第331話 いざ、塔のダンジョン 3
《sideノーラ・ゴルゴン・ゴードン》
わっちはずっと夢を見ておりんした
あの晩、アケガラスによって腕輪をつけられ、わっちの中で語りかけてくるものがおりんした。
「お腹が空いたよ。もっと食べたいよ。もっともっともっと欲しい!」
それは幼い乳飲子が、腹を空かせて泣き叫ぶように何度も何度も泣き喚いて、わっちに訴えかけてくるでありんす。
だけど、わっちの手元には何もなくて、その乳飲子の涙を見るたびにわっちの中から、何か大切な物が抜け落ちていくような感覚を覚えるのでありんす。
「もうやめるでありんす! 泣いても何もないでありんす!」
「嫌だ。お腹が空いてダメなんだよ。いっぱい食べているのに、満たされないんだ! どうして僕ばかりお腹が空くの? 空腹が辛い。助けてよ!」
どこから聞こえてくるのかもわからない声が、わっちの頭を締め付け苦しめるでありんす。
そんなわっちにリュークが光を与えてくれたでありんす。
「大丈夫だ。ボクがなんとかする。だから、必ず生きろ」
リュークの言葉がわっちに元気をくれるのでありんす。辛くてしんどいと感じていたわっちに呼吸の仕方を教えてくれて、外からご飯を運んでくれるでありんす。
わっちはどこにいるでありんしょ? どうしてリュークはこんなにもわっちを助けてくれるのでありんしょ? やっぱりリュークは素敵でありんす。
どこまでもついて行きたいでありんす。
「どうして? どうしていくら食べても減らないの? どうしてお姉さんは無くならないの? すごい! もっと食べたい! もっとご飯を持ってきて!」
リュークが持ってきてくれたご飯を見て、乳飲子も喜んでいるでありんす。
これで少しは泣いているのを見ないですむでありんす。
だけど一体ここはどこでありんす?
どうして、わっちはここから出られないんでありんす?
「ハァハァハァ、こんなに食べたの初めてだよ。今までもたくさん食べてきたのに、こんなにも食べられて僕とっても幸せだよ」
乳飲子は、泣くことをやめてリュークが運んでくるご飯を食べ続けいるでありんす。
わっちも呼吸がしやすくなって、体も少しだけ軽くなったような気がするでありんす。
「あっ! 来る」
「えっ?」
「ふふ、お姉さん。いっぱいご飯をくれてありがとう。たくさんお礼をしないといけないね」
「お礼でありんすか? それならご飯を持ってくてれたリュークにするでありんす? わっちは何もしないでここにいただけでありんす」
「ううん。僕ね、お姉さんの体を食べていたんだよ
「えっ?!」
「だから、お姉さんに返さないと」
世界は真っ暗で、ここがどこかもわからなかったのに、急激に天井が明るくなって世界が広がっていく。
青空の下には、たくさんの畑が広がり、野菜や果物、お肉やお魚など。わっちが見たこともない食べ物で溢れているでありんす。
「あ〜満足だな。僕は初めて満足してご飯を食べられた。だから、今度はお姉さんにこの満足した物を分けてあげるね。どれでも好きな物を好きなだけ食べていいよ」
そう言われて、わっちは近くにあったリンゴを取りんした。
「それは素早さのリンゴだよ。一つ食べたらお姉さんは目覚めるけど。いつでもお姉さんはここにあるものを食べていいからね。全てお姉さんの力になってくれるはずだよ」
乳飲子だと思っていた子供の顔が見えると、そこには幼いリュークに見えんした。
「なんでありんす。リュークだったでありんすか。それならいくらでも差し上げたのに」
「ううん。僕がお姉さんにあげるから、たくさんもらって」
「ふふ、わかったでありんす。これは本の時と同じでありんすね。リュークがわっちのために用意してくれたでありんす。それならば遠慮なくいただくでありんす」
わっちがりんごを食べると、今まで食べたことがないほど甘くて美味しいでありんす。
「美味しいでありんす!」
「ふふ、よかったね。今のお姉さんに必要な力を全てあげるね」
「えっ!」
一気にわっちにめがけてたくさんの食べ物が飛んできやんした。
食べてもいないのに、大量のエネルギーが体に入ってきて、抜け落ちていた物が自分の力や生命力、魔力なんだっと初めて気づきんした。
「反転!」
「えっ! リューク?」
「ノーラ! 目が覚めたのか?」
「わっちは何を?」
リュークはわっちを強く抱きしめんした。
こんなにも強く抱きしめられたんは初めてでありんす。
「今から、ノーラに大量の力が流れ込む。必ずボクが受け止めるから、あらがうな」
「えっ? あァァァァああああああああああああ!!!!!!!」
リュークが言うように、わっちの中に熱が流れ込んできんした。
わっちの体が熱くじっとしていられなくなりんした。
「リューク!」
「ノーラ! まずは、あれと戦え」
リュークに言われて、わっちは溢れ出る力をそのままぶつけるように真っ黒な羽を生やした魔物へと向かって解き放った。
「死にや!!!!」
「なっ!」
わっちはそこから意識を飛ばして戦い始めた。
ただただ目の前の黒い魔物がボロボロになっていく光景が、朧げに認識できただけでありんす。
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