過去編
幕間 1 好敵手
《sideアグリ・ゴルゴン・ゴードン》
それはあなたたちが生まれるずーと前。
四十年くらい前の話。
私がまだ乙女になる前の貴重な時代。
「プラウド。どこにいくんだ?」
「お前には関係ない」
プラウド・ヒュガロ・デスクストス。
天才と呼ばれるほどの軍略と、誰もがひれ伏す力を持って、アレシダス王立学園に入学した鬼才。
ただ、その態度は傲慢で、多くの敵を作っていたことは誰の目から見ても明らかだったわ。
ただ、私は知っているの。
彼が誰よりも努力を続けていることを、そして最強であり続けようとしていることを。
「待てよ。留学生が来る話はしただろ? おいって!」
常に孤高で、誰も寄せ付けない。
だけど、その美貌と揺るがぬ強さによって、引き寄せられる女性は後を絶たない。
「ガウェイン、放っておきなさいよ。プラウド様は誰の言葉も聞かないわよ」
ガウェイン・ソード・マーシャル。
イレイザ・パーク・ネズール
この二人は、それでもプラウドに話しかける勇気ある者たちだった。
剣の家系と呼ばれる王国軍の中枢にある第一騎士団の団長を父に持つマーシャル家は軍務の家系で王権の中心人物だ。
裏の諜報組織、ネズール一家。まだこの時はネズールパークなんてファンシーな物はなくて常に貧乏一家だったけどね。
「だけどな、プラウドに言っておかなければ揉めたら大変だろ?」
「それも仕方ないわよ」
当時は帝国が設立されていなくて、戦乱の世が続いていたわ。
一番大きな国が王国。
ついで皇国。
帝国が在った場所は、小国家群と呼ばれ多種多様な種族が覇権争いをしていた。
通人至上主義教会は、魔王へ対抗するためと言った態度で、亜人族迫害を強くしていたわ。
「今回の転校生は、小国家郡から来るっていうから、親父から面倒を見てやれって手紙が来ていたんだよ」
「そういうことね。本当に手がかかるんだから」
二人の話を聞きながら、プラウドが帰っていく後姿を校舎の窓から見ていたら。
当時アレシダス王国始まって以来の強さを持っていたプラウドは、誰からも崇め奉られるほどの存在になっていた。
一年次で剣帝杯優勝は当たり前、三年次の生徒たちでも相手にならなかったわ。
刺々しくて、恐ろしいオーラに近づくことも躊躇うほど研ぎ澄まされていた。
だから、二人は出会うべくして、出会ったのでしょうね。
「退け!」
「お前が退け!」
寮へ向かう並木道。
プラウドが歩いていると、二メートルはありそうなガタイの良い男子生徒が前を塞いだ。
プラウドも低くはないが、正面から向き合うと小さく見えるほどの大男。
「貴様が退け」
「貴様こそ退け!」
傲慢に道を譲らないプラウド。
それに対抗するように大男がプラウドを見ろして一歩も譲らない。
アレシダス王立学園では、プラウドに対抗できだけの人物は数えられるほどしかいない。
だからこそ面白い。
「あらら、いい男たちじゃない」
「うわっ! もう来てるじゃないか!」
「ガウェイン! 何してるのよ! いくわよ」
「おう!」
騒がしい二人が飛び出していって、私は高みの見物を決め込んでいた。
「おい! 何してるんだ!」
「なんだお前は?」
「俺はガウェイン・ソード・マーシャル。君は、カウサル君だろ? 父上から聞いている。今日転校してきたばかりだね。プラウド、彼に喧嘩を売るのはやめてくれ」
空気を読めない男はどこにでもいるもので、つまらないことをする。
傲慢でありながら、努力を続けるブラウドに対抗できそうな男の登場。
大男で威勢と威圧が桁違いな二人がどうなるのか、見たいじゃない。
「知らん。退け」
「お前が退け」
あらら、全然引くきがないみたいね。
ガウェインは二人の眼中に入っていないようね。
「最後だ。退け」
「いいだろう! 来い」
プラウドの言葉に二人が戦闘体制に入る。
互いが纏うオーラが空間を歪ませ、熱を生み出していく。
「おっおい! こんなところで!」
慌てるガウェインのことなど誰も見ていない。
「死ね!」
「お前がな!」
互いに剣を抜き放ち、ぶつけ合う。
互いの闘気がぶつかり合うことで地面が揺れ、バチバチと火花のような雷鳴が落ちる。
「ほう」
「ガハハハ」
互いに一合交えただけで力量を理解したのだろう。
プラウドはいつもイライラして怒ったような顔をしたいたのに、初めて口元に笑みをつくり、大男ことカウサルは声に出して笑った。
「なんだお前! やるではないか」
「私に向かって上から物を言うな」
「仕方なかろう。我が上なのだ」
「違う! 私の方が上だ」
互いに譲らない傲慢さ。
だが、互いに相手の力量を認め合う好敵手。
それは一合の出会いであり、傲慢と傲慢。
互いの強者による意地と意地を張り合う。
強者同士だから分かり合える領域。
「はいはい。二人ともここじゃ、他の子達に邪魔よ。やるなら決闘場でしなさい」
だから、こんなところで邪魔が入ってつまらない終わり方をしてほしくないから、私は二人の剣を止める。
「アグリ」
不満そうに私を呼ぶプラウド。
その今にも殺すぞと言う瞳が私をぞくぞくさせる。
「なんだお前は?」
「ふふ、私のことはいいでしょ。あなたたちの戦いが邪魔されるなんてつまらないわ。どう? 戦える場所に行かない?」
「知らん。私は帰る」
「くっ、ふん。興が冷めたわ!」
私が剣から手を離すと二人ともつまらなさそうな顔して可愛い。
「アグリ! 助かったよ。俺の言うことじゃ聞いてくれなくて」
互いに背中を向け合う我儘な男たち。
これが四人の初めての出会いだった。
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あとがき
どうも作者のイコです。
第九章も終わり、本日より過去編です。
強欲なる最強アグリ、ゴードン・ゴルゴン。
傲慢悪役貴族プラウド・ヒュガロ・デスクストス。
帝王カウサル・イシュタロス。
を主軸に激動の時代を描いていきたいと思っています。
サポーターの皆様、読者の皆様いつも《あく怠》を読んでいただきありがとうございます!
皆様のおかげでレビューが15000に達しました!!!めでたい!!!
誤字報告、暖かいコメント本当に嬉しく読ませていただいております。
書籍も発売まで二ヶ月を切り、いよいよ商業デビューするのだと思うと緊張の方が優っております(^◇^;)予約購入していただけると嬉しいです!!!
書籍でも最終巻まで出したいと思いますので、応援をよろしくお願いいたします(๑>◡<๑)
それでは、三人のかっこいい男たちの話をどうぞお楽しみに!!!
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