第133話 サブヒロインの会話 その1

《sideハヤセ》


 私の名前はハヤセっす。出身は内緒っす。

 アレシダス王立学園1年次5クラス、報道部所属っす。


 私には目的があるっす。


 今は言えないっす。

 その目的のためにリューク・ヒュガロ・デスクストス様が人材を求めているという噂を聞いて志願したっす。

 私以外にも二人の可愛い子がリューク様の元へ呼ばれていたっす。


「君たちに頼みたい仕事がある」


「「「はっ!」」」


「君たちと同郷であり、ボクの同級生であるダンを恋愛で攻略してほしい」


「「「はっ?」」」


 言われた仕事内容が理解できなくて耳を疑ってしまったっす。


「なんだ?」

「ダンせんぱ、いえ、攻略対象の男性に何かするつもりっすか?わざわざ女性を差し向けるっていうのは、何か意味があるっすか?」


 しまったっす。

 私がダン先輩と知り合いだと知られたかもしれないっす。


「その理由が知りたいってことでいいのかい?」

「はいっす」


 ダン先輩のことを聞かれるかと思ったす。

 リューク様は何も言わなかったす。


「ボクは怠惰なんだ」

「はっ?」

「将来的に、ボクが楽をするために必要なことだと判断した。そのために君たちにはダンを攻略してもらう。それが理由だ」


 全く意味がわからないっす。


《怠惰》?


 怠け者ってことっすか?そのためにダン先輩を落とす?

 どうしてリューク様のためにダン先輩が働くんすか?全然意味がわからないっす。


 リューク様が私の目の前に座って、魔力を溢れさせるっす。凄い量っす。可視化できる魔力ってどんだけ凄いんすか!


「ハヤセ、君の望みを叶えよう」

「わかったす」


 私とリューク様の間で魔力が交換されたのが分かるっす。


 これは契約魔法っす。


 リューク様は、私がダン先輩を落とせば必ず願いを叶えてくれるっす。


 元々、私はダン先輩のことを知っているっす。

 これもちょっとした縁っす。


 ダン先輩と添い遂げる。それは別にいいっす。

 ライバルの二人が何を考えているのかわからないっす。

 それは気持ち悪いっす。


 この世界は情報が大事っす。

 情報を制す者は世界を制すっす。


「ちょっと良いっすか?」


 ダン先輩の籠絡を続けながら、二人の観察をしていたっす。そこで気になったことがあったので二人に話しかけたっす。


「な〜に〜?」

「なんだ?」

「二人は、ダン先輩のことを好きになれそうっすか?」


 これは単純な女子会じゃないっす。

 ライバルになるのか、見定める情報収集っす。


「ん〜まだわかんないかな〜悪い人じゃ〜ないとは思うよ〜」


 ナターシャは何を考えているのかわからないっす。

 のんびりしているように見えて、人のことをよく見ているっす。私が観察しているとき、ナターシャにも私を観察しているように感じるっす。


「うむ。そういう話か……私は、難しいだろうな」

「そう〜なの〜」

「私は……ガッツ様に憧れているんだ。

 平民である私がガッツ様に選んでもらうなどあり得ない。ただ、この気持ちは揺るがない。

 ダン先輩は悪い人ではない。強くて優しい良い指導者だ。それは男性として好きとは違うだろう」


 ダン先輩を好きになるスタートラインに、二人は立ってはいないっす。


「本気でダン先輩を落とすつもりっす」

「うわ〜ハヤセちゃん大胆〜!!でも〜どんな目的があるのか〜気になるなぁ〜」


 ニヤニヤした顔で、私に迫るナターシャは恋バナを楽しそうに受け入れているっす。

 それはライバルにするような態度じゃないっす。


「目的なんてないっす。単純にダン先輩は私がもらうっす」

「う〜ん、そっか〜良いねぇ〜でも〜私も〜ダン君を落とすの頑張るよ〜」

「なんでっすか?ナターシャはわかんないって言ったっす」

「ふふふ、私にも〜目的があるの〜ごめんね〜ハヤセちゃん〜」


 やっぱり強敵はナターシャっす。

 見た目じゃ勝てないっす。


「私もガッツ様に憧れていて好きになることはできない。だが、夫婦になることは問題ないと思っている」

「なっ!なんでっすか??!」

「私たちは平民だぞ。いくら属性魔法を使えると言っても、この世界で生きていくためには将来が有望な人の嫁になりたいと思うのが普通のことだろ?

 ダン先輩はS級冒険者で強さをちゃんと持っている。

 なら、将来が安泰だと思うぞ」


 くっ、ダン先輩を好きにならないくせに酷いっす。


「二人は諦めてはくれないってことっすか?」

「そうねぇ〜ごめんねぇ〜ハヤセちゃん」

「すまない。ハヤセがダン先輩を好きなのわかった。 だが私にも目的があって引けないんだ。

 それに、いくら私たちがこうして話しても意味がないがな」

「どういうことっすか?」

「ダン先輩が誰を選ぶのかなんてわからない。

 もちろん、三人同時に選ばれることも想定している。

 ダン先輩にそこまでの甲斐性があるかはわからないがな。リューク様なら出来そうだ」


 三人同時!そんなの良いっすか?


「まぁどっちにしても決めるのはダン先輩であり、判断するのはリューク様だ。言っていただろ?」


『ボクが君たちとダンの間に絆が結ばれたと判断した時だ』


 確かにリューク様は絆が結ばれたらと言っていたっす。

 どうやって判断するのかわからないっす。


「我々はライバルではなく、互いに協力ができるところはしていけばいい」

「良いわね〜きょ〜りょく、きょ〜りょく」

「わかったす。協力できるところはするっす」


 三人で手を突き出して協力を口にしたっす。


 だけど……どうにも、二人とも信用できないっす。

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