第285話 陰陽道
そもそも陰陽五行とはなんなのか? 魔法とは異なる知識形態を持つ。
陰陽道の始まりは占いだ。
木は、青であり、春を告げ、東を守護する青龍を象る。
火は、赤であり、夏を告げ、南を守護する朱雀を象る。
土は、茶であり、時を持たず、方位もない、どの季節にも存在し、全てを支えバランスと調和をとる。
金は、白であり、秋を告げ、西を守護する白虎を象る。
水は、黒であり、冬を告げ、北を守護する玄武を象る。
陰は、影であり死、そして闇を意味した。
陽は、光であり生、そして陽を意味した。
全ての事柄には始まり(生)があり、次に壮んになり、最後に終わり(死)がやってくる。
「とまぁ、皇国では陰陽道をそのように習うのです」
意外にも陰陽道の講義に詳しかったのは、破壊僧のベイケイだった。
元々、寺で生まれ育ったベイケイが習っていた宗派が陰陽道を収めており、王国の属性魔法とは異なる魔術体系の確立する根源を知っていた。
「なるほどね。ココロが使う占いは陰陽術の始祖的な力だからこそ強力で、崇め奉られるわけか」
「そうなのでしょうな。エセ陰陽術師の占いは腐るほどおるでしょうが、ココロ様のような本物は限られた数しかおりません。それこそ数年に一人の割合です」
「ココロ凄い? バル、ココロ凄い?」
「ああ、ココロは凄いぞ。その代わり反動が大きいから、もう使うなよ」
「え〜、ココロはこれしかできないよ?」
「別にココロは可愛いから、ボクの側にいるだけでいいさ」
「本当? 嬉しい。ずっといる」
ココロは嫁たちの中で一番甘えたがりだと思う。
年も一番下だということもあるが、性格的なものがあるのだろう。
普段は不思議系で、何を考えているのかわからないところがあるが、甘える時はとことん甘えてくる。
「姫様は、旦那様がお好きなのですね」
「好き〜。バルは私の運命の人だから」
「それも占いか?」
「それもあるけど、バルに会った時に私は誰といるよりも、バルと一緒にいることが幸せってわかった」
「うむ。ボクは怠惰に何もしないよ」
「いい。もしも、バルの周りに誰もいなくなって私だけになったら、占いをしてお金を稼いでバルを養う」
「おいおい、占いは負担が大きいんだろ?」
「違う。陰陽術の応用した占い」
「うん?」
ココロの説明が分からなくて、ベイケイを見る。
「先ほど話した方角や色などを、人に合わせて占ってあげることで、運気を上げたり、厄災から身を守ることなどもできるんです。それには占いの知識と陰陽道の知識があればある程度はできます」
ベイケイがココロに変わって説明をしてくれる。
「なるほどな。寿命を使うだけが、陰陽術ではないということか、それで? 先ほどから陰陽術と陰陽道は何が違うんだ?」
「はい。陰陽術は、そのままに術や技のことを指します。それに対して、陰陽道は、陰陽に関する学問全般を指します」
「なるほど、陰陽道が皇国の学問で、陰陽術が、その学問を学んだことで使える技ということか」
「そうなります」
皇国に来た目的の一つとして、陰陽道を学ぶことが加わりそうだ。
どうにもボクは研究気質があるようで、自分の興味を持つことがあると研究がしたくなる。
バルニャンを研究した時のように、ボクの怠惰に役立つなら、陰陽道を学ぶこともありかもしれないね。
「さて、勉強は程々にして温泉にでも行こうか」
「ガハハハ、旦那様は温泉が好きですな」
「うん。あのゆったりとした時間が好きなんだ。湯の中で安穏としているだけで幸せを感じられるね」
「イッケイ殿も、ここに来てからはほとんど温泉に浸かってばかりですからな」
ボクは人里離れたイッケイの隠れ家を訪れていた。
イッケイは、皇国の各地を回る武芸者をしている。
剣豪と言われるのは伊達ではなく。
各地に道場と弟子を持ち、この隠れ家も弟子の母親が経営しているそうだ。
「イッケイ。お邪魔するよ」
「これはこれはバル様。お先に一番風呂を頂いております」
「いいさ。ここはイッケイが連れてきてくれた場所だからね。むしろ、いいところを紹介してくれてありがとう」
ボクはゆったりと湯船に浸かってダラダラと過ごすのが幸せだね。
「バル! 今日の夕食は酒に合う食事だそうだ」
「バル様、私も手伝いました」
「魚料理は最高に美味しいのにゃ」
女子たちは楽しそうだね。
「拙僧もお邪魔いたしますぞ!」
デカい図体をしたベイケイが入ってきたことで、湯が揺れる。
オジサン二人と入る温泉も悪いもんじゃないかもね。
一人は、剣帝アーサーを追い詰めた盲目の剣豪。
一人は、千の武器を持つ破壊僧。
どちらも世間的には俗世とは馴染めないまま、生きてきた二人が共に風呂に浸かるのは、不思議な光景だ。
「二人は、皇国に帰ってきて何をするんだい?」
「何を? でござんすか?」
「何と聞かれるとわかりませんな」
二人ともボクの問いかけに対して首を捻り、腕を組んで考える。
どちらも良い歳だ。
何かをする目的はないのかもしれない。
「あっしは変わりませんよ。今後も強き者を探して剣を合わせ。刀を教えて欲しいと言うなら教えてやる。そんな日々でさぁ」
「そうだな。拙僧も同じでございます。仕えるべき主君が見つかるまでは、今の生活を続け、己の生き方を全うすることでしょう」
ボクの予想に反して、悲観的ではない二人の言葉に、ボクは誇らしい気持ちが芽生えた。
「そうか、二人ともかっこいいな。ボクも二人のようにかっこいい男になりたいよ」
「あっしがかっこいいですかい?」
「拙僧がかっこいい?」
二人とも首を傾げる。
「ああ。自分の生き方を曲げないでいる二人はカッコいいよ」
ボクはその後ものんびりと温泉に浸かりながら、二人と話をした。
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あとがき
どうも作者のイコです。
陰陽道に関しては、完全にこの世界特有のものであり。
フィクションです。
実際の、陰陽道とは異なるものだとお考えください。
お話を楽しんでもらえれば嬉しく思います(๑>◡<๑)
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