第189話 ヒロインたちの会話 11

【side リベラ】


 三年次になって、四つのチームに分かれてしまったと言っても元々同級生の集まりです。

 性格や家柄は違うけれど、私たちには共通の話題があります。


「それではカリン様がおられませんので、本日はリューク様の従者である私が、円卓会議の司会を務めさせてもらいます」


 これは、リューク様に愛される女性たちを集めた円卓会議だ。序列はないと言うことで、カリン様が用意して下さった丸いテーブルを使っている。


 私、エリーナ、リンシャン、アカリ、ルビー、ミリル、シーラス先生、アンナが席についている。


「今回集まってもらった議題についてですが、三年次に行われる大規模チーム戦についてです。リューク様のお考えとしては、ダン率いる転校生チームを牽制したい思惑がお有りになるようです」


 リューク様との幸せな一夜の後に、リューク様から聞かされた内容を要点だけをまとめて話をしていきます。


「なるほど。だからこそ、アカリとミリルをそれぞれのチームに分けたわけか」


 リンシャンはリューク様の行動に納得が行った様子ですね。

 エリーナの白チームには、アカリが加わり。

 リンシャンチームにはミリルが加わった。

 アカリとアンナがエリーナのサポートをして、魔法と実技を補い。

 ミリルが赤チームで、リンシャン陣営の学科を補うように配置された。

 ルビーは黒のチームで、リューク様の手足となって動くために実技を担当することが決まっている。


「リューク様は転校生の何を警戒しているのかしら?」


 エリーナの質問に、リベラが視線を向ける。


「皇国、帝国、教国の三国に対して、貴族及び王国の力を示すことが目的だと考えられます」

「力を示すですか?リュークは何を考えているのでしょうか?」


 エリーナの能天気な物言いに、アンナが深々とため息を吐く。


「エリーナ様。リューク様は安全で安心を好みます」

「そうね。それはいいことだと思うわ」

「では、現在自国の情勢があまり良いとは言えません」

「そっ、それは」


 デスクストス家が不穏な動きをしていることは、王都に住まう貴族であれば知らぬ者はいない。政治に関してはエリーナは私よりも詳しいので、アンナが指摘すれば理解してくれたようだ。


「王国は、現在危うい状況にあります。それでなくても魔王が出現したことは、皆さんも知っていることと思います。魔王は通人族である我々の共通の敵です。リューク様はもしかしたら、王国の未来と、魔王への対応を考えておられるのかもしれません」


 私は、リューク様の考えを代弁するように彼女たちに語り聞かせました。

 皆が、リューク様を思い死力を尽くすように。


「ふむ。少し違うように思うぞ」

「えっ?」


 そんな私の語りに、リンシャンが待ったをかける。


「リュークは、あくまで怠惰なんだ。確かに、王国の未来を憂いている節はある。魔王を危険視もしているだろう。だが、それをリューク自身が解決しようと思う人間だろうか? むしろ、誰かに解決させるように仕向けるのでは? それでも解決ができないのであれば、さらにもう一手考えて、それでもダメなら自分で動く。私の知るリュークはそういう男だ」


 リンシャンの言葉に、私自身も胸の中にスッと納得する部分があった。


「でっ、ではリューク様はなにをお考えだと言うんですか?」

「多分だけどにゃ。人を育てようとしているんじゃないかにゃ?」

「人を育てる?」


 ルビーの言葉に、アカリが大きく頷く。


「そやね。ダーリンは自分で動かんでええように、色々な人を色々な方法で育てとる。ルビーが言う言葉がしっくりくるわ。せやけど、リベラが言った言葉も間違いではないと思うよ。方法は、リンシャンやルビーの方が合ってると思う」

「ですね。私のいた孤児院に金貨を寄付して、孤児に衛生面と教育をするように言っておられていました。それにリューではゴルゴンから連れてきた人や多くの亜人が働ける場所を提供していました」


 ミリルの言葉は、私自身が見てきたことだ。私はどうやら学園と言う枠の中で考えていたようだ。リューク様は、学園と言う小さな枠で収まるはずがなかったのだ。


「ふふ、皆さん。随分と成長をなされたのですね」

「シーラス先生」

「学生であるあなた方の話を聞くことだけで、十分だと思っておりました。ですが、リュークを中心にあなたたち自身が考え、成長を遂げている。素晴らしいと思います」


 どこかで気負い過ぎていた自分を恥じるばかりだ。


「リュークの考えは分からなければ、リューク自身に聞くのが一番です。彼は元々何かを語るのも面倒だと言う態度をとる人ですが、聞けば答えてくれる人でもあります。あなたたちが思う疑問を、そしてここで話し合ったことを彼自身に分からなければ問いかけてみて下さい。彼は必ず受け止めてくれるでしょ?」


 シーラス先生とリューク様がどんな話をしていたのか、私たちは知らない。先生だけは大人の女性で、リューク様も配慮しているように私たちとは少し扱いが違うように感じる。

 

「そっ、それでですね。逆に私から相談なのですが、リュークに求められる時のことで」


 先ほどまでかっこよく諭していた先生が、顔を真っ赤にしてリューク様に求められる時の話を始める。

 そのギャップがあまりにも意外すぎて、私は吹き出してしまった。


「ふふ、シーラス先生も悩まれることがあるんですね」

「わっ、私もこう言うことは不慣れでして。ですが、リュークに喜んでもらいたいと思う気持ちは、皆さんと同じです」


 私は気負っていた気持ちを和らげることができて、そこからは女性同士の男性には聞かせられない話に花を咲かせた。

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