第122話 リュークの計画

 ボクの目の前には、三人の女性が膝をついて頭を下げている。三者三様の美少女たちだ。

 ある計画をカリンに伝えたところ、提示した条件に合う子たちを集めてくれた。


「三人とも顔を上げてくれ」


 ボクはバルに乗ったまま、足を組んで三人を見下ろしている。


「「「はっ!」」」


 ここまでボクは未来を変えるために突っ走ってきた。

 だが、その結果このままではまずいと判断した。

 今の状況について考えたとき、色々とまずい状況が想定出来てしまう。


 デスクストス家が王家転覆を企てた時に、ダンの味方をしてくれる陣営が弱すぎるのだ。

 ボクが力を貸せば、多少は状況は変わるかもしれない。

 だが、ボクとしては戦いには参加したくない。

 戦争に参加しないで、両者が共倒れになってくれる状況がありがたい。

 そんな平和を手に入れるための方法を模索した結果。

 ダンには頑張ってもらう必要があると判断したわけだ。


 ダン陣営からのリンシャンの離脱。

 アカリを妾に迎え。

 エリーナと婚約することになる。


 三人に関しては、ダンに諦めてもらうしかない。


 ボクは三人を大切に思っているから、これからも良好な関係を築いていきたいとは思っている。


 そうなると残るのは、リベラ、ミリル、ルビー、シーラス先生の四人ということになる。


 誰とダンは上手くいくのか、可能性を考えた。


 リベラは、一年次にボクの従者をしてくれたこともあり、ボクに近い感情を抱いてしまった。

 今からダンに対して、嫌悪感はあっても、恋愛対象として見てくれるのか難しいと思う。


 ミリルはよくわからない。

 ボクに対して、凄い忠誠を誓ってくれているのはわかる。それは時に狂気を感じるほどに。

 ボクがダンと恋をしてくれとお願いすれば、してくれるかもしれない。

 ただ、それが心からの愛情なのか恐ろしくて聞けない。


 可能性があるのは、残る二人だ。


 ルビーは、ボクに対して好感を持ってくれているのは伝わってくる。

 ただ、それが恋愛までは発展していないと思う。

 ボクが強いから番になりたいと思っているだけだ。

 もしも、剣帝杯でダンが、ルビーに勝つことができれば惚れる可能性が残されている。


 そして、シーラス先生だ。


 彼女の攻略は特殊で、かなり難易度が高い。

 元々、年が離れていることもあるが、一人だけ熟練の強さを持つシーラス先生は、他のヒロインとは目線が違うため、男性として認めさせることがとても難しい。


 今のダンでは、シーラス先生を攻略するだけの男性的な魅力が足りていない。


 そうなると一番可能性が高いのは、ルビーだ。


 だが、可能性が高いと言ってもダンがルビーに惚れていなければ意味がない。


 考えに考え抜いたボクは、カリンにお願いしてみた。

 平民であるダンと付き合っても良いと言ってくれそうな女性はいないかと……


「君たちに頼みたい仕事がある」


 カリンに伝えた条件は、


 マーシャル領出身であること。

 属性魔法を所持していること。

 新入生であること。


 この三つを兼ね備えて、ダンと恋仲になれる女性。

 そう、サブヒロインとして攻略できる相手を絞った。


「「「はっ!」」」


「君たちと同郷であり、ボクの同級生であるダンを恋愛で攻略してほしい」


「「「はっ???」」」


 先ほどまで元気よく返事をしてくれていた三人がいきなり困惑した顔になる。


「よろしいでしょうか?」


 ボクに問いかけてきたのは、踊り子のマルリッタだ。

 褐色な肌に黒髪の美女で、スタイルも年下とは思えないほど素晴らしい。


「なんだい?」

「私たちが呼ばれた理由は、リューク様のお手伝いをするためですよね?」

「そうだ」

「それが、男性を籠絡することなのでしょうか?」

「少し違うな。普通にダンと交流を持って、君たちが恋愛をしてほしい。もちろん、君たちがダンを恋愛対象として見れないという場合は、途中で断念してもらっても構わない」


 ダンと彼女たちが恋仲になってくれなければ意味がない。無理矢理では、ダンの能力は発動しないからだ。

 これは将来のためにダンを強化する布石だ。


「は〜い。よろしいですか?」


 のんびりとした口調で手を挙げたのは、金髪の白い肌をしたナターシャだ。


「なんだ?」

「それは結婚を前提にでしょうか?」

「まぁそうだな。本気で好きになれると思わないと意味がないと思っている」

「な〜る〜ほ〜ど〜」


 物凄くゆっくりと納得された。


 ボクは最後の一人へ意識を向ける。

 二人から質問が来たので、最後の一人からも質問を受けると思ったからだ。


「何かあるか?」


 視線が合ったので聞いてみた。

 全体的には短い髪だが、前髪だけは長くて目元にかかった美少女だ。


 ナターシャが、のんびりほんわかした雰囲気を持つ美少女に対して、マルリッタはエキゾチッチな美少女といった印象だ。


 ナターシャは回復役としてダン陣営に入る。

 マルリッタは剣士として、将来的にダンと交流を持つ。


 だが、最後の一人である彼女は特殊な存在であり、ボクにとっても一番期待の出来る人物でもある。


「なっ、何もないっす」

「本当に?」

「そっ、それじゃあ一つだけ教えてほしいっす」

「なんだ?」

「ダンせんぱ、いえ、攻略対象の男性に何かするつもりっすか?わざわざ女性を差し向けるっていうのは、何か意味があるっすか?」


 ボクは一瞬だけ目を細める。

 その態度が怖かったのか、目の前の美少女は顔を背けた。


「その理由が知りたいってことでいいのかい?」

「はいっす」


 彼女の質問に他の女子たちも興味を持ったようで、ボクを見る。


「ボクは怠惰なんだ」

「はっ?」

「将来的に、ボクを楽にしてもらうために、必要なことだと判断した。そのために君たちには、ダンを攻略してもらう。それが理由だ」

「ハァ〜?」


 ボクの理由が理解できない様子で、最後の美少女が首を傾げる。


「強制はしない。君たちが出来ると思えばしてくれればいい。もしも、ダンと恋仲になって、結婚して添い遂げることができたなら、君たちの願いを聞こう。

 ただ、それはボクが君たちとダンの間に絆が結ばれたと判断した時だ」


 バルから降りて、ボクは三人の少女の前に腰を下ろす。


「ナターシャ。君の望みを叶えよう」

「うわ〜」

「マルリッタ。君の望みを叶えよう」

「ほう」

「ハヤセ。君の望みを叶えよう」

「わかったす」


 三人の少女一人一人の目を見て誓いを立てる。


 それは魔力による契約。


 彼女たちには誓約も罰則もない。

 ただ、成功すれば望みが叶う夢のような話だ。

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