーが一つの馬車に集められた。
ユーシュン殿下の馬車はガッツ様が守護をして、他の学生を乗せた馬車も付いているので二手に分かれるような長い列ができている。
リュークがいれば、馬車に魔物を寄せ付けないでいられただろうが、俺にはそんなことはできない。
現れる魔物を騎士たちが交代で討伐しながら、夜も朝も見張りを立て、慎重に行軍を続けていた。
「せ〜んぱい。温かい飲み物をもらってきたっす」
「ああ。ありがとう。寝なくていいのか?」
「まだ大丈夫っす。夜はまだまだ寒いっすね」
「そうだな。これを使うといい」
俺は着ていたマントをハヤセにかけてやる。
「ありがとうございますっす」
草原に天幕が張られて野営をしていた。
俺は見張りを兼ねて天幕から少し離れた位置にいた。
「ダン先輩は、王国剣帝杯に参加するんすか?」
「ああ、そのつもりだ。大陸全土から集まる強者たちは、王国で立身出世を夢見てくるだろう。俺は王国代表として、そしてアーサー師匠を超えるために優勝しなくちゃならないんだ」
どんな強者が来るのか楽しみで仕方ない。
アーサー師匠に勝つ。
「ハァ、ダン先輩はやっぱり変態っすね」
「なっ?! どこがだ?」
「だって、ダン先輩じゃ絶対に勝てないじゃないすっか」
「おい! やってみなくちゃわからないだろ?!」
「わかるっすよ。無理ゲーっすよ。考えてみてくださいっす。今まで強大な敵が現れた時、いつもなんとかしてくれていたのはリューク様っす。ダン先輩は特攻して、自滅して時間稼ぎをしていただけっす。確かにダン先輩もレベルをカンストさせて、絆の聖騎士として強くなったっす。だけど、勝てるイメージが持てないっす」
ハヤセの言葉一つ一つが、俺の胸に響く言葉ばかりだ。
だが、それでも俺は……。
「ハヤセ。それでも俺は挑み続けるよ。無理な戦いでも、相手がメチャクチャ強い敵でも、俺は自分が死ぬまで挑み続ける。それが俺の戦い方だって、今なら胸を張って言える気がするんだ。俺はハヤセを守る。守るためには負けない。負けないために倒れない。どれだけの攻撃を身体に受けようとダメージを快楽に変えてでも、俺は負けない」
「はぁ〜本当に変態っす。普通は痛かったら逃げるっす。無理なら挑まないっす。だけど、そうやっても挑み続けるダン先輩も悪くないっす」
ハヤセが立ち上がると、大きな胸元が俺の目の高さになり、そのまま抱きしめられる。
「ダン先輩は私の可愛い駄犬っす。本当にバカで一途で、どうしょうもないっす」
「そこまで言わなくても」
「うるさいっす。私の言うことが正しいっす」
「はい」
俺はハヤセの胸に顔を埋められて、息もできない状態でハヤセが満足するまで抱きしめられ続けた。
耳元でハヤセが罵倒を繰り返すので、反論しても許してはもらえなかった。
ただ、やっぱりハヤセと過ごす時間が、俺にとっては一番だと思えてしまう。
「先輩は変態っす」
最後に耳元で囁かれた言葉にゾクッと背中が震えて、心臓を鷲掴みにされたような快感を覚えた。
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あとがき
どうも作者のイコです。
昨日はたくさんの感想といいねを頂きありがとうございます。
皆様のおかげで星が14000を超えることができました!!!
後押しをくださった方々本当にありがとうございます(๑>◡<๑)
今日は新作の宣伝です。
《ボクは彼女の相談役(スパイ)をしていただけなのに》
を書いております。
星が伸び悩んでいて、少しでも面白いなぁ〜と思っていただければ星が欲しいです(´༎ຶོρ༎ຶོ`)どうぞよろしくお願いします(^◇^;)
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